なべて世はこともなし
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2003年06月24日(火) ついに来た!同時進行、アイルランド入院体験記(2)

ひですです。Snigelは元気なくせに日記の更新が面倒くさいといっています。明日こそは自分で更新させます。ちなみにSnigelは元気もいいところなのでご心配お気遣いは一切不要です。


関連日記
昨日の日記


私のかかりつけの医者(GP)から車で10分程度のところにあるBeaumont Hospital。私が知る限りではここらへんでは一番大きい総合病院。


車を立体駐車場に停めて正面玄関をくぐったものの…どこへ行ったらいいのやら。受付で聞くと右側の階段を下りてすぐとのこと。はいはいと行くとそこには長椅子が6つくらい並んだ待合室がある。救急診察室の待合室は割と閑散としていて10人程度の人しかいない。読者さんの投稿から相当多くの人が今にも死にそうな様子で順番を待っている阿鼻叫喚地獄を想像していた私はちょっと拍子抜けする。


受付を済ませ(なぜか宗教まで聞かれた)やたらと低い位置にある長椅子に所在なげに座る私。何度も書くけど阿鼻叫喚地獄を想像していた私にとって待合室のきわめてフツーな様子はあまりに予想を外れている…などと思っていると診察室と思われる大きなドアから工事現場の作業着を着て頭を包帯でぐるぐる巻きにされたオッサンが出てきて、ここが救急診察室の待合室であることを思い出させてくれる。


さあ何時間待つ羽目になるやらと覚悟を決めていると受付を済ませてからわずか10分後、私の名前が呼ばれる。驚愕。わずか10分。


診察室ではなくその横の小部屋に呼ばれた私。中には私のタイプの看護婦さんが待っていて血圧・体温等を調べアレルギーの有無等を確認する。…異常なし。


看護婦さん:「じゃあ一度外に出てもう一度名前を呼ばれるまでお待ちくださーい」


…そういうことね。世の中そんなに甘くなかった。


確かに世の中そんなに甘くないものの、半面そんなに辛くもないようで、その時点からかっきし1時間後、私の番がやってきた。何という天の巡り合わせか今度は私と同い年くらいの女医さん。かわいさの中に知性があふれ出ている感じ。ビビビとは来ませんでしたが。


医者:「今、こっちの救急診察室はどこも開いてないから外科(怪我)専門の別室に行きましょう」


…いきなり別室ですか先生。などと劣情を持ったりはしてませんので念のため。ともあれ、人がひしめく大部屋を通り過ぎ、誰もいない別室へ。


で、本日3回目となる体温・血圧測定(さっき看護婦さんがやったのは何だったんだ?)。で、触診。私が痛がるのはへそのちょっと右下。そう、もうお気づきですね、私は盲腸の疑いをかけられているのです。風邪でかかりつけの医者に行ったのに、まさにひょうたんからこま、盲腸の疑いが急に出てきたわけ。そう、風邪くらいじゃあ病院に行けなんて言われませんよ。


ちょうど盲腸があるあたり(だと私は思う)を押されてその押された指が勢いよく離される時にちょっとした痛みが走る。ただし激痛でのた打ち回るとかいう次元ではなく、痛さでいえば軽く頬をつねられた程度。騒ぐほどではないし、この程度の痛みだったら私は医者にかかろうとは思わない。さっきも書いた通り、私は風邪で医者に行ったのであり腹痛で医者に行ったのではないのです。


医者:「うーん、盲腸にしては血圧も体温も正常だし、何より、あなた元気すぎるのよねえ」
私:「盲腸って熱が出て、痛さでのた打ち回るんですよね」
医者:「そういうことが多いわねえ。とりあえず、血液検査をして専門医に診てもらいましょう」



