エアーポケット
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2005年09月11日(日) |
コーヒーショップの男性とコーヒー |
今日コーヒーショップで目にした人は少し異様だった。田村正和もとぎの襟足を自慢げに揺らしているその男性は黒ずくめのスーツに身を包みアイスコーヒーをトレーに乗せて僕の横の席に近づいた。テーブルにトレーを置いて、少し周りを気にしながら、ポケットから煙草と黒い数珠をテーブルに置いた。スーツではなく喪服だということに気付いて「あぁ葬式だったんだな。」と僕は思った。それにしてもなぜ数珠をわざわざテーブルに置いたのか。真意は解からぬまま、僕はチラリとまた男性を観察した。日曜日のコーヒーショップ、混雑した店内にその人は明らかに目立っていた。その男性のそのまた隣の女性も気になったらしく男性をチラリと見つめていた。観察者同士の目が一瞬重なった。少し気まずかったが僕もその女性も観察をやめられなかった。 男性は神妙に席に着き、テーブルに置いた数珠を左手の人差し指と親指の間に数珠を挟み、口元を少し動かしながらコーヒーにミルクを落とした。その後ミルクをかき混ぜることなく男性は席を立った。ミルクはかき混ぜられることなくコーヒーの中で混沌としている。 男性が灰皿を持って戻ってきた。口元を動かしながらコーヒーを見つめている。そしてほぼスローモーションに近い動作でストローでグラスをかき混ぜる。混沌が終わり、コーヒーとミルクが同化した。そして口元の動きをやめ数珠を握り締めたまま男性はコーヒーを飲んだ。 「お経だ!!」僕が気付いたのが遅かったのか、同じ観察者だったはずのその女性はすでにすべてを察し観察をやめ自分の雑誌に目を落としている。
何か思い出があっただろう。その男性に潜む物語を知る術はないけれど、おそらくコーヒーに縁があったのか、この場所に縁があったのか、男性はコーヒーを深く味わうように飲んでいた。
そして僕は逆隣の男性がこの混雑の中、4人分のテーブルを一人で占拠しているのに気付いて、少し腹立たしくなった。ケイタイをこぞこぞといじってみたけど別にメールも無く、意味の無い行為に少し寂しくなった。 昼下がり気ままな午後に、僕は男性とその相手のエピソードを浮かべてみた。
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