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「タイムトラベル・ロマンス」と梶尾真治のススメ 2003年11月10日(月) 「タイムトラベル・ロマンス 時空をかける恋-物語への招待」という副題がついてます。著者の好きな、古めのSF作品(タイムトラベルものが多い)を紹介した本です。 簡単なあらすじを載せてくれてあるので、それだけでも楽しめます。実際、そのものを読むよりもあらすじだけの方が想像できて楽しめる部分もあったりして。私は「ジェニィの肖像」を読んでみましたけど、あらすじの方がロマンティックな感じがしました(笑) ★★★☆☆ さて、梶尾真治と言えば、最近「黄泉がえり」の映画化で注目されてますね。これを機に、原作以外の他の作品にもふれてくれる人がいるといいなあということで、ちょっと他の作品も紹介してみようと思います。 「おもいで」をテーマにした、リリカルでロマンティックなSFを書かれる方です。 私が初めて読んだのは、「時尼(じにい)に関する覚え書き」という短編でした。主人公が少年だった頃、一人の上品な老婆が現われて、「今が渡す時」と、指輪を彼に渡していくのです。そして、主人公が成長するに連れて、時々現われるその女性は会うたびにどんどん若返っていきます。彼女は、「遡時人」という、時を反対に生きる種族だったのです。やがて二人の歳は逆転し、彼女はどんどん若返っていきます。そして…。 不思議で、せつなく綺麗なお話しです。これで私ははまりました。 「クロノス・ジョウンターの伝説」は、好きになった女性を事故から救うために、何度も過去へと戻る青年の話。自分は、過去へ行った反動で未来へ飛ばされます。繰り返すほどに、さらに遠い未来へ飛ばされるのです。 こういう、「時を越えたロマンス」の短編が多い作家さんです。 せつなくて、それでも救いがあって心が暖かくなるお話ばかりです。(それだけじゃなくてドタバタのコメディなんかもありますが) 恩田陸の「ライオンハート」のメロドラマ具合が好きな方なら、きっと楽しめると思います。 でも、すごいのは短編だけじゃない。長編も読み応えがあります。 私がいちばん好きなのは「サラマンダー殲滅」です。日本SF大賞を受賞してます。 無差別テロにより、夫と子供を一瞬にして目の前で奪われた女性が主人公。平凡な主婦だった彼女は、その事件で廃人のようになるがテロ組織への憎悪を人工的に植え付けられ回復、そして復讐のために戦士として成長するのが前半。後半では、彼女の記憶が失われるのと同じくして起こる、現実世界の溶解現象がからんでいきます。 これもラストでぼろぼろ泣きました。今思うとなんであんなに泣けたのか不思議ですが…多感な高校生だったからでしょうか(笑) これは、旅行(修学旅行)の前日に借りて、ちょっとだけと思ったらあまりのおもしろさに止まらなくなり、でも朝早いから寝なくちゃ…ってことで旅行に持っていった記憶があります。厚いハードカバーを(笑) けっこう本格的にSFしてる話(舞台が宇宙)なので、SFが苦手な人は読みづらいかもしれませんが、苦手じゃない人ならオススメです。ほんとに怒濤のように物語に巻き込まれていきます。 今まで私が読んだ本の中で「おもしろかった本を5冊」選べと言われたら、きっと選びますね。 他に代表作としては「エマノン」シリーズがあげられます。 地球に生物が誕生してからのすべての記憶を持っている少女が登場するシリーズです。 初期は短編集だったんですが、だんだん中編・長編になってきてます。私は短編の方が好きです。星新一のショート・ショートのように、小粒だけどどれもトリッキーで噛み応えがあるという感じで。特に私は「さすらいエマノン」が好き。 最近、鶴田謙二氏のイラストで徳間デュアル文庫から再販(?)されたので、お求めやすいと思います。内容的にもとっつきやすいと思うし。 映画化で有名になった「黄泉がえり」は、とある地域限定でのよみがえり現象の話。死んだ人が、その人を強く思っている人の所に生き返り始めるという話ですね。 そこには人それぞれいろんなドラマがあるわけですが…私はいじめられて自殺した子の話で泣いちゃいました。いじめだとか書くと暗く重い話だと思われそうですが、「悪人の出てこない話にしようと思った」と作者が言っているとおり、優しく暖かい話だと思います。この人の書く話はどれもそうですが。 恩田陸の「月の裏側」とちょっと似てるなと思うんですが、私は「月の裏側」はいまいち納得できなかったんですよね。(「月の裏側」というよりは「盗まれた街」なのかもしれませんが、それは私は読んだことないので…) 私と同じように、「恩田陸は好きだけど、終わり方がいつもすっきりしない」と思われてる方は、一度梶尾真治を読んでみてはいかがでしょうか。 あ、「梶尾真治」はロマンチックすぎるのは苦手という方には薦めません(笑) |