なべて世はこともなし
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2002年09月26日(木) 代打日記(1)コンタクトレンズ購入必勝法

日記「なべて世はこともなし」のてこ入れ策の一環として、不定期連載で「代打日記」を掲載します。...というか誰かゴーストライターになってくれませんか(笑)。私の変わり映えのない文章ではない掲示板常連「ひよこさん」の文章をお楽しみください。このボケとツッコミのスピードからして言うまでもなく、ひよこさんはこてこての関西人です。

コンタクトレンズ購入必勝法--



私のコンタクトレンズは、相当古い。
今は車に乗ってるけど、バス通勤をしてたときは、
『いやーん、バスの番号が見えへーん。』と、思いながら、目を細めて眉間にしわを寄せてバスを待ってたのでした。【こわっ】


毎日コンピューターを使って仕事してるので、視力がかなり落ちてるのは実感してましたが...バスの番号が見えないのは、ダブリンでバス通勤する人にとって、死活問題と言えるのです。


『え?何番が来たん?(半泣き)』【焦る。焦る。】
これでかなりのストレスが生じます。【それでなくてもバスがいつ来るかわからない。見逃せない。見逃したら、次のバスがいつ来るかわからない。
必死のぱっち!!!】


そーゆーわけで、やっとこコンタクトを買う事にしました。
うちのダンナさん〈以下、あくび君〉と2人で、シティーセンターのメガネやを片っ端からあたりました。【一番安いのを探すぞー!!】
『あのー。おたくでコンタクト、酸素透過性のは、いくらします?』


5件以上あったたかなぁ、グラフトンストリートから、ヘンリーストリートまで、“オプティシャン”と書いてあれば、とりあえず突撃。
で、結局1番安かったのが、ジーピーオーアーケードにあるメガネやでした。
【いうても、10ユーロぐらいの違いやねんけど。】


突撃しました。
あくび君もメガネを買うー。ということで、このメガネや、ただいまセール中。
“1つメガネを買うともう1つタダになるよ〜ん。”と書いてある。
2人で簡単な目の検査を受け、あくび君はメガネを選び、私はコンタクトの為、まだ眼科の先生の個室の中。
イギリス英語なまりの、女の先生。
『ちょっと、あなたの目の検査をするわね。』といって、部屋を暗くし、ちっちゃいライトにレンズが着いたもので、私の目をあらゆる角度から大接近してのぞきこむ。

彼女の鼻息、荒い。荒い。ほんで、えらい丁寧に時間かけて調べる。
必死で笑いを抑える為に、【えっと。。2Xの二乗マイナスー...ワイ.えっと。。。シグマ。。えー。コサイン。。。】とかなんとか、とりあえずわけのわからん事を考えて笑いをこらえたのでした。


『じゃ、今日は土曜日だから、来週の金曜日ぐらいには注文したコンタクトが届きますので、こちらから電話しますね。』
と、言われ、無事終了。


……
………
……………………………。


2週間たっても電話が来ない。【アイルランドお決まりコースに見事決定!!ありがとうーございまーす。】
あくび君のメガネの件に関しても、電話が無い。
あくび君は、すでにメガネ代全額払い、私は41ユーロのデポジットを払ってる。


でました。やってくれました。
ここで、ジンセイこうろう【どんな字か忘れたぁ。】の登場。
『コラー!責任者ででこんかいっー!!』(今は亡き関西の漫才師)(Snigel注:これって横山やすしのこと?掲示板での突っ込み求む)
あくび君、早速電話攻撃。
『これこれこーで、2週間も待ってるのに、なんで電話ナイネン。マネージャーだして。』
メガネやのねーちゃん、『いえ、注文したんですけど、えっと。えー。いや、注文してなかったようです。あ!じゃなくて、なくしてしまったようです。』【どっちやネン。】
あくび君、『?なくした??あんたはいいから、マネージャーだして!』
【いいわけはいいから。電話くらいしてこいよ。】
と、いうわけで、その週末に“届きました”というので、いってきました。
【はい。これで2回目。】


『はい。これがあなたのコンタクト。そこで手を洗ってつけてね。』
【はいはい。なんでも自分でさせてもらいますぅ。アイルランド流セルフサービス】
そこにマネージャー、レシートを持って登場。
『このたびは、申し訳なかったわねー。で、トータルこの値段なんですけど、25%オフにさせてもらって、41ユーロ(デポジット)引いて、これが残りの金額になります。で、どうですか?つけ心地は?』


