なべて世はこともなし
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2003年06月30日(月) まだまだ続く。アイルランド入院体験記(4)

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往来の多い廊下の物音に拘らずまどろんでいると、先ほど渡しに手術を宣告した医師がやってきて私の調子はどうか聞いてくる。


私:「全然悪くないんですけど。居たくないし。本当に今晩手術するんですか?」
医師:「うーん、どうせ手術室も空いてないし、今晩一晩様子を見て明日決めようか」



…とりあえず手術回避。


そのあと看護婦さんがやってきて私のお腹に注射1本。


そんなこんなのあと、つかの間の静寂(と言っても相変わらず廊下は騒々しい)がやってきて、担架の上で眠ったんだか眠らないんだか分からないうちに誰かがやってくる。つけっぱなしの腕時計を見ると朝の5時。眼鏡なしではほとんど何も見えない私。しかも頭が作動していないからよく分からんがどうやら看護士さんらしい。


看護士:「病室のベッドが空いたから行こうか?」


誰か死んだんですか?この時間帯に?


看護士さん、そんな必要は全くないのに私を担架ごと病室に運んでくれようとするが、ふたりで運ぶべきところどうやら応援が来ず、ひとりで運ばねばならないらしい。この部屋の入り口が狭いことも手伝って(少しは考えて設計しろよ)これがなかなか難儀らしい。


看護士:「えへっ、ごめん。今車椅子持ってくるから乗り換えて」
私:「だーかーらー、自分で歩けるってば」
看護士:「いやいや、車椅子持ってくるから待ってて」



数分後私は産まれて初めて車椅子に乗せられて病棟へ。それにしてもBeaumont Hospitalは巨大な病院でして、ベッド数は優に600を超えるそうな。私はリフト(エレベーター)で最上階4th floor(日本式にいえば5階ね)の病棟へ。


六人部屋のいちばん奥の窓際のベッドがあてがわれる。すぐに看護婦さんがやってきてもう何度目になるんだろう、血圧と体温を測定。体温36度。血圧上が110の下が65。…これを健康と呼ばず何というんですか?


でなぜかこの看護婦さんに太股まで完全にカバーする白いストッキングを履かされる。この時は暗くて気がつかなかったが、白いストッキングから脛毛が一部はみ出している姿は自分で見てもなかなか気持ち悪い。「私ってきれい?」とかいうどこまでも寒いオヤジギャグをかます余裕はあったがこのストッキングが何のためか聞くのを忘れてしまった。…もと正直に書けば聞いたけど、眠くて覚えていない




年寄りの多い病院の朝は早い。6時30分にはもう誰かが起きてくる。外はすでに明るい。後で知ったが病室は男女別らしく私以外のこの六人部屋の住人はすべて男性。3人は70歳かそれ以上のいつお迎えが来ても驚かないじいさまばかり。あとの二人は50代半ばといったところか。私の向かいのベッドの50代半ばと思われる男性はなぜか右足の膝から下がない。それ以外の人はどこがどう悪いのか外見からは判断できない。


朝7時30分。看護婦さんがまた検温・血圧測定に来る。漆黒の髪と浅黒い肌の小柄の看護婦さんはフィリピン人。この看護婦さんが私の担当になるのだが、それ以外にも別のフィリピン人の看護士さんが同じ病棟に。救急治療室でもフィリピン人と思われる人を数人見る。どうやら「医療現場にはフィリピン人がけっこういる」という噂はあながち間違っていないような気がする。


でこのフィリピン人の看護婦さんに限らず看護婦(士)さんのかいがいしい働きぶりには感心するばかり。自分が怪我や病気で参っている時に白衣の天使様に優しくされたらそりゃたいがいの男はころっといってしまうわな…と実感。


朝8時30分。点滴はされてはいるもののお腹が空く。お腹が空くものの私は絶食中の身。水すら飲めない。が他の5人は朝食が届かないことにぶーぶー言いはじめる。


だんだん気がついてきたがこの病室の雰囲気はすこぶるよい。50代半ばの男性二人がそれこそ看護士さんに負けないくらいかいがいしく働いており、例えばじいさまのひとりがトイレに立とうとするとさっと手を貸したり、水を汲んだり特に右膝の下がなくて車椅子で移動しているのにじいさまを助けようとしている姿は私をして尊敬のまなざしで見ざるを得ない。


