事業を考える際によく使われる言葉が「価値連鎖」。 もともとは英語で"Value Chain"と言ったものを和訳した言葉。
価値のある事業を繋げることで、より価値の大きい事業に育てる。 この繋がりを持たせるためにどんな事業を持つことが有利なのかを 考えるのが本社の戦略企画Gというところ。会社の中枢です。
この価値連鎖という考えは昔からあったものではなくて、ここ数年で 取り上げられるようになった。それは「選択と集中」とともに経営の キーワードとして使われるようになりました。
この価値連鎖が無かった頃、それでも成り立ってきたのは経済成長の 世の中で、成功している事業が失敗した事業をカバーできるだけの 利益を出していたから。総合メーカなんかはその最たるものです。 リスクのある事業を保有するということは、その潜在的な成長性を 発揮させた時のリターンも大きいということ。そのためには失敗しても それで倒産の危機に至るようなことのない体力が必要です。事実、その 体力があったからこそ成長してきた。
それがバブルの崩壊とともにバランスシートの改善が必要になって くると、よりリスクの低い事業にしか投資できなくなって、前述の 成長性を追えなくなってしまう。結果として成長性が止まってしまう。 これが経済全体としての成長の停滞を引き起こしてしまっていると 考えられます。これを「負の連鎖」あるいは「負の循環」といいます。
潜在的な生産性はあるのに需要が落ちたためにそのギャップが生じた からそれを埋め合わせるための需要喚起をするのがケインズ政策。 小渕内閣を始めケインズ政策をしたにもかかわらず短期的な持ち直しに 終わってしまったのはこのギャップが存在していたからではなくて、 生産性が落ちたからだという意見もある。負の連鎖によってね。そう なると需給がバランスするポイントが落ちたという見方が自然です。 元の軌道に修正できない問題をはらんでいるからです。
それを端的に表した言葉が「悪い均衡」。
均衡点があるべきところよりも下方で均衡している状態です。 これが修正であるならばまた均衡ポイントは上昇するはずですが、その 兆候がないということは修正ではなくて固定しているのかもしれません。 これでは政府が規制したりお金をばら撒いてもいずれは元の悪い均衡で 収束してしまうことになり何ら問題の解決になりません。 (「規制」とは「保護」と置き換えても同じことです。)
ここで注目されるのが先に述べた「負の連鎖」を断ち切ること。 これが不良債権の処理です。政府が行っていることは間違っていません。 ただ不良債権処理をすることだけを目標にひたすら突き進むのは必ず 痛みを伴います。しかもこれで景気が回復するとは言い難いものです。
これは景気回復の特効薬ではなくて、長期的に見て悪い均衡を元の均衡 に戻すことが目的であるので、短期的に景気回復を求めるのなら従来の ケインズ政策を大規模に推し進める方が効果があると思いますが、その 代わりに大借金を抱えることになるのでは将来の返済が苦痛になって しまうので良くない。そのための政府通貨発行なんだけどね。
そういう意味で不良債権処理と政府通貨発行はパッケージで行うもので、 どちらかひとつというのでは片手落ちでしょう。どちらもひとつだけ では説明に苦慮するでしょうし、そもそも日銀が協力しないでしょう。
いずれにしても景気が回復するのは長期的に安定した生活が期待できる 環境になることを国民が感じ取れるようにしなければならない。目先の 利権に目がくらんでいる政治家にはできないことなんだろうなぁ。選挙 で自分が当選することが一番の望みだから。そのための小手先政策は 必要無いんだよね。街頭演説している不勉強な地方議員もね。朝早くから お疲れさまと言いたいんだけど、笑ってしまうようなことを人前で発言 していては情けないのひとことです。朝の駅前でいつも思う。
ま、そんなことはどうでもいいとして、信頼関係で繋がっていた取引が いつのまにやら不信感で渦巻いている状況は払拭しなければならない。 この「負の連鎖」を断ち切るための不良債権処理。どうにかしなきゃ。
はい。今日は晴れ。(東京地方)
戦後の映像を見ているといかに現在の生活が豊かになっているかを思わせられ ます。「豊か」という言葉に敏感になる方もいらっしゃるかもしれませんが、 狭義での突っ込みは無しってことで。