やりました。マネージャーに文句言ったら、25%オフ!!
しかも、あくび君のVHI(任意健康保険)で、70ユーロほど返ってくるという。【イエーィ!高島忠雄デス。】
そのうえ、コンタクトの洗浄液や、タンパク分解剤など、おみやげにもらちゃったもんねー。


つけ心地?
『なんか、右がちょっと変な感じですけど。左右の視力に差があるかんじで。』といったら、また眼科の先生ルームにいかされ、(前と違う先生だった)また同じ事を説明。
簡単な視力検査をして、『んー。いまつけたばっかりだから、ちょっと違和感あるかもしれないわね。右のは、ちょっとまばたきした時に動くけど、私はそのほうが自然でいいと思うわ。とにかく2週間後にもう一度検査することになってるから、スケジュールを見て予約しましょう。』と言われ、帰宅。


2日後の月曜日、車の税金を自分で直接払う為、タックスオフィスに仕事を休んで行ってきました。【日本では考えられませんな。】
郵便でも受け付けてるんですが、なんせ、この4年間ダブリンで、何につけてもいいかげんなんで、チェックを送るのに、POSTなんぞ信用できません。
月曜の昼で、そんなにこんでないやろなーと思ったのが、あまかった。


70人以上すでに並んでる。

みんなが働く月曜日、憂鬱な月曜日、やったー、休みやー、自由な自分の時間ができたー!と思ったのもつかの間。
ここで、アイルランドお決まりスペシャルコースに見事決定。
今日1日、これで潰されるぅ…【号泣】
スニーゲルさんの言う“恐怖の館”(イミグレーションオフィス)とおなじパターンでございます。
あごが床に着きそうなのを押さえて、並びました。暇をつぶす為の小道具を持って行ってなかったので、ぼーっとしながら長蛇の列に身を任せておりました。振り返ると、さらに30人くらい増えてます。【アーララー】


人の読んでる新聞を、さりげなく読んでると、【おいおい】
やっぱり読みにくい。なんか、へん。


【モータータックスオフィスで働いてるにーちゃん、ねーちゃんは、(なぜか若い人が多い。)なんでそんなにカジュアルやのん?きみら、お役所勤めでしょーが。Tシャツ、ジーンズ、パーカー…】


税金を払い終えて、例のメガネやに直行。
【はい、これで3回目でございます。】
コンタクトコーナーに行くところで、例のマネージャーにばったり。
『あら!どうしたの?あなたの事おぼえてるわ。』と言われ、これこれこーで、やっぱ見にくいネン、というと、すばやく段取りしてくれ、また、眼科の先生待ち。【またまた待たなあかんがな。】
結局、右のコンタクトを再発注し、1週間後に電話してくれるらしい。
【もう信じませんよ。】
10日たって、こちらから電話。
もう私のコンタクトが来てるらしい。【電話せんかいぃ!!】


行かせてもらいました。
【はい。これで4回目。】
やっと、適切なコンタクトをゲット!!!


はぁー。【ため息】せめて、2回でできんのんか??



代打日記。あわよくば1週間に一度くらいの割で掲載したいのですが。と言うわけで代打日記のライター募集!資格は...特にありません。が、やはりアイルランドに関するネタがいいなあ。言い方を変えると、アイルランドに住んでいる必要はありません。行ったことがある方や憧れさんも大歓迎。ただし、掲載の決定権は私Snigelが握ってますのであしからず。




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2002年09月25日(水) アイルランドの会社での6ヶ月目でのハードル

早いもんで…と言うべきかようやく…と言うべきかちょっと判断がつかないのですが、今の会社に勤めてはや半年が経ちました。この半年というのは、他は知りませんが多くのアイルランドの会社にとって大きな節目です。たいがいの会社では最初の半年を「仮採用期間」(英語ではprobation time)としています。つまり、雇用者、被雇用者双方から「辞める(クビにする)」権利を持った状態が半年続くわけです。


もう少しわかりやすく言うと、会社を辞めよう、あるいは社員をクビにしようという場合、この仮採用期間の半年なら、双方7日間の猶予(辞表提出日から辞めるまで)があれば会社を辞めることが、あるいは社員をクビにすることができます。ところがこれが、仮採用期間が終わると、社員側からは1ヶ月の猶予が必要となり、また、会社側からは社員をクビにするためには(社費の使い込みとかそういう次元の話でもない限り)、口頭警告、文書警告、そして最後通牒と3段階のステップを経なければ社員をクビにすることができません。ちなみにだいぶ前の日記でも書いたとおり、この会社、実は結構薄情で、社員をクビにした例もあたりするのです。