と言われ、先ほど通過した大部屋へ。二人で歩いているとどこからともなく明らかに病院関係者ではないおそらく一般人がやってきて、


女性:「せんせーい、XXさんが死んじゃったー」


と文字通り泣き叫びはじめる。まじかよ。おい。テレビドラマERの世界そのまんまじゃないかよ。


医者はなれたもので彼女の肩を抱き慰めつつ優しく彼女を救急診察室から追い出すと、私にひとこと


医者:「ごめんねー。でも救急診察室ってこんなもんよ」


…Snigelの運命はいかに。次回に続く。



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2003年06月23日(月) ついに来た!同時進行、アイルランド入院体験記(1)

どうも、Snigelのアパートの同居人ひできすです。Snigelのバカのせいでひですだと思っている人も多いようですが、ひですでありひですではないのでお間違いのないようお願いします。


今、Snigelのコンピュータを使ってこの日記を更新してます。Snigelの言ったとおり、この日記の更新ページその他のパスワードは律義にクッキー保存してあり難なく更新できております。Snigelは結構マメなやつなのかそれともズボラなのでしょうか。


さて、この日記の管理人Snigelですが、あまり詳しくは書けないのですが、実はかなりしゃれにならない状況になっています。はっきり言うとこの数日家に帰ってきておりません。ただ、行方不明とかそういう話ではなく、ちょっと困ったことになっているのです。とりあえず日記の原稿はもらってきたのでこうして私がSnigelに代わって日記を更新しています。


Snigelが言うには「スコットランドの話も書きたいがその前に自分の近況報告をしたい」ということでこの話を先にするそうです。連載になるそうなので私はできるだけ早くSnigelが家に帰ってき次第バトンタッチしたいと思っています。以下はSnigelが書いた原稿です。それでは。



ことは木曜日の夜にさかのぼる。…いや、もっと正確に書けば3週間前にさかのぼったりする。ずーっと風邪が治らずボーっとしてた私は木曜日の夜になって突然腹痛に襲われる。…と言っても激痛などではなく「ちょっと痛むかなあ」という感じ。ただそろそろいい加減に風邪が治らないとおかしいなあと思っていた私は翌金曜日に会社が終わってからかかりつけの医者に行くことに決める。


で、翌日(金曜日)。相変わらず調子が悪いが特に悲惨という訳ではなく、ましてや医者に行くべきとはあまり思えない。まあ予約もしたしというわけで軽い気持ちで近所のかかりつけの医者へ行った。


近所の医者にて3週間くらい前から調子が悪くずーっと軽い頭痛や鼻水に悩まされていること、昨夜から腹痛もあることでもビールはしっかり飲んでいることなどを話す。


けっこう若い怜悧そうな左利きの女医さんは血圧を測り、体温を測り、そして触診を始める。


医者:「どこが痛い?」
私:「あ、そこ」
医者:「え?ここ?ここが痛いの?」
私:「あ、うん、そこが痛いの」



医者は私が痛いところを見つけるとひとこと


医者:「紹介状書くから、今、すぐBeaumont Hospitalに行くこと」
私:「はぁ?」



よーは知らんがイギリス・アイルランドでは大怪我を除いていきなり病院へ行くことはできない。同様に専門医に突然かかることはできない。唯一の例外は歯医者。ともあれ、頭痛から心の悩みに至るまでまずは自分のかかりつけの医者(General Practitioner略してGP)行き、必要なら初めて専門医・病院へ行くことになる。これを逆に言えば専門医・病院に紹介状をもらうということは何らかの厄介な問題をかかえたということに他ならない。


私:「まさかと思うけど、ですか?」
医者:「まだ分からないわ。だから血液検査等専門的な検査をしてもらい必要な処置をしてもらうことね」
私:「今すぐ行ってもいいんですか?もう金曜日の夕方5時ですよ」
医者:「急患のところに行きなさい」
私:「それほど悪くないと思うのですが」
医者:「とにかく、つべこべ言わずに今、すぐ行きなさい。今行かないで夜遅くなると、ヨッパーとかで大変なことになるから」
私:「はーい」



こうして私は生まれて初めてアイルランドの病院Beaumont Hospitalに行くことになるのですが、この続きは明日に続く。



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2003年06月18日(水) スコットランドの旅行記を書き始めたつもりが...大脱線




