白月亭通信別記
老い先短い残照の日々、
おりふしの所懐を、
とりとめもなく書き留めて…

2005年11月30日(水) 大選手

 野村(克也。楽天監督)が敵わないと思った三人というのが張本、長嶋、王なんだそうだ。あの頃の選手たちは、銀座でよく飲んでいただろう。野村はそういう夜の情報を仕入れるのが得意で「お前、あそこの女と付き合っているんだな」なんて囁いていた。選手はそういう秘密をばらされることを最も嫌がるから結構、効果があったらしい。でも、張本に「おい、ハリさん。昨日、銀座の女が泣いていたぜ」なんて言っても、「うるさいぞ、野村。いい加減にしないとぶっ飛ばすぞ」と怒鳴り返されて、その後しっかりとヒットを打たれてしまうんだそうだ。王の場合は、同じことを言っても一言も答えず、ニコリともせずひたすらボールに集中してホームランを打つ。そして長嶋さんは更にすごくて「チョーさん、ギンザの女がな」と言ったら、バッターボックスを外して「そうなんだよ」と話に乗ってきた。「あの女には参ったよ。だからノムよ。女って言うのは」なんていう話になってしまった。こりゃダメだと思って「いいから打ってくれ」と言ったら、さっさと打席に戻ってやはりカーンと打つ。(ビートたけし「草野球の神様」から)


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