8時30分に届くべき朝食が私を除く5人に届けられたのは9時30分。…さすがはアイルランド。(続く)


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2003年06月28日(土) 駄ネタ

とあるところでこんなページが紹介されていました。おヒマな方はどぞ。


2003年06月27日(金) ついに来た!同時進行、アイルランド入院体験記(3)

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さあ、お約束通り、救急治療室の廊下で一晩明かす羽目になるのかと思いきや、看護婦さんはたった今の今迄使われていた担架のシーツを手際よく替えはじめる。で、私の向き直って、


看護婦:「あ、ちょっとそこの2つめのドアの小部屋で待ってて」


彼女に指定された部屋は6畳程度の部屋で、推定急患でかつ特に必要のない患者を一時的に軟禁滞在させておく部屋らしい。壁に2組の酸素用のバルブがあるところを見るとどうやらふたりを収容するらしい。…そんなことを考えていると先ほどの看護婦さんが担架を新しいシーツで整えて戻ってきた。


看護婦:「はい。じゃあここでしばらく休んでて。あ、この部屋手術まで使ってもらうから。あと、もうひとりここに来るからよろしく」


しばらくすると、サッカーのユニフォームを着た30半ばの男性が松葉杖をついてやってきた。ここまで何が原因でここにいるかが分かる人も珍しい。


彼に話を聞くとやはりサッカーの途中でかかとを剥離骨折したらしい。ただしどういう理由だかは知らないがギプスや包帯をしていないので外見上はあまりよくわからない。彼いわく


彼:「勝ったからいい!でも今ごろ他のメンツがパブで祝勝会をやっているかと思うと悔しい!」


とのこと。


彼の本業は何と警察官。しかも私がEastwallに住んでた頃、そこの担当だったそうで、世間は狭い、あの「ダブリン家がない」に出てきたヤクの売人の件の話をすると


彼:「ああ、その話なら覚えているよ。たしか一階に3部屋あるアパートだろ。よくあんなところに住んでいたねえ」


…今にして思えば私もそう思います。


そんな雑談をしていると看護婦さんがふたり入ってきて、警察官に向かって…


看護婦:「ええと、あなたが盲腸の手術をする患者さんね」

そしてに向かい


看護婦:「そしてあなたがかかとの剥離骨折の手術をする人ね」


わずか1分30秒で手術を決定した次は患者の取り違えですか?幸いにしてというべきか、さすがに看護婦さん、私たちの唖然とした表情から患者の取り違えに気がついたようで…


看護婦:「あーら私ったら嫌だ。逆じゃないの!」
警察官:「何?俺の盲腸取っちゃうつもりだったの?」
私:(引きつり笑いをしながら)「オレの足を開けちゃうつもりだったの?」



看護婦さんは笑いながら


看護婦:「間違えないようにここに『この足を手術』と書いておきましょうね」


と言いつつ、警察官の右足にボールペンで大きなバツ印をつける。すると警察官氏は


警察官:「骨折したのは右じゃなくて左なんだけど。(私を見て)おい、今晩、絶対寝ちゃだめだぞ。寝たら最後。何が起こるか分からんぞ」


…確かに。腎臓の一つくらいなくなってるかもしれない。おいアイリッシュ。何でも笑ってすると思うなよ(怒)。



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2003年06月26日(木) とことん行きます地の果てまで。スコットランド旅行記(1)

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6/18の日記

ライアンエアに乗るたびに、「命の安売りをした」と後悔するのは私だけでしょうか。20年以上経った経年機。そりゃ新しけりゃいいってもんじゃないのは分かる。だけど真新しいヒコーキの方が安心感があるわけで。