で、昨日、上役と面接がありました。お題は、「試用期間終了にあたって」


つまり、可能性としては(1)クビ(2)試用期間延長(首の皮一枚状態)(3)本採用…という3つのシナリオがあり得るわけで。


まあ、心配はしてませんでした。仮に(1)や(2)のシナリオに行くなら、多分会社はそれなりのサインを私に前から出しているはずで。私は確かに鈍感な人間ですが、いくらなんでもそういうサインを見逃すことはないかと。


で、上役のおねえさんと、北アイルランド出身の例の上司との三者面談。で、渡されたのはこんな紙。(10段階評価とかいうオチはなく5段階評価です)





システムに対する理解 くだらない間違いが多い
商品に対する理解よく理解している
カスタマーサービスいいスキルを持っているがたまに英語が下手
イニシアチブ上司の命令を待たずに自分から仕事を探している
出社率いつも定時に出社しほぼ病欠もない
社内での人間関係フレンドリーで他の社員にも受けがいい



結論:本採用


…なんなんですかねえ。これは。上役いわく「なかなかいい成績よ」なんて言ってましたが…。これを要約すると「人当たりの良いSnigelは欠勤などもないが英語が下手でくだらない間違いばかりをしているマヌケ…」ってことですよね。
それにしても「英語が下手」って。はあああああ。

あのー、これ書いたの、私の直の上司の北アイルランド出身の男ですよね。私はお客に聞いてみたい。「私の英語と(北アイルランド出身の)彼の英語とどっちがわかりやすいですか」って。結構いい勝負になりそうな気がするぞ。

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2002年09月24日(火) ビジネスパークに革命起こる

なんかぱっとしませんねえ。


「…え?何の話?」とおっしゃってくださった読者様は優しい読者様です。が、たいがいの人はお気づきのはず。作者本人が言ってしまえば身も蓋もないのですが、日記がここ数週間つまらない。これ、作者自身がはっきりと感じています。


まあ人生には波があって、現在日記を書く気力が下がっている…と言ってしまえばそれまでの話なんですがねえ。日記がぱっとしないと掲示板もぱっとしない(静かになる)。さらには「日記才人」の投票の数も減る。そして作者はさらにやる気を無くす…という悪循環に陥っております。何とかせねば。作者も頑張りますので、良かったら投票してやってくださいませ。


私の会社、だいぶ前の日記に書いたとおり、とんでもない広大なビジネスパークの中にあります。で、この「バブルの遺物」としか形容のしようのないビジネスパーク、その8割方のビルは未だに空。テナント不在。ここに来られると、そこはかとない脱力感を味わえます。


で、このビジネスパークにきのう「革命」が起こりました。


「SPARオープン」


そう、ビジネスパーク内にコンビニがオープンしたのです。これは私たちにとってまさに革命のような出来事です。今までガムが欲しければ車で片道10分以上かかる(それもすごいよな)店まで行かねばならなかったのが、今日からは同じビジネスパーク内でことが済む。前の会社では当たり前だったことが、今、ここでもようやく当たり前になる!何とすばらしいことか。


で、アホだと言われるでしょうが、お昼休みに同僚数人を引き連れてSPARに行ってきました。すると、SPARの方角に向かいなんと人の流れができている。で、その人の流れについていくと、何時の間にかビジネスパークの端の方に来てしまい、そこで、工事現場の兄ちゃんに言われたこと。


「SPAR?こっちじゃないよ!そこの地下駐車場をぬけて…」


迷うこと10分以上、ようやく辿り着いたSPARは何のことはない、会社からすぐ近所でした。こんな近所で工事が会ったのに気がつかない私もすごいと思った。


中に入ってみると、おお、すばらしい、日本の平均的なコンビニの3倍くらいの売場面積がある(品揃えがすばらしいとは一言も言っていない)。で、ワインも売っていれば、デリカウンターもある。


何せ財布の中に3ユーロくらいしか入っていない(しかもその3ユーロは明日街に行ったときに駐車料金として消える予定)スーパー貧乏な私はそのまま何も買わずに出てきたのだが、その数分後、会社の休憩室では大騒ぎが起こることに。


「見てみて、バナナ1本80セント!(90円)」
「この3.8ユーロ(430円)もしたサンドイッチ、チキンがひいふうみい3切れしか入ってないわ!」
「ポテトチップス他のニュースエージェントでは36セントなのにSPARでは50セント」
「このちいさなサラダが3ユーロ(330円)はあんまりじゃない?」



…もうお気づきですね。このSPAR、他にライバルがいない独占状態を悪用して殿様商売を始めたのです。田舎に来たサーカスの中では自動販売機のカンコーラがなぜか250円もするのと同じ原理。「文句があるなら他に行っとくれ」といわれても、私たちには行くところがない。


…ただねえ、SPARさん、確かにライバル店はないけど、その代わりお客の数も少ないのよ。私たちにそっぽをむかれたら明日はないよ。ちゅうかうちの会社のマネージャーさん、そろそろ社員食堂、作りませんか?