昭和20〜30年代は復興から経済成長へと向かう時期。 みなが生活の向上を願って一生懸命に働いた。物資の不足を労働で収入を増や すことで補ってきた。だから物を作れば売れたしそれで収入が増えたから次の 物資を作る原資にできた。そのサイクルがうまく回っていたので経済は成長 (拡大)した。
工業化の余波を受けて農林水産業からの労働移転が急速に進んだのもこの時期。 国の政策が工業化による発展だったから農林水産業より工業の方が優先された ために農林水産業従事者が離職を余儀なくさせられたという面も大きい。
たとえば霞ヶ浦の漁業が衰退したのは30年代後半から。 これは工業化の促進とともに霞ヶ浦周辺の製造業が出す廃液の影響と下流の取水 ダムの影響。海水の逆流阻止として作られたはずのダムが湖水そのものの汚水を 流し出すことを堰止めることになってしまったという皮肉さの象徴。そして何よ りも鹿島臨海工業地域の建設が労働力を吸収してしまったことが大きいと思える。
家の玄関や縁側で足を洗ってから居間に上がっていた時代は知りませんが、小さ い頃、裏のじいさんちが戦後の作りで、五右衛門風呂と井戸水の取水で生活して いた家であったから、ウチの風呂釜が調子悪い時には五右衛門風呂に入りに行っ た記憶がある。これまた入り方にコツの必要な風呂で、釜に背中を付けようもん ならヤケドをするから半立ちで入らなきゃいけない。火はもちろん薪ね。それ から土間というのは本当に地面は土で、ここをちょろちょろネズミが徘徊する からネズミ取りもあった。トムとジェリ−に出てくるあのネズミ取りと同じです。 さすがにチーズではなかったけどね。
そんな生活が当たり前だった時代に比べると、今は生活物資は向上し、より苦労 をせずに生活ができるようになってきた。物量もそうですが、質の向上がより 大きいでしょう。
経済成長の頃は作れば売れる時代でしたが、その後は消費者も賢くなりました からどれだけニーズに合った商品を作れるかが製造業の頭の絞りどころとなった。 それを作れるところが生き残った。戦後のドサクサで生き残った頃を一次とする と、この時は二次淘汰ですね。この二次淘汰で生き残った企業が今の大企業に 発展してきていると思っても大きな間違いではないでしょう。中小企業でもこの 頃にしっかり生き残ってきたところは今でも多くが健在でしょう。個人店、中で も卸小売業は流通の変化により衰退してきましたけどね。ほら、街の文房具屋 さんや雑貨屋さんなんかはなくなってきているでしょう。
こんな戦後の変化を知らない若い世代はこれからどう変えていくんでしょうか。 変えるつもりは無いんでしょうか。周りが変わっていることに一番敏感なのは 若い世代ですから、自分たちが住みやすい社会にするにはどうしたらいいのかを 考えていて欲しいもんです。
なーんていうのはオジサンの人頼みのたわごとです。はい。
今日は曇りのち一時雨。(東京地方)
2003年03月02日(日) |
まだ何とも言えない状況なんで |
ちょっと厄介な問題に関わりそうな雰囲気です
関わるかどうかはこれからの動き方次第なんですが、今の段階では 神経質になるほどのことではないと思っています。自分の中ではね。
聞いているとどうやら時間が解決してくれる問題ではなさそうなので、 何かしらの対策を打たなければ大きな問題になるかもしれないようです。 ケガとか嫌がらせだけでも問題なんですが、さらに大きな問題になる かもしれないような様相です。
面倒なことには蓋をするのが一番楽な方法ですが、聞いた以上は放置 できないところが自分なんですが、それにしてもできることとできない ことがあります。
今回の問題は恐らくできない範疇なんですが、それでもどうにかして あげたいという気持ちはあります。こちらから積極的に関わろうとする ことは相手にとって失礼になるでしょうからしませんが、相手から助け を求められたならばそれなりに対応しなきゃいけないと思っています。
まぁ、相手がどんな人か説明していないので、この問題がどれだけ自分 の関わるべきことかどうかが分からないでしょうが、とりあえず今の 段階では「好意を持った人」という程度でしょうか。
これが身内であれば考えは大きく変わってくるでしょう。 私財や職を放棄してでも守るべき人であるかどうか。今のところはそう いった人は両親しかいません。だからそれ以外の人は深く関わることは まずあり得ないことです。特に家庭内の問題であればなおさらね。
来週の今ごろには少しは状況が変わってくれていればいいんだけど・・・。 いずれにしても今回の件はしばらく様子見です。
