金曜日はちょっとした研修があって 同期の一部である数十名が 半年振りに揃ったわけであるが もちろん研修などとは名ばかりで 適当に聞き流し 東北出向を皆から同情されながら(半笑いだったけど) メインである定時後の飲み会に望んだわけだ。
半年も経つと やはり皆成長するのだな。 アホな会話に紛れて 時折仕事の話や 専門的な知識の情報交換が 聞こえてくる。
入社したての あの学生となんら変わらない 頭の悪そうな顔と違い いっぱしの社会人として まぁわずかながらも 1年という時間を過ごしてきた人間の 自信と意思が その顔からは感じられた。
僕も 自分では分からないけど 少しは成長したのかな。
同期K>「うぅーし。一次会終了。次行こう!」
俺>「いいね。どこいく?」
同期K>「温泉いきたくね?」
俺>「この時間から温泉?(時刻23:00) オマエ・・・・・・なんていいこと思いつくんだ。」
同期K>「決まりだ!温泉だ!温泉といえば草津だ!」
俺>「草津て!いくらなんでもオマエ・・・冴え過ぎ。よし行こう!」
全然成長してないことが判明。
俺>「NとAも誘おうか。」
K>「しかしヤツラは冷静だからな。付いてくるかな?」
俺>「大丈夫だ。俺が説得する。」
K>「おお。頼もしいな。まかせたぞ」
俺>「よう!二人とも。明日は予定ないんだろ?温泉行こうぜ!」
A>「これから?この時間で温泉開いてるのか?」
俺>「平気。ここは東京だぞ。眠らない街だ。」
N>「近場?」
俺>「ああ。・・・うん。まぁ近いといえば近い。」
N>「え?どこ?」
俺>「まぁ、いいじゃないか!久しぶりに会ったんだから!付き合うだろ?な?」
A>「まぁいいけどよー。」
俺>「ようし!そいじゃ行くぞー!」
K>「説得できたのか?」
俺>「バッチリだ。」
という具合でもって寮を出発。 NとAの二人を適当に誤魔化し まずはカーナビの行き先を草津に設定する。
ピッ。 ピッ。
カーナビ>-到着予定時刻は5時15分です-
N>「ちょっとまて。今、そのカーナビなんて言った?」
K>「は?なんのことだ?恥ずかしいからあんまりカーナビ見ないで。」
A>「恥ずかしいってなんだよ!見せろ!見せろって!」
K>「わわ。見たってなにも面白くないって!山ばっかりだから!」
N>「山?今、山って言った?」
A>「コイツらなにか企んでるぞN!」
俺>「まぁ落ち着きたまえ。確かAは長野出身だったな?」
A>「ん?ああ、そうだけど?」
K>「だったら関東あたりは俺らより詳しいだろ?」
A>「まぁ、キミらよりは・・・。」
俺>「じゃぁこの辺りで箱根、伊豆に次ぐ有名な温泉と言えば?」
A>「くさt・・・・・・降りる!帰る!」
俺>「K!逃がすな!ロックしろ!車出せ!」
N>「え?なに?くさってなに?どこ行くの?」
K>「出発ー。」
という具合でもって 可哀想なNとAは見事拉致された。 諦めたのか日ごろの疲れか あっという間に後部座席で眠りにつくNとAの寝顔を ニヤァと思い切り悪い顔で見ながら 到着したのは4時間後。 早朝の5時前。 群馬県六合村入山。焼尻温泉。
K>「よーし。到着だ。」
俺>「二人を起こすか。ってあれ?N起きてたの?」
N>「・・・・・ちょっと前からな。」
俺>「起きてたのになんで黙ってたの?」
N>「目が覚めたら一面雪景色なんだぞ。言葉が出ねぇよ!」
K>「わははは!まぁまぁ。温泉着いたから!な?」
N>「まさかマジで草津来るとは。甘かった。」
A>「え?なにー?着いたのー?(目を擦りながら)」
A>「ゆ、雪っ!Σ( ̄◇ ̄||)」
あの顔。 ちょっとオモシロかった。
焼尻温泉というのは コンビニの温泉雑誌で見つけた 唯一、24時間入れる温泉で しかも無料ときた。 川底から温泉が沸々と湧き出るところらしく 川の中にザブンと入る粋な温泉。 Kと俺は実に楽しみにしていたのだが 着いて驚いたのは なにもAとNだけではなく 明かり一つない山奥に あれ?温泉って一体どこ? 状態でかなりビビった。 なんせ懐中電灯も持ってなかったので 俺の持つ携帯のスポットライトが大活躍。 そんな状況で 川の方へと雪をザクザク踏みしめながら 歩いてゆく。気温マイナス5度。
K>「あ、足跡あるからこっちじゃねぇ?」
俺>「そうか?よし分かった。道産子の俺にまかせろ。」
K「おお。頼もしいな!」
数分後。
俺>「オーイ!K!足跡がー!」
K>「どうした?」
俺>「途切れてる。」
K>「まじで!川はあるのか?」
俺>「川はあるが・・・温泉が湧き出ているかどうかは分からん・・」
K>「・・・・入ってみる?」
俺>「アホか!もし普通の川だったら死ぬて!」
K>「うそーん!ここじゃねーのかよー!」
A>「長野に帰りたいなぁ・・・(逃避)」
K>「さ、寒い。死ぬ(大阪人)」
そんなことを繰り返しながら ようやく看板を発見。 駐車場から数百メートルも離れたところに 川へと降りる階段を見つけた。
俺>「小屋がある!脱衣場じゃない?」
K>「おお!そうだ!やった!入れる!」
A>「ははは早く!入ろう!」
N>「そろそろ死ぬかもしれん(大阪人)」
気温マイナス5度。 明かりは携帯のみ。 外は雪。 足元も雪。
温泉が湧き出ているらしき川まで数十メートル。
全裸で走る男4人。
明るい昼間じゃなくてよかった。
俺>「おお!ほんとに川が温かい!」
K>「温泉?まじで?」
A>「うひー!あったけー!」
N>「ほんとに川だこれ!コケでぬるぬるする!」
俺>「あー。さいこーだー。」
K>「まったくだー。」
N>「きもちーなー。」
A>「極楽だねぇー」
もう。ほんと最高だった。 僅かな街頭の明かりの中 それでも透明と分かる川の中 温泉に浸かれるんだからもう。 気分は最高。 ところどころで川底から温泉が噴出してるから ちょっと油断すると火傷するのが たまにキズだ。 焼尻温泉って変わった名前だと思っていたが おそらくこういう由来なのだろうな。
さんざん嫌がっていたNとAも かなりいい気分になっていたので この拉致温泉旅行は成功だったといえる 次回はぜひ昼間の天気の良い日に来よう。 という話をしながら4人で仲良く家路についた。
真冬の早朝5時とかではなく。 (俺もほんと寒かった。)
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