しかも落っこちた日にゃ、「あんたこんな安いチケットで乗ってるんだから、賠償金も安いよ」なんて言われそうな気がする。落ちて死ねば後は野となれ山となれというのは間違いないが、ただ、どうせ死ぬなら親が金銭的に困らない(=賠償金ががっぽり入る)死に方をしたいと思うのは私だけか。


ライアンエアネタに入るとまた長いのでこれ以上は省略。ともあれ、私の乗ったおんぼろキルケニー号は高度を上げる間もなくグラスゴーはプレストウィックなるローカル空港に着。グラスゴーまで車で小一時間。東京の羽田が、グラスゴーインターナショナルとすれば、このプレストウィックなる空港は成田になるのだろうか。とにかく遠い。…ゆえに安い。


プレストウィック空港で借りたローバー25。さすがイギリスのレンタカーはイギリス車なのかなどと思いつつ出発。


今回の旅行はレンタカーと航空券の手配を除いて全部ひでかすまかせ。同居人兼同行のドイツ人Samantha(仮名)に至っては自分の下着をカバンに詰めた以外何もせず。ともあれ3人での旅。行き先等はすべてひでかすに任せた。何せひでかすは私がスコットランドに行ったことがないのに対し、なんだかとんでもない離れ島まで行ったことがあるくらいまたオタクぶりを発揮スコットランドに詳しいらしい。


で、ひでかすが決めた今回の旅行のコンセプトは「とにかくイナカへ行く」こと。これ、非常に正しい選択といえる。例えば、ダブリンを見ただけでアイルランドを見たとは言えない。はっきり言ってしまえばダブリンはアイルランドではない。これ、私の意見なんですが、入院中に出会ったアイリッシュもまったく同じことを言ってました。


平たく言えば「エメラルドアイランド」だの「羊が静かに草をはむ光景」などダブリンでは見られない。言い方は悪いがダブリンはどこにでもある町に成り下がってしまった気がする。これと同様に、グラスゴーだエジンバラを見ただけでスコットランドを語れるとは到底思えないのだ。そりゃグラスゴーもエジンバラもスコットランドの重要な都市。だけどスコットランドの真骨頂はアイルランド同様都会ではなくイナカにあると思う。

行程


今回のルート。赤が一日目、青が二日目、紫が三日目です。はっきり言ってめちゃくちゃな距離走ってます。

で、ひでかすいわく、「地球の騙され方」(仮名)等のガイドブックにはスコットランドの田舎の方はまったくといっていいほど紹介されていないそうな。私がガイドブックを見た訳ではないので断言できないが、ひでかすいわく、スコットランドの紹介はグラスゴー・エジンバラ、そしてよくてフォートウィリアムまででそれより先のイナカに関してはガイドブックに載っていないそうな(地図参照。クリックすると拡大します。664KBと重いので電話回線の方は注意)。


これもある意味分かる。なにせスコットランドのイナカはアイルランドのイナカ以上に公共交通がない。バスが一日2便とかしかないところへ公共交通機関を通じて行こうというのは至難のわざ。かくして「地球の騙され方」等のガイドブックにスコットランドのイナカが載っていなくてもそれは何も驚くには値しない。




かくして、グラスゴーを何の迷いもなく通過した私たち。最初の目的地はGlen Coe。ここ「すんげえ美しい谷」(ひでかす談)なんだそうな。谷の入口の橋からしてたしかにいい感じだわ。で、Glen Coeに入っていくと、なるほどいい感じだわ。




とか思っていると、突然目の前に警官登場。警官いわく


警官:「今、ハリーポッターの映画の撮影中なのよ。ちょっと待って」


待たされること10分。車を出すと





…煙を焚く謎のオッサン発見。


すると…




…今度は謎のバン発見。映画会社のバンにみえる。


さらに…



どっかで見たような家発見。そう、ハリーポッターの映画をご覧になられた方はもうお分かりですね。あのロケ地はスコットランドのGlen Coeであることが判明。いい勉強になりました。


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2003年06月25日(水) 閑話休題。アイルランド人のいい加減さの小ネタ二話。