はい。今日は晴れ。(東京地方)
2003年03月01日(土) |
バランスが取れていればいいも悪いも無い・・・か? |
今注目している言葉が「悪い均衡」。
これはバブル崩壊以降、いくら財政で下支えしても景気回復しないこと を、需給均衡のポイントが下がったからだとするもの。
通常の均衡ポイントに留まっていて、単に需給ギャップが発生している のなら、需要を押し上げればそのポイントへ戻ることになりますから、 数年の時間はかかるでしょうが、いずれ元のポイントへ戻ることになり ます。しかし現状は10年たっても回復の兆しが見えず、お金をいくら 注ぎ込んでも全て吸いこんでいる状況。
デフレとは需要が落ち込んで、そのパラメータとして物価が下がること を言いますが、悪い均衡というのは現在のデフレ状態で均衡を保っている ことをいいます。そうなると均衡している以上はこれをデフレとは呼ば ず、通常の状態ということになります。
ということは、景気が悪いと叫んでいるわれわれは大きな勘違いをして いるんでしょうか?単に収入が伸びなくて生活の向上が難しくなっている ことを嘆いているだけなんでしょうか?これが本当ならデフレとか景気 低迷ではなくて、これが妥当な状態であることになります。
インフレとともに収入が増えて、それが生活の向上に繋がっていた今まで の経験が、ある時点でその経験が生かされない状態が当たり前のことに 転換したということです。ある意味、長く続いた安定したインフレ経済 の転換期とも言えるんではないでしょうか。
生活は改善していくものであって、改悪はしたくないと思うのが我々国民 の正直な思いならば、良くなりすぎた生活を一時的にでも以前のところ まで修正する(改悪する)状況になっても、そう簡単には受け入れること はできないでしょう。
日本の良き(悪しき?)伝統であった終身雇用制の元、年功序列で過ごせ ば年を取るごとに収入が上がることを期待しますから、そういったことを 前提にすれば計画的な人生設計ができます。実際にはそれでうまくいって いたと思います。
このシステムが一旦崩されると、人生設計も崩されるわけで、バブル期に 人生設計した人にとってはその時の収入計画があったわけで、これを元に 不動産やら住宅を購入した人も多いでしょう。バブルの崩壊はこの前提を 崩してしまったわけで、それと同時に不動産や住宅を購入した人は人生 設計を崩されました。そうなると消費に使おうと思っていた分が当然なが ら少なくなるわけで、あるいは生活資金すら足りなくなって借金のために 不動産や住宅を手放さなくてはならない状況になりました。見栄を張った 人ほどこういう目に会っているように思えます。そういう意味じゃ、こう いう目に会った人は将来の見通しが甘かったということになります。
とはいえ、地価で言うと’87年から’91年にかけて10〜20%もの 上昇をしていたんですから、浮かれたか儲けを企んだかをするかもしれま せんねぇ。
個人レベルではそういうことなんですが、国政としてはバブルのような はじけて当然な状態を放置していたことは、結果論ですが、失策としか いいようがありません。景気の安定をその使命とする日銀は、そんな状態 を放置していました。放置というよりも、その時期には金融緩和をやって いたのですから、やることが逆。引き締めてお祭り騒ぎを落ち着かせなく てはならなかったんです。だから自分はバブルの醸成と崩壊は日銀の意図 が見え隠れすると以前から言っているのです。
公定歩合で言いますと昭和62年から2.5%と戦後最低水準だったの ですが、平成3年には6.0%まで上昇させているので引き締めている じゃないかと思われるでしょうが、急激な地価の上昇には効果がありま せんでした。むしろ公定歩合を急激に上げることで資金の借り手である 企業の金利負担が急激に増えました。個人についても同じことです。
通貨流通高は’90〜’93にかけて多少の落ち込みがありますが、マネー サプライ(M2+CD)は着実に伸びていますから、それだけじゃぶつい ていたことになります。資金需要が落ち込んだのにお金は減らない。 みんながお金を使うことを止めたんですね。その後に来るのは円高。 ’94〜’95にかけて¥100/$を割る水準になった。これで輸出 企業は大幅な採算割れで競争力を無くした。構造的な問題がありました。
