日記でもなく、手紙でもなく
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先週の土曜日、京都のお寺に行った時のことです。
昼過ぎに着いて、本堂の横にある部屋で、冷たいお茶をいただいていました。その部屋からは、庭木や花などが植えられていて、陶器でつくったような少し大きめのカエルが片隅に置かれていたりする中庭がよく見えます。 最初にこのカエルを見た時は、いったい何だろうと思って、少しぎょっとするのですが、見慣れるとなかなかユーモラスな雰囲気も漂っています。
その庭に、陽の光を受けて、ひらひら飛ぶ黒い蝶――、一瞬そう思ったのですが、蝶とも違う飛び方なので、よくよく見ると、実はそれはハグロトンボでした。小さい子どもの頃の、薄れいく記憶を蘇らせると、このトンボは、こんなふうにゆっくりと、ひらひら飛ぶのだった、ということを思い出したりしました。 今住んでいるところでは、このハグロトンボ、ほとんど見かけることがなくなっています。しかも、以前それを偶然見かけた時から、既にかなりの年月を経ているようにも思いました。
そのハグロトンボがひらひら飛んでいる、さほど広くない空間を見つめると、トンボの動きはよく見えるのですが、熱くなった外気の中で、どういうわけか、その空間だけ昔から時間が止まっているようにも見えてきたりしました。
麦藁帽子と虫取りの網をもって、外を走り回っていたような、そんな夏のことが、ふと脳裏を過ぎっていきました。
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