読書日記

2002年09月15日(日) デーィン・クーンツ『闇へ降りゆく(ストレンジ・ハイウェイズ2)』(扶桑社ミステリー文庫2000/01/30)をようやく読む。

デーィン・クーンツ『闇へ降りゆく(ストレンジ・ハイウェイズ2)』(扶桑社ミステリー文庫2000/01/30)をようやく読む。
ホラー短編集よりも懐かしのSF短編集。
「フン族のアッチラ女王」「闇へ降りゆく」「オリーの手」「ひったくり」「罠」「ブルーノ」「ぼくたち三人」の六編収録。
最近のクーンツにつながるのは「罠」他はヘンリィ・カットナーやエリック・フランク・ラッセル、クリフォード・D・シマックの作品と言われても分からない。六十年代から七十年代のSFの味わい。逆に堪えられない作品集である。

梨木香歩『裏庭』(新潮文庫2001/01/01)を読む。
一気に読んだ。イギリスの児童文学系ファンタジーの影響を気持ちよく受けた日本児童文学系ファンタジーにつらなる力作。主人公の裏庭世界での行動が半分以上の分量を占めているが、現実世界での夫と妻や父と子、母と子の心の機微の描写が魅力的だった。
「癒し」が流行語になった今の日本社会を象徴する作品。

ビデオで映画『バニラスカイ』を観た。閉じられた世界の物語で見終わった後に解放感・爽快感はない。手が込んでいることには感心した。意外にも力作だった。

ビデオで邦画を観た。60年代からの習慣である。『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』(東宝)つまりゴジラ映画の最新作を観たのである。
記念すべき第1作の50年後の後日談。正式には第2作になるという理屈である。防衛省などというものが大手を振って存在しており今の日本そっくりだが、パラレルワールドの一つのようだ。
このゴジラは最初から最後まで強い。立場が守るものから攻めるものに戻っているせいか圧倒的に強く、しかも一流の剣客のような素早さ・先読みの鋭さを身につけている。
バルゴン、モスラ、キングギドラが大和を守るために次々にいのちを落とし粉々に消えてゆく姿は妙に日本的もの悲しさ・無常観に満ちていて異様な雰囲気であった。
監督の金子修介の意図なのか。忘れ難い印象を残した。



2002年09月14日(土) ビデオで映画『キャスト・アウェイ』を観る。

ビデオで映画『キャスト・アウェイ』を観る。主演のトム・ハンクスとバレーボールのボールの身を削る演技がリアル。単なる難破もので終わらない奇妙な味わいがある。ちょっと出てくる犬もかわいい。
『マイリトルシェフ』が予定調和式に最終回を迎えた。稚拙だがこれもほのぼのとした話で記憶に残った。



2002年09月12日(木) 吉田修一『最後の息子』(文春文庫2002/08/10)をちょっと読む。

吉田修一『最後の息子』(文春文庫2002/08/10)をちょっと読む。
文學界の新人賞受賞作だから手にとったわけではなく顔のよさで買ってしまった。
顔つまり本の装幀が魅力あり。石橋優美子のイラスト、大久保明子のデザインが目を引いた。
腰巻きの浅田彰と山田詠美の名前と言葉よりも黄緑色が面白い小説と思わせた。
オカマやホモの話とは思わなかった。
それでも読み始めると本を置くタイミングがつかめないほど凄く面白いというわけではないが、飽きるころにうまい挿話が出てくるので、一気読みになってしまった。
陰の現物・現場主義と呼んでおくことにする作者の挿話提出は巧みでなるほどと自分の生活を振りかえさせる密やかな魅力を持っている。
ただ一人のときに何かの言葉を確かめるように口にすることは、最後の大切なことだと思う。



2002年09月10日(火) 南木佳士『阿弥陀堂だより』(文春文庫2002/08/10)を読んだ。

南木佳士『阿弥陀堂だより』(文春文庫2002/08/10)を読んだ。
映画化に当たっての文庫本化にしても素晴しい作品。私小説的魅力に富み、じっくりと味わうことができた。
七年前の作品だが、現代にこそふさわしい。ある意味救いの小説。
作家志望の主人公の奥さんを最先端医療で活躍する医者とした点が特色。
前に岩波新書で、医者でもある著者の文章に触れて感心した。
この作品も著者の人生を込めた力作。

城山三郎『外食王の飢え』(講談社文庫)を読む。
実在の外食産業のパイオニアをモデルにしたノン・フィクション的小説。熱い男の一代記は読む方も熱く集中させる。こんな人が身近にはいてほしくはないが立志伝中の人物というのはこんなものだろうと思った。バランス感覚があったらその道で儲けられるはずがない。
少し前の作品でもまだまだ現役である。
一気に駆け抜ける人生を見事に描いた。

テレビを随分見た。
『北の国から』前・後編とそのドキュメント。ビデオで『シュレック』
いつも観ている『ミュータントエックス』『マイリトルシェフ』『ランチの女王』など。
さすがに目が疲れる。



2002年09月08日(日) 北上次郎『ベストミステリー大全』(晶文社2002/04/30)をさっと。

北上次郎『ベストミステリー大全』(晶文社2002/04/30)をさっと。
『小説現代』連載のコラム169篇をまとめたもので期間は1988年から2001年まで。物凄い分量に驚き入る。並行して他の雑誌やネットにも同様の書評エッセイを執筆中なのだから恐るべき商売人である。
こういう本は読み方が難しい。あまり真面目に対すると当の本に接する気が起こらなくなるのである。かつてはそうかそうか面白いのかと読書欲が沸騰したものだが、今は歳をくったせいかそうならない。自分が読んだ本についての確認作業になってしまっているのだ。読む本を決めるためにかつては一生懸命読んでいたのに今はかなりいい加減である。
作者の名前と題名の周辺の文章をさっと読んでどんどんページをめくっていく読み方に変わってしまった。
新鮮な関係というべきものが消えてしまった。
出てくる本のほとんどが未読であるにもかかわらず読む気が全く起こらない。
一種の飽和状態で世の中にもう新刊で傑作と言う本がこの十年来存在していないだけの話?