恐らくこの時点で「悪い均衡」が作られたんじゃないでしょうか。 為替レートについては「円高」とか「円安」とか言いますが、為替相場は 常にその時の適正レート。適正な均衡の結果がその時のレートを形成する。 だから円高円安は結果論なんですね。ディ−ラーの立場ではね。
でもこの円高ショックで企業の構造が変化したんじゃないでしょうか。 企業だけでなく消費者側の態度にも変化が出た。海外から安くていいもの が入ってきた。だからそれまで国内品で価格構成されていたものに変化を 強いたと思われます。この時点で均衡点が下がったんじゃないかと思う。
その均衡点が長く続くとそれが自然な均衡点に変化して、「悪い」もの とはなくなってしまった。その状態が今も続いているとすれば、今の デフレはデフレでなくて適正水準。それでも不満があるのは収入が減った からに他なりません。収入が減ったとは、文字通りの意味だけでなく、 収入を得る機会も含まれます。つまり就業機会。就業人口が減っている のに失業率が減らないのは、収入が減っていない人がいるから。この 多くは公務員であるというのが自分の見解。だから公務員の給与水準が 高過ぎる、あるいは就業機会の過多、あるいは受け皿の過多に問題がある と思っています。これを正すのが構造改革のひとつだと思っています。
公務員は民間レベルに比較すると離職率は低く、待遇は高いというのは 一般的な常識でしょう。公務員も消費者の一人ですからここにメスを 入れると消費の減退につながりますから切り捨てろというのではありま せん。適正水準に正せというのが自分の意見です。バランスを取れ。
なぜ今はデフレというのでしょうか? 収入の減少が大きいこと以外に理由があれば教えて下さい。 収入の減少に無関係な(あるいは程度が小さい)人には無関係な話なの ですが。
はい。今日は曇りのち雨。(東京地方)
ドタバタ劇のこの時期ですが、ようやく予算書の提出ができました。 とはいえ、担当役員への説明もせずに書類を出しているから説明責任を 問われるかもしれない。
提携先との話し合いに決着を見ていないから基本方針も定まらぬ中の 数値提出なので、ある意味エンピツ舐めたものとなっている。それでも 許されるだろうと思います。だれも数値に対して口を挟めないであろう ことが、事業の不安定さを表しています。事業環境をマジメに理解して いる人がいないってことね。
そういえば、今日どこぞのリサーチ会社から問い合わせの電話がありま して、同僚が電話を取ったのですが、その内容たるや、
「おたくの事業はこの3月で提携解消するんですって?」
というもの。同僚も口がうまくて、
「え?そうなんですか?」
などとトボケた反応をすると、相手さんは困惑した様子だった。 どこで仕入れた話なのかは定かでなかったようですが、競合先なのか、 客先筋なのか、いずれにしても業界筋から仕入れたネタであるようです。 ここでマジメに受け答えをしてしまうと、あることないこと噂されかね ませんし、まだ決定事項ではありませんので、同僚のすっとぼけはこの 時期としては正解問答。決まってもいないのにあたかもそうであるかの ように話をして会社にとって不利益になるようなことになるのが一番 最悪のストーリー。推測が現実のものになってしまうから。
景気において心理的に不安になり倹約行為をしていると、それが全体に 行き渡って本当に不景気になってしまうということと同じかな。提携を 解消するとは決まっていないのに、噂が先行したがためにそうせざるを えなくなるかもしれないからね。
ウチの会社が提携している装置は、シェアとしては競合他社にはそれ程 脅威とはならないかもしれないけど、放っておいても問題にならないかと いえばそうでもないというやっかいな機種。成熟機種と新機種とがあり ますが、成熟機種の方は既存のプロセスを取り扱う装置。長期的には いずれ無くなっていくであろうプロセスを取り扱う装置なので成長性は ないんですが、広く行き渡っているせいもあり、アフターサービスでの 収益はまあまあです。新機種の方のプロセスは、世界では3社ほどしか 取り扱っていない機種。1社は高価で高性能装置。もう1社は安価で 性能が限定的。ウチの提携先は中途半端に高価で幅広い性能を保有して いるというもの。そこが売りでもありネックでもある。つくばのとある R&D会社に採用されたもんだから、日本における影響は大きいと感じ ているんじゃないでしょうか。競合他社は。
