☆言えない罠んにも☆
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2004年06月21日(月) 【こっそり更新】第二弾 台風ランチ、あるいは日常と非日常の境界

天候のせいで延期され、それがまた別の理由で延期された予定を、本日漸く遂行した。
指定された場所で、取引相手と会い、密談(ここでは「親密に話す」の意。観察可能な実態としては「きゃ〜ん、ひさしぶりっ☆」「ゆっくりはなしたいね〜!」「おひるたべた?」「まだぁ☆」「いっしょにたべよーよ!」といったところ。)のため移動する。目的地は我々の会話に適した環境と適度な食事が提供される場所だ。
しかし、唯一条件を満たすと思われた候補地は定休日であった。
我々は急いで次を探すことにした。
なにしろ時間がない。だってほら。。。と思っているところに第一波がやってきた。
予想より早い。
「うわ〜!降ってきたよぉ!どうしようっ!」「とにかくランチやってるとこ見えたらすぐはいろう!」。
その必要充分な提案にはなんの反論もいらなかった。
雨はすぐに傘など役に立たないくらいに降ってきたし、なにより今回の取引物は長距離の輸送が困難である上、耐水性がない。
 そんなとき、突如目の前に表れた「Lunch」の文字。
ほっとして入ったそこに広がっていたのは、カジュアルなかんじの外装からはかけ離れた、クラシックミュージックが静かに流れるシックな空間だった。
鏡ばりの壁、やわらかい間接照明、クリーム色のクロスがかかったテーブル、細首のクリスタルグラスに、銀色のカトラリー。
まさに本格フレンチレストランの様相である。

 一瞬、その外装と内部のあまりの落差に驚き、東京ミシュランとかに「隠れ家的」とか書かれたいとでもいうのか、しかし「隠れ家的」というのはあくまでアクセスが悪くて小規模で空いていてCozyで味が良いということであって、内部とギャップのある外装をしたところでそれは隠れ家的と呼ばれうるのか?そもそも客に対しては不親切きわまりないな、ていうか、あの黒板のメニューの文字がすべての現況ではないのか?サイズとフォントは一考を要するな(あの給仕長らしき人物の手書きに違いない。あの年代に特徴的な書体だ)、などといろいろな想いが頭をかけめぐったのだが、ぼくは外食産業のマーケッターではないし、まあ気にしないことにして、我々は食事に移った。
若年労働市場の実態把握や事例分析、余暇活動の動向や彫像文化の歴史的展開、果物の調理法や競技鑑賞の慣習といった話題に関しての意見交換を行なった後、取引を負えて帰路についた。

 インパクトの有る天候状態であり、偶然性が盛り込まれた非日常的コンディションが作り上げられていたにも関わらず、先客であるマダムたちのテーブルから銃声が聞こえたり、厨房から悲鳴が聞こえたり、給仕が不穏な笑みを浮かべたりすることもなく、名探偵も登場しなかった。もちろん期待などしていたわけではない。この文章を書く段階になってから、話に落ちがないなと思い無理矢理付け足しただけである。それでも落ちになっていないあたりが実に落ちつかないのだが、まあどうにかなろう。


 予定より早く帰ったので何をしようか迷った。濡れそぼった衣服を替え、テレビをつけた。
 静岡の海岸でバーベキュをしていた大学生2人が高波にさらわれたという。


 「かいくーーーーーん!」「みなとくーーーーーーん!」


 一緒に来ていたという学生が、雨の降り荒ぶ中、波打ち際に向かって叫ぶ姿が放映される。
 
 サイドチェストにまだ熱すぎるコーヒーをおいて、髪をくるんでいたバスタオルの端を顔に当てた。

 なぜか涙が止まらなかった。


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