2002年09月05日(木) 坪内祐三『文学を探せ』(文藝春秋2001/09/15)を読む。

坪内祐三『文学を探せ』(文藝春秋2001/09/15)を読む。
私は安原顯も好きだし、この坪内さんも割と好きだった。
ただこの『文学を探せ』を文学界で読んだ時は鮮烈すぎてややひるんだ。
しかし、この本の『「あとがき」にかえて』を読んで持ち直した。
「一九九九年半ばから二〇〇〇年末までに至る私の「暴走」の記録なのである。」(272ページ)この文章に気がついて良かったと思う。帯には書いてあったが目に入ってなかった。
結局、一番感銘らしきものを得たのは「あとがき」だった。
人の個人的なことには興味のわかないほうだったのに、最近はそうでもない。
昨日も齋藤孝さんの世織書房の『教育=身体と言う技術』を読んで興味津々だったのは著者の学生時代の回想部分だった。



2002年09月04日(水) 齋藤隆『理想の教科書』(文藝春秋2002/04/30)のコメント部分を読みました。

齋藤隆『理想の教科書』(文藝春秋2002/04/30)のコメント部分を読みました。
選ばれた作品は後日ということにして齋藤さんの文章のみ読み進みました。
その著者や背景、価値について過不足のない解説に感心するばかりでした。とてもオーソドックスな選択ですが意表を突く作品もあります。
『聊斎志異』の『蛇人』だけはつい目がとまり全部読んでしまいました。
これは我が家にペットがいるからでしょうか。
妙に切ない感じになりました。
立花隆『田中真紀子研究』、まだ読み終わっていません。



2002年09月03日(火) 日垣隆『されど、わが祖国(中国残留帰国者物語)』(信濃毎日新聞社1988/08/05)を読む。

日垣隆『されど、わが祖国(中国残留帰国者物語)』(信濃毎日新聞社1988/08/05)を読む。
現在絶版になっているようですが、こういう本こそ書店で息長く売ってほしいと思います。再販制度があろうとなかろうと現在は爆発的に売れる本しか置かない、あるいは置けない書店ばかりです。
「見えないもの」を見せてくれる日垣さんの真骨頂発揮というべき本。
学び、考えなければ見えてこないものに私たちは包囲されていることに改めて気づかされました。その点で全く古びていない作品です。
『鳩よ!』(2000年9月号)を100円で購入。
拾い読みを楽しむ。笠井潔さんの『新世紀小説時評⑨(事件と虚構)』に注目。久間十義『ダブルフェイス』(幻冬舎)を佐野眞一『東電OL殺人事件』と比較して書評しています。説得力があります。
既に廃刊になったはずですが、執筆者はちょっと気を引く人たちが多いように感じました。



2002年09月02日(月) 養老孟司『ミステリー中毒 激症篇』を大激賞する。

今月号から『小説推理』を定期購読することにしました。二十年ぶりくらいかもしれません。北上次郎の書評が読みたくて買っていたようなもので他の小説作品はほとんど読んでいませんでした。
連載ものが多いので読まないページの方が多くなります。それでもよいと結論したのは書評を含めてエッセイに期待したからでした。
今回の大感激は、養老孟司の文章です。
「相変わらずのファンタジーで、とうとう半年になってしまった。」(39ページ)で始まるちょっと長めのエッセイは傑作。適当なところで一冊にまとめて書籍として変身すればとてつもなくなおかしくて変な読書中毒本のできあがりでしょう。
もう連載10回目でした。
ほかには、一時期「激しく」熱中した『餓狼伝』のなんと知らぬ間のⅩⅢ部の11回目を読みました。変わらず臨場感があってこれだけでも十分に納得して読めました。夢枕貘、健在でした。
ミステリマガジン同様あれこれ読めそうで楽しみな雑誌です。



2002年09月01日(日) 山崎貴監督映画『RETERNER』(金城武・鈴木杏・岸谷五郎)は面白かった。

山崎貴監督映画『RETERNER』(金城武・鈴木杏・岸谷五郎)は面白かった。
期待以上でした。
昨夜テレビで観た『ウオーターボーイズ』も楽しめたので二日もラッキーが続きました。
その前に観た『壁抜け男』(ミュージカル)が今一つで何かやるせない思いを払拭できないでいたのでこの二本の娯楽映画で救われました。
いろいろと欠点はあったにしても日本製SFアクション映画として画期的な作品だったと私は評価します。
本の方はほんのちょっとで『エースを出せ!』を読み返したりであまり読めませんでした。買う方はなぜか文藝春秋の本を買ってしまうことが多く不調です。
今日は次の通り。
島内景二『文豪の古典力』(文春新書2002/08/20)
南木佳士『阿弥陀堂だより』(文春文庫2002/08/10)
吉田修一『最後の息子』(文春文庫2002/08/10)
ハヤカワ文庫や創元推理文庫に読みたい作品があるのにこんな本を買ってしまうのは本当にいやだ。


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