ま、細かいことは置いといて、もともと成熟機種は業界筋では認知度が あった。そのネームバリューがどれほどのものかを知らないウチの経営者 は、将来の事業に与える影響がどれほどのものかを知ろうとしない。 成長性が現状では認められないし、短期的な収益の見こめる事業ではない ということで社内のコンセンサスとして否定をされてしまったところが 現場を預かる我々としては不満なところ。ウチの会社が不得意としている 分野の技術習得と客先認知が当初のお題目だったのが、収益を期待される 事業に置き換えられたところからおかしくなったんでしょうかねぇ。
会社の業績が苦しい時にはなりふり構わずシンドイ事業を切り捨てるとい う姿勢が問われているのかもしれません。会社としての戦略を問われて いるのかもしれません。というか、無い。(苦笑)
戦略の無い事業は単にお荷物でしかないですからね。
経営に口出しできる技監の方なんは、技術的には正直言ってついていけない けど、ウチの会社にとっては長期的にはメリットのある新規事業だという 認識を持ってくれておりますから前向きに捉えてくれています。役員連中 (社長や副社長含む)は頭であれこれ考えるだけのいわゆるエリート集団 ですから現場の声(当然ながら客先も含まれます)を軽く見ています。 こういう人たちをうまく説得できなかったわれわれの責任なんでしょう けどね。結局のところ。
こんな時期なんで、軽々しく決まっていないことを口にすることだけは 謹んで対処しなければ。対外的にも社内的にも。(敵は社内にもゴロゴロ おりますから、足元をすくわれないようにしないとね。)
はい。今日は晴れときどき曇り。(東京地方)
2003年02月27日(木) |
ハウステンボスも先送りのいい例かも |
長崎県佐世保市にあるハウステンボスが企業再生法を申請しました。 これは事実上の経営破綻、つまり倒産です。倒産との違いは、この再生法が 適用され、スポンサーが見つかると、文字通り再生の道が開かれることに なります。以前とは経営や事業スタイルに変化が出てくるものの、ハウス テンボスという名前や形は残ることになります。
このハウステンボスへは2回ほど行ったことがありますが、1回はヨソの 職場の旅行にくっついて行った時。もう一度は実家の母親を連れて行った時。 実家は久留米ですから高速を使っていけば2時間もかけずに到着しますので、 首都圏でのディズニ−ランドに行くのと時間感覚としては同じです。でも、 このハウステンボスが破綻した理由は、リピーターの確保ができなかった こと。地方のテーマパークの宿命ともいえます。
近隣の地方だけでは量的に少なすぎる。だから遠距離からの集客をしてきたの でしょうが、「また行きたい」気持ちにさせてくれなかったようです。事実、 自分もまた行きたいと思ったかというと、そうではない。高いお金を払って 行くからにはそれなりに楽しみたいのですが、ここは遊園地と言うより観光地。 観光地には高いお金を払わなくても他にもいっぱい観光地はある。地形や建物 でヨーロッパの雰囲気を味わうところにすぎないと思えます。要するにバブル の発想なんです。お金がかかり過ぎているんです。
歴史もないので新しさが妙に目に付いてしまって、逆に違和感すら感じるほど。 こうなると観光地というスポットではなくなるんですね。
ネガティブなことばかり書きましたが、地元にとってはテーマパークという のは波及効果として観光収入が生じます(ついでに買い物をしたり寄り道を したりしますよね)から、集客力が大きいほど期待をします。そのあたりは 大型店舗のスーパーとは見方が違うところ。地元に訪れるのは閑古鳥だけだし。
そういう意味では地元と利益を共有する立場にあるテーマパークですから、 独自採算というよりも地元と分かち合うことも必要ではないのでしょうか。 地元は地元で利益の一部を投資という形で態度を表明してもいいのではないで しょうか。それなしに利益だけを受け取ろうなんてムシのいいことを言っても 結果が悪ければ残るのは廃墟だけなわけだし、いいことありません。
このことは公共工事にも言える話で、地元のメリットだけを主張して政治家を 利用するのは地元の身勝手としか言いようがない。そこで使われるコストは ヨソの税金や財投からの支援なんだから。そもそも採算計画を立案する時点で マトモな案を作ってさえいれば悪者扱いもされないで済むことなんだけど。