ブリティッシュミッドランドの機内誌Voyager。 これはブリティッシュミッドランドに限った話ではありませんが、ヒコーキの機内誌は概してつまらない(全日空の翼の王国はまあまあいけてると思うが)。ただこの理由はある意味当然で、こういう機内誌は世界を股にかけるフレクエントビジネストラベラーのためにあると思われ、私のようなビンボー人にはあまりビジネスの話や別荘の話は興味がないというか縁がないというか…。


かくしてこのVoyagerも別に見るとはなしにぱらぱらめくっていた。中古ロレックス売買の広告…ああそうですか、誰か聞いたこともない人のインタビュー…読む気もせん…なんてやっていたのですがふっとひとつの全面広告が目に留まった。





モバイルギア用のプリンター。


こんなもん買う人がいるのかな…と思うだけなら目に留まりすらしなかったが、この広告、見れば見るほど味がある。


空港のラウンジらしきところでノートパソコンを使い会議の議事録を作るビジネスマン。それはいいとしてこのプリンターの会社、もしかして


ブラザー?


ブラザーって、私が中学生くらいの頃ワープロに手を出して大コケしたあの会社?まだこの会社存在してたの?(ブラザー関係者の方、あくまでコメディですので聞き流してください)あの会社が今、こんな誰が買うかわからんプリンターを作ってる?


うーん、目の付け所がブラザーだ。


でこの広告が私の目に留まった最高にして最大の理由。窓の外にボケて写っているヒコーキにはい注目―。



ん?このヒコーキは…。


まさかライアンエアー?


機体前部のRyanairのロゴは画像処理で消しているものの、この機体、この青と白のツートンで黄色のラインのワンポイントといえば紛れもなく、あのRyanairではないですか?


ブラザーさん、世界のビジネスマン相手に広告出すならもうちょっとマシなヒコーキはなかったの?ちゅうか、Ryanairが飛んでくるこの空港ってどこよ?


何せRyanairはまともな空港に飛ばない。あ、これ、私が言ったんじゃないですよ。今、私の手許にはグラスゴーの空港で手に入れたRyanairのCustomer Service Promise(Snigelによる超意訳:「お客様への誓い」)にちゃんと書いてある。私をしてグラスゴーの空港でダウンさせたこのテレカサイズのカード。ツッコミ所満載なのでここでひとつひとつ突っ込んでいきましょう。





Ryanair's Service Promises

1. Safety
2. Very low prices
3. No.1 punctuality
4. New modern aircraft
5. Efficient, uncrowned airports
6. Friendly, hospitable on-board service



1. Safety (安全)

当たり前です。例えタダでもヒコーキが落ちたら話にならん。「安全はすべてに優先する」なんてどこの工事現場にも書いてあるし、単なる掛け声のような気もする。


2. Very low prices (格安)

確かに時間と曜日を選べば安い。ただしラストミニッツならエアリンガス他の方が圧倒的に安いことが多い。


3. No.1 punctuality (定時運行率一)

これまた当たり前。乗り継ぎを保証しないで、かつイナカの一日10便離発着があるかないかの空港を使ってたりするんだから。


4. New modern aircraft (最新の機材)


ぎゃははははははは _(__)ノ彡☆ばんばん!

なんですか、私が乗ったRyanairのキルケニー号。機齢23歳ルフトハンサが古くなってスクラップにしたこのキルケニー号をあんたんところはNew modern aircraftと呼ぶんですか。




参考写真:キルケニー号(左)とその昔キルケニー号がルフトハンサだった頃(右)。




ちなみにこの項目を書くのに私は30分近くネットサーフィンをしてこの内容を調べました。いくらなんでもキルケニー号がルフトハンサのお下がりとか初飛行が80年の3月だとかは調べないと分からない。Ryanairの名誉のために言うと、現在約20機ある737−200(要するに20年くらい前の機材)は今年末までに全部ようやく捨てるそうです。もしそうなれば機齢は4年以下になるからNew modern aircraftというのはまんざら嘘じゃなくなる。


