Mother (介護日記)
Index|Yesterday|Tomorrow
2003年04月09日(水) |
入院17日目 ( 散歩 ) |
私が病室に着くと同時に、リハビリのI先生がやって来た。
母はやはり起き上がるだけで息が苦しい・胸が切ないと言って、 ベッドにもたれかかり横になろうとしてしまう。
靴を履かせたら、 「もう帰っても(退院しても)いいって?」 と聞いてきた(-_-;)
廊下に広げた車椅子までの3mを、先生と私に手を引かれてヨタヨタと歩いた。 母はそれだけで、フルマラソンを走りぬいた選手のように息も絶え絶えとしていた。
I先生が、持って来たパルスオキシメータで計ってみると、 酸素濃度は78%、5分ぐらいでなんとか85%まで上がった。
I先生の話では、 看護婦から『リハビリはここ(病棟)でやって欲しい』と言われたので、 機能訓練室には行っていないらしい。
「(このような状況にあって) N先生が酸素吸入を辞めたという意図がわからない」と言っていた。
昨日、レフティーともその話しをした。
治るものなら多少無理をしても構わないが、 治らないとわかっているのなら、できるだけ苦痛のないようにしてあげたい。
楽になるなら酸素を吸入すれば良いし、 酸素を吸っていれば、今まで通りに車椅子でお散歩ができるかも知れない。 寂しいなら自宅に戻れば良いし、 食欲がないなら、食べたいものをあげれば良い、と素人は思う。
リハビリの後 「うんちが出る」 と言うので、 立ち上げるついでに車椅子に乗せてトイレまで連れて行った。 ポータブルよりウォシュレット。
そして、そのままゼイゼイしている母を連れ回した。 娘だからできることだろうな(^_^;)
公衆電話に、すぐ近所のご主人Sさん(60代)がいた。
「私は昨日、低血糖のため救急車で運ばれてきたんです」
「それでは、おうちに奥さんがお1人では大変ですね」
私はSさんが引っ越してきて以来、 大声で奥さんを怒鳴っているのをたびたび聞いていたので、 長いこと“怖いご主人”だと思っていたが、 以前、奥さんが痴呆だと言う話しを聞いて謎が解けた。 “あぁそうか、うちも傍から見たら、あんな感じに見えるんだ”と思った。
「うちも家内があんなですからね・・・でも家内がいたから助かったんです」
夫婦愛の再確認ができたことだろう。
「お母さん、ずいぶん痩せましたね。どうしたんですか?」
「うちは肺炎なんですけどね」 と話し始めた。
「それは、どうすれば治るんですか?」
「いえ、もう治らないんです・・・」
そうだ、治らないんだ・・・ 今の治療も、病気の進行を少しだけ遅らせることができる“かも知れない” というようなものである。
Sさんと別れてエレベータに乗り、 5時を過ぎて誰もいなくなった外来を宛てもなく散歩。
処方箋のFAXを送る係りのお姉さんと少し話した。 FAXの隣には身障者用の広いトイレがあり、 私たち親子は、ここの担当の女性3人とは話す機会が多い。
窓から外の景色を見ていたら、車椅子の患者を整形に移動中の看護婦に 「あら、入院していたの?」 と声を掛けてもらった。 日本的な涼しげな目をしたおとなしそうな看護婦で、 積極的な話し掛けをするようなタイプには見えなかったので、うれしかった。
次に内科の看護婦を見かけたので 「こんにちは〜 ただ今お散歩中〜」 と言うと、
「調子はどう? ・・・あら? 酸素は?」 と、やはり疑問のようであった。
「でも頑張ってるわね〜 外来に来てもいつも笑ってるでしょう? 自宅で看るのは毎日大変だと思うのに、全然そんな感じがしなくて。 普通、みんな途中で投げ出して施設に入れちゃうのに・・・」
「うち、お金がないんです(^^ゞ 母を施設に入れたら私たちはテント生活ですよ(笑)」
「うん、確かにそれもあるけど・・・ あなたも無理しないで」
「私でなきゃダメなことだけ私がやって、あとはテキトーに家族に回してますので(^^ゞ」
「ずっと付いてるの?」
「夕方の2,3時間だけです」
「でもどう? 少しは眠れるようになった?」
「はい、おかげさまで寝ています」
この看護婦さんと、こんなに話したのは初めてだった。 診察時の様子や「セキがうるさくて眠れない」発言を覚えていてくれたなんて。
普段の外来での看護婦はみんな多忙だし、どの人も事務的に見える。 ただ医師の指示に従って、医療用具を運んだり注射をしたりするだけだと思っていた。 医師と患者のやり取りなど、関心を持って聞いているなんて思っていなかった。
そんなワケで、今日はちょっとうれしかった。
K先生に毎回愛を告白する患者と歳の離れた娘。 まぁそれだけで私たちは強烈な印象なのかも知れないが・・・(^_^;)
* * * * *
今日も夕飯がちっとも進まない。 丼に入ったおかゆを見るだけで 「こんなに食べられない」 と言う。
今夜は、なすのあんかけとゆでキャベツ、焼いたサバのおろし添えと缶詰の白桃。
サバが出たのはこれが2回目。 たまにアレルギーが出ると書いたんだけどな(-_-;)
母は、キョロキョロとおかずを見回すばかり。 もう仕方なく、強制的に私が口に運んで、やっと8割だった。 回って来た看護婦の話しでは、お昼も食べなかったらしい。
|