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2002年09月22日(日) 車が凹めば心も凹む。玉突き事故顛末記(3)

先週から書き始めた追突事故の話。お待たせを致しました。続きです。


で、事故を起こした翌日。とっても鬱な状態で会社に出社。ほどなく保険会社から電話がかかってきた。


「保険、カバーされてます」


…当たり前だっつうの。


反面、一晩いろいろ考えているうちに、保険を使うのは得策ではないと思ってきた。アイルランドでの自動車保険は「ぼったくり」の一言に尽きる。…と言うのも、仮にここで保険を使うと、確かに私の財布は痛まずにすべての処理を済ませることができる。反面、ここで保険を使うと、来年の掛け金が倍くらいに跳ね上がる。実は私の保険料は、「3年間の無事故」と言う前提で掛け金が設定されている。で、外の人に比べると私の保険料は安い。ところが一度保険を使うと、来年の保険料は「3年間の無事故」という前提が崩れ、保険料が自動的に跳ね上がってしまうわけ。じゃあ再来年はどうなるかというと、「1年間の無事故」と言う扱いになり、やはり保険料は高くなる。まあ感覚的にいえば、今の保険料が50なら来年は100、再来年は90という感じか。つまり中長期的に見れば、保険を使った方がいいのか使わなかった方がいいのかというのは微妙な問題になるわけ。


で、その日の午後、同僚が「ここは安い!」と太鼓判を押す板金工場(ちなみに英語では”Crash Repairer”と呼ぶようですが)に車を持っていってみる。すると、


「これなら600ユーロでいいよ」


とのこと。うーん、バンパーは凹み、ボンネットは捲れあがっているような状況で600ユーロかあ。…ということは相手の車は私の車ほどダメージを受けてなかったから、私の車以上に修理費用がかかるとは思えない。この瞬間に保険を使わないことが確定。


で、それからおよそ1週間、相手の車から何も言ってくることもなく日々は過ぎる。事故から10日くらい経ったある日、相手の車の持ち主から電話がかかってきた。


「保険使いたくないなら現金で600ユーロでいいよ」


…翌日私は現金を持って相手宅に行きました。…と言うわけで、時速10キロ程度の玉突きは1200ユーロでカタがつきました。それにしてもCDのこうかんがこんなに高くつくなんてねえ。トホホ。


事故は一瞬。気をつけましょう。はい。

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2002年09月21日(土) ひでかす洪水のチェコを逝く(その7)

ひでかすはヒコーキオタクのみならず、鉄道オタクではないか...そういう疑念がわかずにはおれないその7です。

ひできすがゆく--プラハ途中まで一人旅(7)--




―――さよならプラハ―――

 駅の2階でひできすはカプチーノを、Sはコーヒーフロートを飲む。この駅は古く、ドーム状になったコンコースは2階まで吹き抜けになっていて、その円状になった壁に沿って昔の切符売り場窓口が今も残っている。ここは一見の価値ありなのに写真を撮らなかったのが悔やまれる。


 土産物屋で時間をつぶし、出発20分前にプラットホームへ。ドレスデン、ベルリン経由、ハンブルグ行きの国際特急( Euro City )は今日は国境までしか行かないのに、食堂車付きのフル編成で乗客を待っている。この路線はチェコの列車とドイツの列車が交代で運行していて、僕らの列車はチェコ製のそれ(たしかPorta Bohemica号)。チェコ製の方がドイツ製のよりゆったりしていて、豪華に見える。


ところで、ドイツではいろんな国の列車が入ってくるので面白いですが、ドイツの友人が言うにはクロアチアの列車が一番良いそうです。興味のある方は、ザグレブ発ミュンヘン経由ベルリン行きの国際特急Mimara号というのがそれです。


 プラットホームで乗客と車掌の会話が聞こえてきた。
「…線路が浸水していて、列車は国境の手前のDeci(デッチン)までしか行きません。そこから先はいつ再開するか分かりません。」