5. Efficient, uncrowned airports (効率的で混んでいない空港からの発着)

…要は着陸料がもったいなくてどうでもいいようなイナカの空港に飛んでるくせに。モノは言いようですね。


6. Friendly, hospitable on-board service (フレンドリーで暖かい機内サービス)

「なれなれしい」「フレンドリー」を御社は混同してませんか。まあよほどフレンドリーでない限り、1本400円近くする生ぬるいビールなんか買う気にならんわな。


気がつくと、スコットランドの旅行記のつかみを書き始めたつもりがいつの間にやらRyanairの悪口になってしまった(いつもRyanairをネタにすると話が長くなるのはなぜだ?)。とりあえず今日のところはここでやめときますが、次回こそ、まともなスコットランドの旅行記を書きますのでよろしく。


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2003年06月17日(火) Kinnityとはこれいずこ?

スコットランドの旅行の話を書きたいなあ…と思っているのですが、どうも風邪が治らずに頭がぼーっとしたままです。写真を加工して、ストーリーを考えてという大きな作業をする気がしません。というわけで今日は完全なつなぎ更新です。


どうして風邪が治らないか論理的に考えてみました。答えは意外と簡単でした。


(1)トシ
(2)ろくなもんを食ってない



Snigel、いつの間にやら28歳。あと2年もすれば30です。コドモの時に「30以上はオヤジである」という基準を勝手に決めていた私にとって、自分がその年になるというのは落ち込みますなあ。


で、それ以上にどうもここ数日ろくなもんを食ってません。六尺三寸の寝床の横に、


「Snigelさん、ほら、食べなきゃだめじゃない。おじやを作ってきたわよ」


なんておじやを持ってきてくれるかわいい女の子はいないものだろうか。…自分で突っ込むと実はおじや、大嫌いだったりするんですよね。おかゆ系、きらい。もっと言えばおでんも嫌い(←食べたいものがなく、いつもゆで卵だけ食べる)。たまに自分が日本人なのかどうか疑問に思いますが。


かくして、ただいまもひでかすの食器棚から勝手に盗んだパン2枚とLIDLで買った魚の缶詰(くさいので顰蹙を買う)とカップスープというわびしい昼食を済ませてきたわけですが、昼休み前にBallyfarmot在住(=もろダブ)同僚とこんなばか話をしてました。


同僚A:「で、その後彼女は元気?」
私:「元気だよ。なんでよ?」
同僚A:「聞いただけ。いつ結婚するの?」


…こういうくだらない質問にはくだらない答えをするのがいちばんと洋の東西を問わず決まっている…と私は決めました。ちなみに彼女は未だに結婚とは程遠いところにいるようです。あ、彼女がモテないとは決して言ってませんよ。ただ机の前の彼氏の写真がほぼ月代わりで別人になるのがほんのちょっと気になってるだけです。


私:「ああ。誰から聞いたの?来年だよ」


言うまでもなく口からでまかせですので念のため。


同僚A:「本当に?どこで。アイルランドで?日本で?」


私は数日前の掲示板の投稿をふっと思いだし…


私:「Kinnityのお城を借りた」
同僚A:「どこ?それ?」



新事実発覚。アイリッシュの一部は、Kinnityがどこか知らない。


私:「ミッドランドだよ。知らないの?」(←称して知ったかぶりといいます。私だってどこか知らない)

同僚AはおとなりのTallaght在住の同僚(=これまたもろダブ…って掲示板の投稿に「Tallightに住んでました」という投稿が今日あったばかりだったなあ)に向かい


同僚A:「Kinnityってどこか知ってる?」
同僚B:「聞いたこともないわ」



新事実発覚。アイリッシュの多くはKinnityがどこにあるか知らない(←サンプル2つで決め付けるなよ)。


かくして私がKinnityを知らなかったことは恥じるべきことではなかった時がつかされました。


ただ、そういうことってよくありますよね。私Q州出身ですが、Q州のこと、実はQ州に住んでいない人のほうが良く知っているとか、別の例では東京にコドモの時から住んでいる人は(遠足ででも行かなかった限り)東京タワーに上ったことがないとか。ダブリンに住んでいるアイリッシュは意外なほどダブリン以外を知らなかったりします。


