なべて世はこともなし
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2002年05月29日(水) なぜかタイトルが決まらないけど、アメリカのお話です。

自由の国アメリカ。
寛容の国アメリカ。
先進の国アメリカ。



そんな陳腐な言葉はもはや聞き飽きたのですが、私は未だに人生で一度もアメリカに心惹かれたことがない。小学校の卒業文集に、「行きたい国・住みたい国」というアンケートがあった時も、私はどっちがどっちだったかは記憶にないが、「イギリス・フランス」と迷わず書いた。考えてみると、クラスメートの誰も海外に行ったことがないという状況の中でそんな質問をすること自体がお笑いなのだが、ともあれ子供の頃からヨーロッパに憧れていたことは間違いはない。


で、そんなかわいい頃からはや15年。今ではまったくかわいくない大人になってしまったが、未だにアメリカという国が好きになれない。進んで住もうとなんて夢にも思わない。仕事の上でもなるべくアメリカ関係の仕事は避けている。


というのも物言わぬ書類一枚の上でも、アメリカでしか意味の通じない訳の分からん言葉や暗号が並び、「世界はわしを中心に回っているけんね」という思いがふつふつと伝わってくるのです。で、アメリカ人に世界地図で日本の場所を指し示させるという企画が昔テレビであり、街頭でほとんどの人が指し示せなかった…というのを見た覚えがある。


…で、こいつはいったい何の話をしているんだとお思いの方も多いでしょうが、ようやくここから話の本筋が始まります。


前の日記にも書いた通り、私の仕事の一部は電話をかけたり受けたりすることです。ギリシアだろうと香港だろうと日本だろうとばんばん電話をかけます。で、日本以外では英語で押し通します。で、まあ、今日、運悪くアメリカに電話する羽目になりまして…。電話の相手は一般家庭ではない、会社の事務担当と思われる方だということを年頭において読んでやってくださいませ。


私:「私Paddy社のSnigelと申しますが、XX担当の方はご在席でしょうか?」


電話の向こうは中年女性。なぜか恰幅のいい眼鏡をかけた黒人の女性を私は思い浮かべた。彼女は私の苦手なアメリカ英語で…


女性:「はあ?パ…何社って?」
私:「Paddy社です。XX関係の会社なんですが…」
女性:「パデ…どう綴るの?」



一時が万事この調子。話が全然進まない。「お前の英語が悪いからだろう」とお思いの方、そういう問題じゃあございません。ひたすらに彼女はアホタレでした。


女性:「で、Paddy社のどちらさんでしたっけ?」
私:「Snigelと申します」
女性:「ス…誰って?」



(以下略)


私:「で、OOがXXして★★なので、関係の書類を送って頂きたいのですが」
女性:「で、そちらの会社はどこなの?」
私:「アイルランドです」
女性:「え?それってニューヨークのどっかだっけ?」
私:「いえ、アイルランド…」
女性:「アイルランドって何州?」
私:「いえ、あの、イギリスの隣の国なんですけど…。取り合えず住所を申し上げますんで、いいですか?(もう自分のペースで進めるしかないと悟った)12 Businesspark, Clontarf…」
女性:「え?クロンターフってどう綴るの?」
私:「C for Charlie, L for Lima…」
女性:「K…」
私:「…違います」



と住所を説明するのに数分。


女性:「で、Zip(郵便番号)は?」
私:「Dublin 8です」
女性:「は?」
私:「だーかーらー、8ですってば」
女性:「え?郵便番号はアルファベットと数字5桁の組み合わせで…」
私:「…それはアメリカの場合で、私の言った通りに書いてくれれば着きますから!」
女性:「はいはい。じゃあ…ああそうだ、これ、ファクスで送るわ」



不覚。その手があったか。


私:「そうですね。じゃあ、ファクス番号を申し上げますね。00353…」
女性:「なにその00って?
私:「アメリカからの国際電話のかけかたは存じませんが、とにかく国番号353のあとに…」
女性:「国番号って何?」
私:「…やっぱり郵送でいいです」



今日の日記の前振りで書いた、「地図で日本を指し示せなかったアメリカ人」…それを見た当時は「やらせだろう」と思ったが、こういう経験を通じて、あれは仮に若干の誇大があったにせよ、やらせではなかったんだろうなあと信じるようになってきた。