そのあたりの失敗コストのことを社会コストと言いますが、みずほ銀行の 債権放棄もこれに相当します。必要コストです。これをしなければ破綻をして しまいますので、残りの債権すらも無くしてしまうことが考えられます。 しかも他の金融機関や投資家からの債権もあるわけですから、それらの代表 として最低限のコスト捻出で済ませているわけだから、社会的には批判される 債権放棄も、他の債権者や当事者であるみずほ銀行にしても、債権のゼロ化を 防ぐという意味では体力の許す限りやるべき行動といわざるを得ません。
でもリスクのミニマム化という観点では結果管理でなく、最初の時点、つまり 投資とか貸出をする段階での借り手の評価をきちんとすることでしょう。 人もモノもカネもきちんと評価することが基本でしょうね。間違っていたら 正す。これをきちんとすること。これを先送りにしてきたのがバブル後の 日本経済。無くした10年というのはこういうことです。
バランシートの健全化は急にやると血を見る。だから常に正しい評価をして 悪いところはその都度正す。これをガラス張りにすることが小泉内閣の構造 改革だと思っています。そういう意味でも先送り体質が日本経済の低迷を引き 起こしている要因のひとつだと言ってもいいでしょうね。仕組みの改革です。
ハウステンボスもそれをやっていれば・・・。(他人事じゃないが。)
はい。今日は晴れ。(東京地方)
2003年02月26日(水) |
書物は読めば読むほど知識(財産)になる |
目からウロコというか、納得させられたというか。 というのも、景気回復のためには財政政策(国が借金してお金を投じること) も構造改革(悪い仕組みやそのものを切り捨てたり改善したりすること)も いわゆる需給バランスを改善するための処方箋ではないという意見を理論を 伴った形で理路整然と記述された著書を見ているから。
内容の詳細は後日に譲るとして、例えば財政で言えば、これは需給ギャップ (潜在需要と実需の差)を埋めるだけで実需を持ち上げることではないし、 構造改革は長期的なマクロ政策であって、短期的には合成の誤謬(例えば コストダウン、投資控えをおこなって企業努力(いいこと)をしても全体と して収入を落とすことになり経済は収縮する(悪いこと))を引き起こすこと になり、それが経済破綻を引き起こすことも考えられるというもの。
財政はやれば上がるが止めれば下がる、そして残るものは借金だけ。 構造改革は長期的にはやるべきだけれどもやれば死人が出るというもの。
まぁ、財政に関しては政府通貨発行という手段もあるので借金だけが残ると いうことは一概には言えないんだけど、それでも需給ギャップのことを言われ るとこれは否定できない。景気回復のきっかけと思いお金をいやというほど ばら撒いても、それは根本的なところでの解決にはならない。
じゃあ、どうすればいいのかというのはこれから読むところです。 バランスシートの左側を正しく評価しろと言うのがひとつの結論だけどね。 保有株式にしても設備にしても不動産にしても在庫にしても。不良債権処理 というのはそういうことです。金融機関の不良債権処理とは結局のところ 貸出企業のバランスシートを正すということに他なりません。単に業績の 良くない企業を切り捨てるということだけではありません。このあたりの 認識の仕方なんだろうけどね。貸し手も借り手もね。
他にも色々とありますが、また今度ということで。
はい。今日は曇りときどき晴れ。(東京地方)
2003年02月25日(火) |
真面目な人ほど陥りやすい罠(原口大使のスピーチ仮訳に対する批判に対して) |
今日は小千谷の客先へ打ち合わせのために向かいました。 上越・中越地方は雪が積もってはいるものの、気温としてはそれほど寒く なく、濡れかかった雪がどこかしら寂しそうにも見えました。降って溶け ての繰り返しで何層にも積もった雪が重たそうにも見えました。 そろそろ春ですかね。
さて先日の国連安保理で原口大使が行ったイラク問題に対する演説の外務省 和訳にマスコミや国会議員が批判の矢を投じました。
民主党の原口一博議員は、「わざと和訳の表現を弱めたのではないか。」
指摘している部分は次の2箇所。 1."We are aware that in countries around the world, there is ...... There is serious doubt as to the effectiveness of continued inspections."
