東行庵の軒下で

2002年03月21日(木) Jack the Ripper

わりと空気の良いところに住んでいる私は、大都市と呼ばれるところから帰る時には、必然的にヒトよりも少し長く、列車に揺られなければならない。

田舎だから、各駅停車しかとまらねぇんだろ、といったヤツ、許さん。
今日も、快速電車から各駅に乗り換え(笑うな!)ヒトもまばらの客車内に(それ以上笑うと殴る!!!)座った。


前の前の前の席に、若い兄ちゃんが一人。
後ろの後ろの席に若いネェちゃんが一人。
二人がけの窓側に座った私から見て、通路を挟んで斜め前の席の窓側に一人。この人物は、分厚い本を、読んでいた。腰をおろすときに少し見えたのだが、とにかく物理学っぽい内容の本だった。


視界に入ったのはこの三名だけ。
あ〜あ。早く駅に着かないかなぁ〜〜〜・・と、心を宙に漂わせたまま、列車の動きに身を任せていた。

「ボズリ」

鈍い音。しかも何かを突き刺した音だ。

反射的に音のした斜め前を見ると、本を読んでいた男の手がナイフの刃をしまうところだった。

何を突き刺したんだ!というおもいと、

しまった!!イケナイものを見てしまった!!!!

という焦りが頭の中でショートした。

その男は、私がナイフから視線をそらすと同時に私のほうを向いたのだ!

「わたしはな〜〜〜んにもみてませ〜〜ん」

と、阿呆のように視線を宙に泳がせながらも、荷物を胸の位置に抱きかかえ、大きな荷物を盾のように設置し、

切り付けられたら、こうしてああして、と、精一杯のイマジネーションを働かせて対戦シュミレーションをやっていたのだ。


と、列車が駅に着いた。


その男は、私のほうを見ながら降りていった。


その一瞬の永かったことといったら無かった。

でも、気の小さい私は自分の降りる次の駅まで、気を緩めることが出来なかった。
その男が本当に降りたかどうか、肉眼で確認してなかったからだ。


駅から駅の距離のなんと遠かったことか!!



降りる駅について、あたりを確認し、その男が座っていた座席をチラッと見たが、刺し傷らしきものは、良く分からなかった。

難しそうな本を読んでて、ストレスがたまったら、ナイフで・・・??


山登りが趣味で、たまたまポケットに入っていたナイフを取り出して遊んでいただけかもしれない。で、私に変な誤解をされまいと、必死になっていたのかも知れない。むこうは向こうなりに。



果物ナイフではなく、柄の部分が二つに割れて、おのおのが180度開いたところで固定するタイプの、折りたたみナイフだった。あんなのはじめてみたよ。



帰り道、Jack the ripperが頭ン中をまわったのは言うまでも無いだろう。

ロンドンの街中を震撼させた謎の男。ヤツの右手に光るナイフはアクマに操られる。毎晩、女の生き血をすするまで、休まることを知らなかった・・・そうである。

♪何も無かったように 俺は現場を立ち去る 
 胸に刺さったナイフが無気味に笑う〜♪




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