彼女
白樺の道を抜け空に浮かぶ月を見下ろそう 満月の夜には崖の上から百合の花を投げ 彼女を永遠の眠りに落ち着かせようとする 彼女は僕の記憶から抜け出さないことによって 僕を苦しめ続ける 真夜中の冷気が彼女を呼び覚まし 湖の底から伸びる手が月を掴む 彼女は僕を得ようと欲している 僕は彼女から逃れれることは出来ない 満月の夜毎に誘う鳥の囀りは 徐々に僕と彼女の距離を縮めてゆく 僕はきっともう幾らほども満月をみることは出来ないのだ 軈て僕は彼女の世界へと引き込まれる 僕はもう今の僕では無くなってしまうのだ 白樺の道を抜け空に輝く月を見上げよう 満月の夜には崖の上から僕の身を投げよう
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