"serious doubt"の和訳に「重大な」という訳が省かれており、 「疑問が生じていることは否めない」となっている。
2."The Council should strive to adopt such a resolution." 「安保理は決議の採択に努力すべきだ」→「すべきだと考える」
毎日新聞はもう1点。
3."Iraq now has very limited time." 「イラクに残された時間は非常に限られている」→「限られている」
おいおい、ちょっと待てよ。例え公式HPで掲載されているとはいえ、この 訳文は「仮訳」となっているではないか。正式翻訳とは違うよ。参考までに 載せているだけだよ。こまかいところを突いて自分はキチンと英文が読めると 主張するのもたいがいにしろよって感じです。
1および3については、形容詞・副詞の捉え方なんですが、形容詞や副詞で 強調しているとしても、それは絶対的なものに比べるとかえって弱い表現に なります。主観が入りますからね。物差しは人によって違ってきます。 形容詞や副詞は物差しの考え方で程度に違いが出てきますから、必ずしも弱めて いるとは言えない。無くしたほうが逆に強い表現にもなります。批判は批判で いいのですが、そのあたりを承知した上でないと恥をかくことになります。
2については、その文章だけでは確かに断定していますが、文脈から言うと 前文である、".....we consider it desirable that the Security Council adopt a new resolution that clearly demonstrates the determined attitude of the international community."の頭の"consider"を受けていると捉える方 が自然でしょう。ま、これを弱めていると捉えるのも勝手ですけどね。
要するに文字で見るのと発言を聞いているのとでは受け取る印象から理解が 変わるんだなといういい例です。文字を見ると単語を一生懸命見ますから、 発言での雰囲気とは違った捉え方をしますからね。文字通りのね。
外務省は仮訳とはいえ、さすがに掲載和訳には神経を遣ったと推察します。 直訳してしまうと文意を正しく伝えられるかどうかという点でね。大事なのは 直訳でなく日本語訳です。この違いが分からない方には自分が伝えたいことは 一生かかっても分かりません。英語と日本語の大半は1対1対応をしている わけではないので、単語を直訳すれば日本語が成立すると思うのは間違いです。 これは真面目に学校英語を勉強した人に陥りやすい現象です。
こんなところで「今回の訳文問題も政府の二枚舌の表われで、こそくなやり方 だ」という批判をするぐらいなら、もっと別の所でエネルギーを使って欲しい ところです。ね?野党さん。北朝鮮はミサイル実験をやっているんですよ。
はい。今日は曇りときどき雪。(中越地方)
2003年02月24日(月) |
日銀の野望、第二幕か |
日銀総裁の内定が出ました。 元日銀副総裁で、富士通総研理事長の福井俊彦氏です。 大方の予想通りです。
福井 俊彦氏(ふくい・としひこ) 58年東大法卒、日本銀行入行。 94年副総裁。98年3月辞任し、同年11月から富士通総研理事長。 2001年4月から経済同友会副代表幹事。大阪府出身。67歳。
日銀と旧大蔵省OBの交替が慣例となっていたところが今回も日銀出身者。 他に適任者がいなかったんでしょうね。
副総裁にはインフレターゲット論者で経済企画庁出身の岩田一政氏。 それから財務省事務次官経験者の武藤敏郎氏。より財務省の意向が採り入れ られると思われます。
この先どうなるかが見物です。着任後の動向が注目されます。 政府の経済政策に対する無責任を押し付けられないようにがんばって欲しい。
国民としては政府がこのまま覇権を握っていようが日銀が巻き返そうが、 経済情勢が上向いてくれればどちらでも構わない。というのが正直なところ。
さて、日銀の野望は達成されるだろうか。
はい。今日は雨ときどき曇り。(東京地方)
2003年02月23日(日) |
ずーっと玉虫色でいい |
ここ数日はイラク問題でいろいろと動きが出ており、マスコミもこの問題を取り 上げているところが多いですね。
2月18日に行ったイラク情勢に関する安保理公開会合における原口国連代表部 大使演説の一部を外務省のHPから引用してみます。
"In our view, it is crucial now that the international community remain united and continue to put strong pressure on Iraq. If the Security Council fails to act in unity, it will not only damage the credibility of the United Nations but also send the wrong message to Iraq. It would also lead to an ongoing threat throughout the world of terror by weapons of mass destruction.!"
