2003年11月29日(土) |
NINAGAWA『ハムレット』 |
チケットを目にした時からずっとどきどきしていました。 …だって、X列だったから、後ろの方だと思ってたのに、座席番号を確かめたらステージの裏側っぽかったけど、端ではあるけれど、最前列みたいだったから…! 芝居が始まるまで、めちゃくちゃ期待して意気揚揚と最前列に座ったのに「お客様、こちらの席は違います」…てなことを言われたらどうしようかと思ってました(笑)。 帝劇や四季劇場の席なら自信を持って「最前列!」って言えるのですが…慣れない(苦笑)シアター・コクーンで、しかも従来の概念を打ち破って、円形劇場でもないのにステージの四方が客席に囲まれているとくれば、不安になります。
…その割りには最前列っぽいってわかった途端に、もともとの予定をずらして東京まで飛んでいったのですけれど。 嗚呼、「予定がブッキングしちゃったから誰かにチケットを譲るかもしれない」といっていた私はどこへ…。(^^;
で、「お客様、こちらの席は〜」などと言われることもなく、本当に最前列でした。 井上く〜ん、ありがとう〜!これからもよろしく〜!(笑)<Bambi席なので。
で、そうまでして観てきた『ハムレット』はどうだったかと言えば… 煙かったです(苦笑)。劇場に入ったらなんだか煙っていると思ってたのですが、わざわざスモークを焚いていて、しかもそれがステージの脇から出ていたものだから、端の席の身としては…煙たかったです。最前列は美味しいけれど、こういう弊害があるんですよね…。でも、そんなことを差し引いても余りあるほどの素晴らしいお席でした。(*^^*) 四方が客席に囲まれた真中にあって舞台には金網が貼られ、その中を役者が出たり入ったり…と聞いていたのですが、実際に見るとやはり驚きは隠せません。 金網が何がしかの境界を表しているようでも有り、それが壁でなく金網なのは演技やヴィジュアルの問題ではなく、精神の境界線を表しているからなのでしょうか。 それでもって、2幕になるとそれが撤去されてしまうのは、皆、あれこれと混乱の中に巻き込まれるから…?
もういまさらストーリーについては何も語りませんが、訳は世田パブ版と同じ河合さんのF版でした。…私は訳は前の松岡さんのものの方が好きなんだけど…。 今回、ハムレットにレアティーズ、フォーティンブラス…それぞれにタイプが違っていて、ポスターや雑誌を見ただけでもヴィジュアル的には非常に期待できそうだと思ってました。オフィーリアは鈴木杏ちゃんで、井上君贔屓を差し引いて客観的に見ても、男性陣のが華やか! でも、若い子が多いだけに学芸会っぽくなったらいやだな…とは思ってましたけど、まあ鑑賞だけでもいいかな…って失礼なことが頭を過ぎったのも確かでした。感想は…
私はこういう『ハムレット』が観たかったんです!
総評で言えば、世田パブハムレットの時のが笑えましたが、(…セットの高さがあったので首が痛かったけど)同じ訳を下敷きにしても随分と趣が違ったので、その点では比べてしまうことが失礼なほどにどちらも楽しめましたが。世田パブ版はちょっと毛色の変わった『ハムレット』だという印象が残る。しかし、演出的にはあちらの方が観やすかったと思います。 蜷川版はいつも客席通路すらもしっかりと使用するので、あちこちから役者が登場して後ろの席でも舞台と近い気がして非常に楽しめるのだけれど、今回は大まかに6箇所程度のところから役者さんが出入りしていたので視点が拡散しすぎて、役者の良し悪しは最初の一言で舞台の出来は決まるものなのに、肝心の出の場面を見逃すという弊害があった。 特に、初めて観る役者さんもいたから、登場の場面もしっかり観たかった…。(;_;) 特に、フォーティンブラス……登場の場面が見どころな役じゃないですか…。ま、背は高く見栄えはいいけど、学芸会が抜けてなくてつつころばしの2まいめ〜て感じでした。 藤原君、井上君、杏ちゃんの3人が若い割にはそれなりだったので…ちょい落ちかげんも目立ったのですが。
また、同じ蜷川版でも以前に見た市村ハムレットが決して面白くないわけではなかったけれど、不器用で、うだうだと思い悩む不安定さが必要不可欠だというのが私の中のハムレット像なので、やはりハムレットは若い方がいい。