ともあれ、同僚A・Bは私に集中砲火を浴びせます。


同僚A:「どこよそれ?そんなとこアイルランドにはないわよ」
同僚B:「私アイルランドには詳しいけど、そんな地名聞いたことがないわ」



数分後、私は静かにKinnityのお城をGoogleで検索をかけてそのページをメールで優しく送ってあげました。ふふっ、(今日のところは)勝った。



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2003年06月14日(土) 国勢調査員は3度ベルを鳴らす

ピンポーン♪


誰からうちのドアのベルを鳴らす。夕方8時(明るいので「夜8時」という感覚ではない)。


無視。


だいたいうちにやってくる人間なんてろくなもんじゃないと相場が決まっている。大学時代に独りでアパートに住んでた時もやれパラボラ放送の受信料を払えだの(←それは義務じゃないのか?)、巨人新聞を取れだの、赤旗党のチラシ投げ込みから果てはモロ見えおげれつビデオのチラシ投げ込みまで。


アイルランドもまあ同レベルのような。「チャリティのスクラッチカードを買え」だとか(これが一番多いような気がする)、某与党の地元政治家はうちには参政権を持っている人間はひとりもいないのに2ヶ月に一度は戸別訪問してくるし、今の家ではないけどその昔柄の悪いエリアに住んでた時はガキが車を洗う代わりにチップをくれとやって来たり(車など持ってなかったのに)、例の必ず当たるスクラッチカードを投げ込んでいったりとまあ、とにもかくにもろくなもんじゃない。アパートと違ってインターホンで撃退できないところも辛いところ。呼んでもいないタクシーがやってきたこともあった。


ここまで書いてふっと思い出したけどこんなこともあった。ある日、カタログショッピング用のカタログを投げ込んでいったオッサンがいて、中にはDIYやキッチン用品がごちゃごちゃと書かれているが値段的にも商品的にもまったく興味なし。かくしてそのままごみ箱(正確にはリサイクルボックス)ポイになった。


そこまではよかったが、このカタログを投げ込んでいったオッサンが翌日再びやってきて、


オッサン:「カタログ置いていったものだけど、何買う?」
家人:「なにもいらない」
オッサン:「じゃあカタログ返して」
家人:「え?捨てたよ」
オッサン:「なんて捨てんだよ!」(怒)



ごみ箱の中で水分を吸ってべこべこになったカタログを渡してオッサンを追い返したことは想像に難くないかと。だいたい頼みもしないのに勝手に家のポストに投げ込んで行ったものの所有権を主張するか、フツー?そういえば日本で銀行口座に勝手に振込をして無理矢理お金を貸す悪徳金融業者が問題になってるとかなってないとか。それとは次元は違えど似ているような似てないような…。


閑話休題。話は最初のドアベルが鳴ったところに戻る。この日の夕方のドアのベルも家には私しかおらず、かつ、私は玄関から離れた二階の自室にいた(日記の更新をしていたのです)ので無視。


ピンポーン♪


…何度押されても出ないもんね。例え前庭に自分の車が止めてあっても家には誰もいないのだ。ああ、玄関の外に電気メーターがあるような国じゃなくて良かった。


それで訪問者は諦めたらしくドアベルはそれ以上鳴らなかった。


翌日、同時刻、やはり同じように…


ピンポーン♪


…ドアベルが鳴る。


無視。


もう一度


ピンポーン♪


無視。


…諦めたらしい。


さらに翌日の同じ時刻、同じように


ピンポーン♪


…がこの日は違った。この日私は運悪く二階の自室ではなく一階の台所にいた。台所にいると、玄関の曇りガラスから台所の人影は見えてしまうのだ。つまりここにいる限り居留守は使えない