「今、最も重要なことは、国際社会が今後も一致団結した行動をとり、イラクに 対し圧力をかけることであります。仮に安保理が結束して行動できなければ、 国連の信頼性を傷つけるのみならず、イラクに対し間違ったメッセージを送る こととなります。また、このままでは、大量破壊兵器による恐怖が世界を脅かす という状況が続くことになりかねません。」(外務省仮訳)
結語に至ってはさらに、
"Japan sincerely hopes that the Security Council will be united and take effective action to fulfill its responsibilities for international peace and security."
「日本政府は、安保理が、このような現実を踏まえ、一致団結して効果的な行動 をとり、国際の平和と安全に対する責任を全うすることを期待します。」(同仮訳)
こう何度も「一致団結」を呼びかけるのも、みなさんアメリカの意見を聞いて下 さい、とでも言いたげです。言葉だけを見てみると、いかにも大胆にアメリカを 支持しているんですよと言っているように見えますが、冷泉彰彦のレポートを 見てみますとそうでもないようです。というのも、
”原口大使は「目線」や身ぶり、表情などは一切使わず、座って原稿に目を落とし ながらの棒読みでした。その英語も、わざわざ子音と子音の間に母音を、つまり 's' を 'su' に変えると言ういわゆる純粋カタカナ発音で、しかも強勢アクセント を外した平板な早口でしたから、誰にも意味の分からない不思議な演説でした。
私は、今度の国連大使は英語とは縁の薄い方なのか、と思いましたが、そんなバカ なことがあるわけがありません。これは、完全に儀式であって、会議の席上で外交 力を発揮するつもりは更々ない、そんな意図の演説だったようです。小泉内閣とし ては共和党政権の戦略に乗っかるのは、既定路線であって、今回の国連演説は国内 向け、つまり政界メンバーの反応をうかがい、世論の反応を探るためのアドバルーン だったのでしょう。”
サンデープロジェクトでもやっていましたが、アメリカのイラク処理は新保守派と 言われるいわゆるタカ派の議員たちが影響力を持っていて、彼らの力をブッシュが 無視できない状況であることが問題です。国民の6割以上がイラク攻撃を支持して いるという世論調査もあるとおり、国民もイラク攻撃を支持しているようですが、 一方ではパウエル国務長官のように穏健派もいるわけで、そういう意味では一昨年 の9.11事件はタカ派を後押しした形になっています。こういうきっかけを待って いたかもしれません。
もし日本政府がホワイトハウスの本音はイラクを攻撃することだと大真面目に考えて それに同調するならば、手痛いしっぺ返しをアメリカ国民や世界から受けるかもしれ ません。詳しい考察はこの場では避けますが、軍事面での積極的な姿勢は、決して 日本にとってはいい結果にならないと思っています。ずっと玉虫色か反戦を指示して いる姿勢を保って欲しいものです。
いずれにしても状況はやさしいものではなく、どちらに転んでも少なからずの影響が 出てくるのは間違いありません。その影響が国益として長期に考えた場合、どちらが より国益を損ねないか、その判断をきちんとして欲しい。判断できないならば、いつ までも玉虫色の発言を続けるべきで、態度を表明しないぞという態度を表明する。 このあたりは小泉首相がお得意のところではないだろうか。
アピール度のなかった原口大使のスピーチは、あれはあれで良かった。 言葉としてはアメリカを立てながらも、姿勢としては強行でないことを態度で示した いわゆる玉虫色。叩けと言えない日本の立場を貫けばいい。軍事面で主体性を出せ ない日本の姿勢を貫けばいい。日本は所詮、敗戦国なんだから。歴史を背負ってます。
はい。今日は曇り。(東京地方)
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