ゑえええ?ぞんなあ、話がちが―う。(タイトルに‘さよならプラハ’と書いてしまったぞ。)


 こんな時皆さんはどうしますか?ひできすはもちろんタバコをぷかーっとやって考えます。そしてポケットをまさぐる僕の目の前にはしかし、でかでかとNo Smokingのサインが。悲しい、あんまりだ。イギリスでは最近禁煙の駅が増えました。しかしドイツではどこの駅でも地上なら吸えます(Snigel謹告。それはウソだと思う。たぶん地上でも指定されたエリア以外吸えない。ツッコミ求む)。ドイツで吸えるのならチェコでも同じだろうと思っていました。あ、ちなみにダブリンでは市内バスの中でも吸っている阿呆がいっぱいいますが。


 ひできすが悲しみにむせび泣いている間に、Sはさっき車掌と話していたカップルのところへ行って何やら話し込んでいる。どうやら彼等はドイツ人のようです。Sが戻ってきて言う。


「隣りにとまっているローカル列車で北に向かうと別の国境まで行けるそうよ。どうする?」
列車は5分後に出発。チケットはBad Schandau行きだが、知るか。わし等の知った事じゃない。「よし、乗っちまえ」。


 さよならプラハ、ひできすはまた来る。きっと来る、洪水でない時にまた来るぞ。こう心に誓ったひできすとSを乗せた列車はプラットホームを滑り出した。


 乗った列車は3両編成のTurnov(トゥルノフ)行き。ボロくて恐ろしくのろい列車だが、洪水と関係の無い北部高地を確実に国境に向けて走っていく。検札に来た車掌にチケットについて説明するがいまいちわかってない感じ。隣りにいたチェコ人が親切に翻訳してくれた。すると車掌のおばさんは「ああ、このままでいいですよ」と言って行ってしまった。隣りのチェコ人も肩をすくめるばかり。「ま、いっか。」


 列車はのどかな草原地帯をとことこ走る。交差する踏み切り一つ一つに赤い帽子を被った係員がいて、列車に合図を送っている。こういう景色、たしかポルトガルのローカル線で見たことがある。時々交差する小さめの川も所々であふれている。二時間ほどの旅で列車は終点に到着。ここで国境近くのLiberec(リバレッチ)行きに乗りかえる。


 駅は線路が10本くらいだーっとあるだけで、プラットホームが無い。そのど真ん中に止まった列車から降りた僕らは向こーの方にある駅舎まで線路を何本もまたいで歩いていく。駅舎から列車の方を振りかえる。しかしこれじゃどの列車がどこへ行くのかさっぱり分からないねえ。…と思っていると、あっ、列車から車掌が降りてきてプラハと書かれた黄色い看板を列車の横に置いている。なるほどね、そう言う事ですか。



 ところで次のLiberec行きの列車はすぐ発車するはずなのに姿が見えない。駅員に聞くと、こちらへ来いと言う。駅長室らしきところに案内された僕らに駅員は時刻表を見ながら、「ああ、その列車はこわれました」。


 「こわれたああ?」
こわれたって、壊れちゃったの?


 「壊れた」はドイツ語で「カプート」。駅員は口をすぼめてこの「カプート」を繰り返すので、何かおもちゃを壊してしまった子供のようでかわいかった。いや、そんなこと言っている場合ではない。みんなが時刻表とにらめっこしている間ひできすは、駅の外に出てバスの時刻を調べてみる。Liberec行き、あったあった。…一日一本。うーん、使えん。


 駅舎へ戻るとSが次の列車は30分後に出ると言う。何だ、大騒ぎする事無かった。


 出発まで時間がある。僕はみんなを残してさっき駅前にみつけたスーパーマーケットへ行く。車内で食べる果物と、お土産用のビスケットとウォッカを買って駅へ戻ると列車はもう入線していて、Liberec行きの看板が立っている。この列車はドイツ国境近くへ向けて山をぐんぐん登っていく。


 僕はひと寝入りしたようだ。目がさめると列車は終点の駅に入ろうとしていた。Liberec駅は大きい。ちゃんとプラットホームもあり、線路をまたいで歩くこともない。街も大きく、駅前には路面電車が走っている。ちょっとした観光地という感じ。冬はスキーリゾートにでもなるのだろう。ここでホットドッグとチェコビールを買いこんで、チェコで最後になる列車、Zittau行きに乗りこむ。最後であってほしい。

(次回、最終回に続く)


あれ?最終回じゃあなかったの?どうやら、次回こそが最終回です。




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