☆言えない罠んにも☆
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千代田区の某図書館で調べ物。
あのフェラーリ・エンゾで事故ったゲーム会社重役のスウェーデン人のことでも、決算が上々だったM銀行株の信用売りのことでもない。 もちろんネコの日とかそゆのでもない。
個人的に、ちょと知っておきたいことがあって、通算三時間、新聞を精読。該当するような記事は、見当たらない。
図書館を出て、ブレイク。ここ数日、同じお店で毎日ほぼ同じ時刻にアイスココアを頼むのに、毎回、不要なホイップクリームとへんなストローをつけられそうになる。明日からは事前に意思表示しよう。
行動と外見が一致している、という人と、そうでない人がいる。カフェにいたほとんどは、その外見からその仕事と、話している内容(一人の場合は読んでいる本)の見当が付く。商談、雑談、ミーティング。しかし、平日昼間の図書館ではそうはいかない。歴史の全集をめくるレジンメンタルタイの老人は大学で研究でもしているのか、単なる老後の趣味なのかさだかではないし、ぼくのとなりでずっと占いの図解本をノートに写している五十代そこらのおばさまの意向はさっぱりわからない。わかりやすかろうがわかりにくかろうが、想像するのはどちらもかわらずおもしろく、当たっているかどうかだって、同じくらいの確率なのだろうが。何でもあり、がリアルなのだと思うこのごろ。
そんなわけでまた作業に没頭する。時折メールを数通送受信する。相手は、ひとりが850km、もうひとりが11000km離れたところにいる友人二人。近い人ほど遠いところに。物理的距離では一番近いところにいるはずのダーリンとは連絡が取れない。携帯のケーブルをどこへやったのか、いますぐ確かめたいのに。
予定時刻のすこし前に、ぼくは目的の情報に到達する。どんな情報かって?そうだね、たとえば、あなたの職場の上司が、突然、一週間休んで、出てきたと思ったらいつもの張り切った顔が気力なく曇っていて、しかも普段話にもでなかった下の娘さんを連れてきていて、それで仕事を手伝わせたりしている。普段はいちいち口出しをしてくるのに、机の書類からほとんど顔を上げない。報告にいくと、気力なく微笑む。そして娘さんが帰ってしばらくすると、普段あまり来ないようなタイプのファッションの、そう、チェーンを腰からジャラジャラさせた上下白いスゥエットの若い男性が訪ねてくる。上司を名指しし、ソファに不敵な笑みを浮かべてどかっと座る。あなたが上司に来客を伝えると、上司はその来訪を予期していたそぶりであなたにお茶の用意を頼み、応接室にその若者と入っていく。お茶を持っていったあなたは、その男性が上司に若い女性の写真を見せながらタメ口で話しているのを目撃する。三十分しても彼らの話は終わらない。あなたはお茶を淹れなおして、再度応接室に入る。その時、上司は普段職場では吸わない煙草を吸っていて、来客は例の写真を左手の指に挟み、足はデスクに乗せている。 一時間をすこし切るくらいで来客は去り、上司は仕事に戻る。完全に沈黙して、書類にしか目を合わせない。普段は口を出しすぎるくらいの人なのだが。そして時折電話に出る。そして時折、電話に対応する声が涙ぐんでいるのがわかる。
周りの同僚は気にしつつ、何があったのかは聞けない。 会社の上層部の人は知っているような雰囲気である。
さあ、そんなとき、あなたは、周囲の人からのヒントを得ずに、この上司になにがあったのか、どういう予想をたて、どのようにしてそれを裏付ける? っていうような状況を考えてみたら良い。ぼくが調べていたのも、そんな種類の情報だ。大して意味はないけれど、知らないとすっきりしない。だからといって、関係者に直接聞くほどでもない、というような、ね。
ぼくわ、新聞をたたんで、図書館を出る。プール帰りの、母親に手を引かれた子どもがぼくの方をみていたので、おもいきりにやっと笑ってやって、(これわ”ぼく、良いもん見つけたもんね、いいでしょ、へへーん”という笑い)夕闇のオフィス街を駅のほうに駆けていった。そのときはすでに、お夕飯のことで頭の中はいっぱいだった。
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