I think so...
Even if there is tomorrow, and there is nothing, nothing changes now.
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2003年05月13日(火) |
麻生とコーミは多分僕だと思う |
「あの人は理解なんかしてないんだよ、とにかくアタシがそれなりに生きてて問題なく生活してればいいと思ってる。その為にあたしが少しぐらいおかしくてもしょうがないって思ってる!それだけだよ!腹ん中じゃどうせ汚い者をみるみたいに思ってんだよ!」 麻生はそう言ってコンクリートの壁を何度も叩いた。まるでそこに誰かいるみたいに。
僕は何て言ってあげたらいいんだろう。 麻生はとても傷ついてる。
僕はこういう時、自分がひどく冷たいスチールのパイプ椅子にでもなったような気分になる。自分の存在がただ邪魔なだけに思える。
「麻生はどうして欲しかった?」 伸ばした足で煙草の吸殻を蹴り上げながら、僕は言った。 「麻生はなんて言って欲しかった?」 しばらくそうしていたけど返事はなかった。
「僕は麻生は間違っていないと思う。でも麻生のおかあさんも間違ってないと思う。間違っていないって言い方はおかしいかもしれないけど。だって、理解するってなんだろう?僕はそこからわからない。もし麻生がいう理解が、麻生が望む答えをおかあさんが言う事なのだとしたら、それって何か違うんじゃないの。だってそれは麻生の型におかあさんを当てはめようとしてるだけなんじゃないの、麻生は自分がされて嫌だったことをしようとして思い通りにならないから泣くの?そんなの変だよ」
途中で麻生が少し顔を上げたけどまた俯いて黙ったままになった。
どこからか乾いた土の匂いがする。湿ったコンクリートの上にいるのに。そもそもこの辺に土なんかあったのかな。関係ない事ばかりが頭の中で反芻した。
「雨の匂いがする」 麻生が口を開いた。
あまりにも突拍子もなくそんなこと言うものだから僕は呆れるぐらい大袈裟に捲し立てた。 「これ?雨の匂い?てっきり土の匂いだと思ってた」 よっぽどその様子が滑稽だったみたいで麻生が口元だけでふっと笑った。
ポケットを弄るとくしゃくしゃに丸めたケースから新しい煙草を一本抜いて火をつけた。 なんでもない事なのに麻生がやるとまるで何かの儀式みたいだ。
「アタシもあの人も一緒なのかなぁ。同じ人間なのかな。だから分かり合えないのかな」 「分かり合えないのは悲しいかもしれないけど、多分きっとそれだけじゃないと僕は思う」 「それだけって?」
「人が人を知るには理解だけがすべてじゃないってこと、かな」
「なんかコーミの言う事は難しすぎてよくわかんない」
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