ちなみにこの電話の所要時間は20分。書類が送られてくる確率は限りなく0に近い。まあいいや、この際この仕事は他の人に振ろう。やっちゃあおれん。今日の経験を通じて、「アメリカにだけは住みたくない」という思いをさらに強くしたのでした。まあ、こんな例は極端で、きっと住んでいる人からは「そんなアホタレばかりじゃない」と抗議を受けるのでしょうが。…というか、抗議してください。アメリカ人の平均がこの程度とは思いたくないので。




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2002年05月28日(火) 義歯と売春婦の意外な相関関係

こんばんは。数日前からひどい風邪をひいているSnigelです。いや、今日の今日まで自分がひどい風邪をひいているという自覚はありませんでした。というのも別にのどが痛いわけでもくしゃみ・鼻水がとまらないわけでもひどい悪感がするわけでもなく、ただものすごくだるく、頭痛と腹痛があったというのが症状でして。現在、完全には直っていないものの、症状は緩和されつつあります。


今日になって、昨日の状態がいかにひどかったかが分かりました。


昨日やった仕事ことごとく全部やり直し


それも日頃なら絶対に間違わないようなことばかり。まあ極端な例えで言えば1+1=3とほざくようなミス。例えばお客さんに銀行口座を通じて返金するのに口座番号を書いていなかったり、香港ドルで返金すべきところシンガポールドルで返金したり等々。いつもの半分以下の仕事しかしてなくてしかもやった仕事がことごとく間違いだらけとなると…きっと私は本気で体調が悪かったんだな…と納得しました。


挙げ句の果てには、


Dental prosthesis義歯





Dental prostitute歯科売春婦=英語というか言語として意味をなしません)


といい間違える始末。これに関してはもう笑うしかなかった。まあ運が良かったのは、これをお客さんとの電話で言い間違えたのではなく、上司との会話で言い間違えたところか。それゆえ笑って済む話だったけど。上司は今日になって「まあ体調が悪そうだったし仕方ないか」と言って笑ってましたけど。


で、今日の帰り、City centreからバスに乗って数分後、バケツをひっくり返したような大雨が降り始める。日本的に言えば夏の夕立。大雨の上に雷まで鳴っている。で、私の家はバス停から徒歩7分のところにあり、この状況で歩いて家まで帰ったら、パンツまでずぶ濡れになることは火を見るより明らかでして。


そこで、私の家の手前のバス停から徒歩10歩のところにあるパブに緊急避難。そこで風邪をひいているのにいつものカールズバーグを飲みながらぼーっと置いてあったタブロイド誌とRTE(アイルランドのNHK)のニュースを見る。まあ、ワールドカップ、とりわけアイルランドのチームリーダーをクビになったロイキーンの話題一色。…まったく他に話題はないんかい。とか思っていたら掲示板にうちの住人ひですのこんな投稿が。


ワールドカップ、もうすぐですねえ。会社からの帰り道、嵐になったのでバス停そばのパブに避難。大好きなカールスバーグをぐびぐびっとやっていると、テレビはニュースの時間。一時間後と(ママ)にあるニュースは、ワールドカップの話題ばかり、というか他に話題はないんかい?アイルランドはキャプテンのロイ・キーンが監督のミック・マッカーシーによってくびになり、さらにねらったように、国営航空会社のエアリンガスがストをやったり(あさって)と、大変な事になっています。


…つまりあんたは同じパブにいて同じものを飲みながら同じテレビを見ていたのね。ついでに同じことを考えてたのね。すっからかんのパブでお互いの存在に気がつかない私たちは結構マヌケだと思う。


最後に、金曜日のミニオフの詳細決定しましたので参加ご希望の方はこちらをご参照くださいませ。




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2002年05月27日(月) 作者はビョーキです

ドイツから帰って参りました。で、のんびり更新したいところでしたが、ただいま作者は風邪が大爆発しております(なんでまあこんな時期に…と自分でも思う)。ゆえに、メール・掲示板のお返事はしばらく猶予を頂けると嬉しいです。あ、あと、オフ会ですが、今回「自由参加」にしたらあまりに反響が少ないので、本当に人が来るかどうか不安になっております。場所はまだ未定ですが、「町のどこか」ということでアイルランド時間の水曜の夜までに発表いたします。


それにしても隣の庭は青いと申しますが、そのとおりだと思いました。ことある毎に、「ああ、アイルランドじゃあこうはいかないだろうなあ」と思うことばかり。文字通り定刻通りに現れるバス、とっても親切な人々その他。まあこの話は私の体調がよくなったらゆっくり書くことにします。


というわけで手抜きですいません。




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2002年05月22日(水) 年でいちばん無意味な日(year 2)...去年と何が変わったのか?

