「何故?」
ひどく難しい事を聞かれたような気がして黙り込む。
何故?そう何故なんだろう。 あなたの言葉を認めたくなく、 あなたの主張を否定したく、 あなたの優しさに吐きげがし、
時々、 あなたのそのすました顔が 崩れてしまえばいいと思うのは。
「多分」
そう、多分だ。自分の気持ちは何より分からないから。
「あなたが嫌いなんだと思います」
そう、とあなたは言った。
「でもそれは理論的ではないね」
自分の中をまた時々過ぎる感情で支配される。 それを理論的に話すには、私は無学だ。
「すべての理論は感情で駆逐できます」 「情熱的な事だけど、その感情につける名前位は理解しておきたいね」
私はこの人を『嫌い』と言った。 私はその気持ちととても似た感情がもう1つある事を知っている。 知っていると、認めて言っているんだから赦されると思う。
あぁ、 こんな風に感情が理論を追いやって行く。
「私はあなたが嫌いですよ」
言葉は口に出した瞬間に、私の所有権から離れる。 どこか遠くで同じ言葉が返されるのを、 私は待って、 泣くのだろう。
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