私はいやいや玄関のドアを開ける。さあ、今日は何を売りつけようというのか。


そこに立っていたのは年の頃30半ばと思われるおばさま。ブロンドの髪はきれいにショートで決まっており、婦人用のスーツをきちんと着こなし、左腕にはノートパソコンを抱えている。…なかなか知的な女性という印象を受ける。女性はおもむろにノートパソコンを広げると…


女性:「こんばんわ。私、ナントカ省(忘れた)の国勢調査を実施しておりまして、ただいま若干の質問に答えてもらっています。ええと、この家にはAさんとBさんがお住まいでよろしいですか?」


AさんとBさん…確かに住んでるけど。ちゅうか、このおばさんが毎晩やってきてたのか?


私:「はあ?国勢調査?それ去年だかに大掛かりなのをやったんじゃないんですか?たしか20ページも渡る小冊子を埋めて送った記憶があるんですが」
女性:「いえ、それはカントカ省が行ったもので、私どもはナントカ省です」



…なんだかなー。どこかの国がある日は電気屋が道路に穴を掘り、翌日ガス屋が穴を掘り、その翌日道路管理者が道を掘りかえす…とかいうとんでもない非効率なことを当たり前の顔してやってたみたいだけど、アイルランドもあまりやってることの次元は変わらんなあ。そんな質問、いっぺんにやってデータを使い回しすればいいのに。


などと思いつつ、やれ私の最終学歴だの、現在学校に通っているかなどおもに学歴と年収に関する関連について知りたい様子。正直で素朴な私は(私は正直で素朴ですが何か?)それらの質問に素直に答える。女性は手際良くそれらの情報をパソコンに入力していく。唯一、この質問を除いては…。


女性:「ええと、最終学歴は、大学ということですが、学部は何ですか?」
私:「はあ、不経済学部ですが」
女性:「不経済学部…、不経済、不経済、その選択肢はないわねえ。『数学』でいいかしらねえ」



…だいぶ違うぞ。だいたいなんでもっとも一般的ともいえる不経済学部が選択肢にないんだよ。どこかアイルランドはやはり抜けている。


数日後ひでかすにその話をすると、


ひでかす:「ああ、そのおばさんだいぶ前にうちに来たよ。ほとんど全部の質問に『答えたくない』と回答拒否しちゃったよ。おばさんは『Fair Enough』と結構諦めがよかったよ」


…なるほどねえ、そういうテがあったか。こんどこのテの訪問者が来たらそうしよう。そう思った翌週、私の手元に訳のわからん手紙がやってきた。封筒の表には





と書いてあり、中には私の住所・名前・PPS番号(納税者に割り振られている番号)までごていねいに印刷してある。日本で住基ネットがどうこう未だに議論されてるけど、アイルランドではいい悪いは知らんがこのPPS番号で個人は完全に番号管理されている。


質問:「最終学歴は」
質問:既婚・既婚、子供の有無



など個人のプライバシーにもろ首を突っ込んだ質問がずらずら並ぶ。


で、同封の紙には


「あなたはアイルランド中の10万人のサンプルの中に選ばれました。あなたの雇用主には、あなたの勤務時間・給与等の質問に答えていただきます。(中略)この調査は法的な根拠があり、あなたには回答する義務があります。(中略)1週間以内に同封の専用封筒を使い返信してください。」


…なんだかすんごく高飛車だと思うのは私だけですか?


で、質問事項を良く見ると、過日ノートパソコンを抱えた女性が私に聞いていった質問とほぼ重複してます。アイルランド政府はなんとかして私の個人情報を集めようと躍起になっているのではないか…などといつも通りで尾行されていると思う被害妄想を持った人と同レベルの被害妄想を持ってしまう。


さらに中を気をつけて読むと


「個人情報はいかなる場合も政府機関その他に開示されることはありません」


…あ、それでか。要は個人情報の保護のために政府(省庁)間でデータの横流しができないんだ。


ちょっとは安心したものの(というか秘密にするようなデータはほとんどないんだよね)、半面、この効率の悪さは何とかならんものかと思っています。


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