ダブリンに特に結婚だとかそういう関係をアイルランド人と持たず「ガイジン」としてEUの外からやってきている私のような人間は必ず最低年に一度Harcourt Streetの恐怖の館に行かねばならない。その恐怖の館とは"Alien office"。はい本日行ってまいりました。


私がこの恐怖の館に最初にお世話になったのは96年。語学留学をしていた当時。本当にのんびりしてまして、午後1時に学校が終わってそれから行っても1時間程度で済むような状態でした。


ところが「アイルランド就職戦線異常アリ」で詳述している通り、しばらく日本にいた私は98年の冬にダブリンに何を血迷ったか舞い戻ってきた。で、その時にこの恐怖の館の状況は完全に一変しておりまして。朝から並ばないと順番待ちのチケットが取れない。で、その状況は年々再々時々刻々と悪化していきまして、去年なんか私は朝の6時過ぎから意味もなくぼーっと並び、しかもそれでも自分の順番が回ってくるのは昼過ぎという悲惨な状況になっていた。


で、長時間並ぶという肉体的苦痛もさることながら、それよりもオフィスの中のやたらと重苦しい雰囲気、カウンターでビザが取れずに怒鳴る人間。生気のない目をした難民、両手に子供を抱えた世を儚んでいる趣の女性…等々。中で待つことが本当に精神的にも苦痛な、一年のうち一番いやな日と言っても過言ではなかった。


ところが。「投稿編」にもある通り、何やら今年は状況が一変したらしい。まず、お役所であるにも拘らず、月曜日から木曜日までの開庁時間は朝の8時から夜の10時までと一部のスーパー並みに。しかも小汚い「グリーンブック」と呼ばれる「外人登録証」がデジカメを使ったクレジットカードサイズのカードになり…となんだか恐怖の館に革命が起こったらしいのだ。


で、5月末日でビザの切れる私は、会社の了解を得て勤務時間扱いでこの恐怖の館に行ってきた。「終わり次第会社に行く」と言う約束だったから、くそまじめにも私は、いつもと同じ時間のバスに乗り、午前8時30分頃、恐怖の館に到着。


去年までの状況ならとっくに順番待ちのチケットはなくなっているはずだが、なるほどまだチケットは残っている。チケットの順番を見ると60人待ち。ま、こんなもんだろうと思い、まずは時間潰しを兼ねて朝食へ。


アイリッシュブレックファーストなんておぞましいものは最近食べれなくなった私は、ビーンズオントースト(トマトソースで煮た豆をトーストの上に乗っけたもの)を注文。


ゆっくりゆっくり時間をかけること約1時間。午前9時30分私は恐怖の館へ戻る。案の定といえば案の定、私の順番はまだ来ていない。仕方なしに私は恐怖の館の待合室で待つことに。


待合室で待つのはやく20人程度の人間。去年はすべての椅子がふさがり立ったり床に座ったりという人間がいたのだが今年は半分くらいの椅子が埋まっている様子。確かに何かしら進歩を感じる。さらに、窓口と待合室の間にベニア板の仕切りを置いている。これもまあ進歩といえば進歩か。


で中で待っている人間を観察すると、黒人・中国人・その他が1/3づつの割合。ちなみに日本人は皆無。場所と時間帯を激しく勘違いしたアホ中国人カップルがいちゃいちゃしている以外はみんな押し黙り、思いっきり重苦しい雰囲気。


そこにやってみたのは2歳くらいの子供を連れたスリーサイズの単位がセンチメートルではなくメートルであると思われる黒人女性。この子供、待合室にやってくる泣き始める。


5分後、泣き止まない。

10分後、泣き止まない。


すると見かねた係が


「そこの子供連れの奥さん、先にやってあげるから窓口へ」


とひとこと。で、窓口に向かう母。すると今まで火がついたかのように泣き続けていた子供が泣き止んでにこっと笑う。


この子供と母はグルだったと思うのは私だけ?


