イトナミ_エイエン

2003年01月29日(水) 幸福の日

白無垢を着た僕の友人はとても綺麗だった。
女神のように微笑んで、慈愛に溢れた所作で、夫になる人の腕をとった。
式場の廊下で君は言ったね。
「多分、今日が一番幸せな日」

確かに、ほんの少し波乱ぶくみな君の人生だったからね、
そう思うのかも知れない。

大丈夫、幸せな日は明日からも続くよ
花嫁衣装のままの君と、ハイタッチをしているとき、
僕は誰よりも君の幸せを祈っていた。



2003年01月23日(木) 酒と酒の日々

グレンリベットで始めて、マッカランに乗り換える。
これだけの儀式を飽く事なく繰り返す毎日。

もう、分かってるはずなのに、マスターは必ず聞く。

「何にしましょう?」

「グレンリベットを下さい」

とお願いする。
2杯、3杯、日によっては4杯飲んで、マッカランに切りかえる。

「マッカランを下さい」

「はい。」

どれだけ喋っても、このやりとりだけは外せない。
僕の大切な儀式。



2003年01月22日(水) 冷たい風が

今年、一番の寒波が街を襲い、
僕らはコートの襟を立てて、背中を丸めながら歩く。
街路樹まで氷ついてしまったように見える交差点は、音に溢れているのだけれども、どこか静謐な雰囲気が漂っている。
「冷たい空気は音を吸収するんだよ。」
「それを言うなら雪でしょうが。」
隣りを歩くアベックの会話が耳に入る。
きっと二人にとっては、この体の芯から冷えるような寒さも、
互いの温もりを確認するための小道具に過ぎないんだろう。

「しょうがねぇなぁ」
僕は声に出して一人呟いて、
マフラーを巻きなおして、また歩き出した。


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