あどーも、Snigelです。ご無沙汰をしておりますです。掲示板・メールでのお見舞い本当にありがとうございます。何といいますか、会ったことのない皆様からお見舞いをもらったりして皆様のそういう優しさがあるからついと更新しないわけにはいかないという気分になるんですよね。本当に幸いにしてこのホムペは良い読者さんに支えられております。改めて感謝しますと同時にこれからもよろしくお願いします。なお私はいたって元気ですので。


で、入院の話なんですが、あと四回くらいに分けて書きます。この話、質問や掲示版でのネタで盛り上がったこともあるところからして、多くの人が興味を持っている話だと理解しています。そういう思いもあるので、多少だらだらした内容になっても省略せずに細かい内容を書いていきたいと思っています。自分で言うと世話がないですが、入院の話、かなりの自信作です。アイリッシュに話しても床で笑い転げてくれます。本当に信じられない体験でしたから。


と同時に、スコットランドの話も書きたいので交互連載のような感じでしばらくやっていこうと思っています。ちゅうわけでよろしくです。


今日はちょっとしたアイリッシュのいい加減さの小噺を二つ。


その(1)スペシャルオリンピック


アイルランドでスペシャルオリンピックが始まりました。いまいち自信はないですが、日本で言うところの「パラリンピック」ってやつですか?要は障害のある人のオリンピック。オープニングイベントに5億円だかを使ったとか。U2やコアーズやネルソンマンデラまで呼んだ開会式。個人的には外したなあと思ったのですが、巷の評判は極めていいようで。


当然日本チームも来ています。日本チームはキルデアだかニューブリッジだか忘れましたがどこかの町にホームステイしているはずです(ホストファミリーはボランティア)。それはいいのですが、実は4月くらいだったでしょうか、読者さんを通じて私のところにメールが来たのです。


「日本人各位
日本人の通訳が足りない。お願いだから手伝って」



という内容のメールがスペシャルオリンピックの実行委員会から来まして。けっこう切羽詰まった内容だったのです。


人生でボランティアとか社会奉仕とかそういう「善行」をほとんどしたことのない私。よっしゃー、ここは一発ボランティアをするべえとボランティアに申込んだ。会社とも交渉してボランティア休暇の認可された。


なのに、スペシャルオリンピックの実行委員会からの連絡はなし。せっかく無理して取った休みもキャンセル。


…日本人、いらないなら最初から頼むなよ。


(2)UTVip


何度も書きますが、私の家のインターネット、未だに56K電話回線です。私の使っているプロバイダはUTVipという会社で、夕方6時から朝の8時まで使い放題で月30ユーロというプラン。これが今日のニュースによるといつでも24時間使い放題で月に25ユーロに値下がりするという。おいしい話。


で、UTVipからメールが来て「そのサービスに移行するためには新しいダイヤラーをダウンロードしなければいけない」とのこと。別にダイヤラーをダウンロードすること自体何の苦にもならないのでやってみた。ところがエラーメッセージが出てくるばかりでインストールできない。そこでテクニカルサポートに電話してみた。


ちなみにUTVipのアイルランドのメインオフィスはベルファスト。ご存知の方はご存知だろうけど、北アイルランドのアクセントは英語に自信がある人にもちと難しい。もっと言えばネイティブスピーカーにも通じないことすらある。


待つこと10分。ようやく男性のオペレーターが出た。

オペレーター:「UTVipテクニカルサポートです」(←きっとそう言ってたに違いない)
私:「かくかくしかじかでダイヤラーがダウンロードできないんですけどー」
オペレーター:「はい。何やらUTVipのホムペにアップロードしてあるプログラムにバグがあったみたいです。明日修正版をリリースする…はずです。今日はこの電話ばかりで…」



…。ちゃんとテストしてからアップロードしろよ。


私:「あっそう。じゃあいいや。新しい番号教えて。ダイヤラーなしでもマニュアルでプログラム変えるから」
オペレーター:「番号知りません」


…私にもできるな。このくされテクニカルサポート。まこんなことは日常茶飯事なのでいちいち驚いていられませんが。



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