で、何だかんだで私の順番がやってきたのはチケットを取って2時間後の午前10時30分。で、デジカメで写真を撮られて新しいカードをもらっておしまい。所要10分。


結論。確かに去年に比べて格段に早くなった。評価できるが、あの待合室の雰囲気は何とかならないものだろうか。


推察ですが、夕方や夜に行けば待ち時間はもっと少ないのではないかと思います。体験談の投稿をお待ち致しております。




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2002年05月21日(火) ワタシガイジンコトバワカリマセーン

朝、カーテンの向こうは5月の快晴の空(アイルランドでも「五月晴れ」というかどうか自信がないからその言葉は使わない)。おおすばらしいと思いつつサングラスをスーツの胸ポケットに収めて会社へ。


午後5時。定時に退社。


どしゃ降りの雨。


…アイルランドではいつものこと。朝の天気を見て一日の予定を立てようとするとたいがい予定が狂うことになる。


で、珍しく定時にやってきたくされAlan Martin Coaches社のバスで町へ。町に着いても雨足は弱まる気配もなく。


で、アイルランドの雨の最大の問題点は傘が役に立たないこと。激しい雨が降っている時はたいがい強風もセットでやってくる。そのくせアイルランドの傘は弱い!というか折り畳み傘が主流で日本みたいなジャンプ傘をあまり見かけない。というわけで、風で壊れた傘をそれでも使っている人が多数。


で、私の乗るバスにはバスシェルター(屋根)がない。50メートルくらい離れたパブの軒先でバスを待っていると、バス停の前には長蛇の列。そこにやってきたのはすでに7割方お客の乗ったバス。


走れ!とバス停へダッシュ。


ダブリンバスは乗車は2列乗車というのが暗黙の了解。左側は運転手に現金を払う人用。右側はプリペイドカード・定期をカードに通す人用の列。当然右側の列の方が流れが速い。私は20人ほどが並んだ現金用の左側の列ではなく5人ほどしか並んでいない右側のプリペイドカードの列に。普段は現金で払うのだが、こういう時のためにいちおうカード(2回使える回数券) も財布に忍ばせていたりする。結構準備のいい人間なのかもしれない。私は。


バスの中を見るとすでに満員に近く、運転席近くまでお客が立っている。やばいなあ、乗れるかなあと思っていると私の前のおばさんはしっかり乗る。がおばさんはすでに中には進めず、カードリーダーの前に立ち止まる。すると運転手は、


運転手:「はい。ここまで。カードをもう通さないでね(カードを通すとお金が引かれるので)」


と言う。私は知らん顔してカードリーダーの前に立ちはばかるおばさんの脇からカードを通そうとする。


運転手:「カードをもう通さないでって言ったんだよ!」


ほぼ同時に


カードリーダー:「ピッ」(←私がカードを差し込んだ)


片手を伸ばしおばさんの脂肪を押しのけ何とかカードを通す。すると


運転手:「もう満員なの」


私は初めて運転手に気がついたような顔をして、そして、出来る限り無邪気な顔をして運転手にこう目で訴えかける。


「え?ボクになんか言ったの?ボクちゃん英語わかんなーい」


で、さらにおどおどした目で


「え?ボク降りなきゃだめなの?なんで?ボクお金払ったのにボクわかんなーい」


と再び目で訴えかけつつ、カードをちらりと見せる。


…運転手はやれやれと言う顔をしつつ諦めた様子。ドアを閉めて発車。私の勝ち!


うん、私が女だったらたぶん「オバタリアン予備軍」と呼ばれていることだろうなあ。…っていうか「ボクちゃんわかんなーい」とか目で訴えて通用する年齢じゃあもはやないだろうに。


このようにあまり機会は多くないにせよ、見た瞬間からガイジンであるという事実を逆手にとって利用することは可能です。普段「こいつはガイジンだから英語は話せんべえ」というふうに扱われるのは不快ですが、どうせそう思われるならそれを利用してやらないテはないかと。


実は以前も同じようなことをしたことがあります。バスの中でジャンキーらしき男に話しかけられ、うざかったので、英語が話せないふりをしました。するとジャンキー氏諦めた様子。こちらも私の勝利。


で、忘れた頃に鳴る私のケータイ。


私:「Hey How's going mate? I haven't talked to you for ages. What's going on now?」


はっ!私は英語が話せないはずだった。横でジャンキー氏は私のことを睨んでましたとさ。




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