藤原ハムレットは若いゆえの不安定さが出ていてとてもよかった。 藤原君はあまり好きではないし、魂も抜かれたりしなかったけど(笑)、悩んでいる時の沈んだ表情はぐっときました。…こういう表情も若い時しか持ち得ないもので、多分『今』しかできない表情なのだろうと思う。 また、TVや映画じゃあまりわからなかったけど、結構背が高かったんですね。ああいう可愛い顔してるし、デビューした頃のイメージのままだからあまり身長はないかと思ってましたが。180くらいはありそうでしたので舞台映えしてました。(…どうやら靴のせいで、実際はもう少し低いらしい) 間近で観ると見た目よりも目や手の演技がいいですね。 しかし、『悪事はいつか暴かれる(?露見する?)』と…私の方を見ながら言うのはやめてください。(T^T)心に疚しいことがある身としてはその台詞が突き刺さります。…そんなに邪悪な眼で観てたんでしょうか。<しょぼしょぼ〜ん どうせなら笑顔の時にこっちを見ていてくれればよかったのに…。
ま、それはいいんですが…スタートが『身毒丸』だけあって台詞も明瞭、立ち姿も綺麗だと思うんですが、やっぱり台詞に翻弄されているという感がまだ抜けません。 まあ、ハムレットだけでなく、井上レアティーズも台詞に翻弄されてましたし、ベテランの西岡クローディアスですら何箇所もかんでたくらいですから、実力の真価が問われる恐ろしい舞台だともいえるでしょう。 シェイクスピアが演じる側にとっても観る側にとっても何度でも上演して欲しいと思うのはその度に翻弄されるから…どれだけ重ねても満足するということがないのでしょうね。シェイクスピアは本で読んでも面白くない。だが、舞台になると、この上もなく面白いと思える。 蜷川氏も言ってます。『何度やってもねじ伏せたという気がしないから何度も挑戦したいのだ』…と。 確かに、そうなのでしょう。 だから何度、誰の『ハムレット』を観ても、またふらふらと観にいってしまうのでしょうね。
多分、藤原君も『今』はまだ翻弄されている…でも、このまま舞台中心の仕事をこなしていけば、多分…5〜10年後には日本で一番見応えのあるハムレットを演じることが出来るのではないかと思う。TVや映画が悪いとは思わないけど、時間に追われながら、ちまちま編集でいいところを寄せ集めるドラマや映画より、舞台の方が真価を発揮できるタイプだと思うので。
オフィーリアもまあ、よかったんですけど…小夜子だよ。小夜子(@『6番目の小夜子』)のままだ…可愛くないとは言わないけど、上手くないとは言わないけど、健康的過ぎてパパりんが死んだりしたくらいじゃ狂いそうにないです…。オフィーリアよりはマリア(@『ウエストサイド物語』)タイプ。 可愛いんだけど、芯はビシッとしっかりしてそうなかんじで、オフィーリアの儚げな…というか危うげなところが感じられなかった。 芝のぶちゃんの方が色気あったな…とは言ってはいけないことなのでしょうか。 それでもやはり気になったのは、ハムレットよりもお兄ちゃんと恋人っぽく仲よし…この兄妹は…この兄妹は………(ーー;
ヨーロッパの…しかもお貴族様の兄妹関係って…一種、微妙なものがあるようですね。 でも、今まで観た中で一番可愛らしく微笑ましい兄妹の様子でした。篠原涼子ちゃんの時もお兄ちゃんとデキてそう…と思い、芝のぶちゃんの時なんか、思いっきりデキてる!…と思った。しかし、今回はそんな感じまではいかず、お兄ちゃんと戯れる場は羨ましい…以外のなにものでもありません。 これは杏ちゃんが健康的だったおかげだと思います。
ふと、観劇中に思ったことは…杏ちゃんにはジュリエットをやってもらえたら…原作のままの13(だったかな?)の初々しい演技を観ることが出来るかもしれない…です。 オフィーリアはその後でもいいよね…という気がします。
レアティーズは役柄的に清冽な役ですが、井上君のキャラクターにうまくはまってました。 ただ、やはりミュージカルの子だと思うので…歌がないと物足りない感もあり、台詞だけでいっぱいいっぱいになってるのがありありとわかって役がこなれてない感がありました。 まあ、それは出演者の誰にも言えることですが。 …やはりムズカシイんだよ、シェイクスピア。(ーー; まあ、これから歌だけでなく演技もがんばってね。 死んだ後のお腹どころか肩まで動いちゃってるのはまずいと思うから。(藤原君もだけど…) それにしても、最初…最前列だったけど、井上レアティーズはステージの反対側にいて、あまりこちら側には来てくれなかったので、ファンクラブ席のクセになんで井上君がよく見える席じゃないんだ…と不満げでしたが、2幕になってそんな思いは吹き飛びました。 2幕でもあまり、至近距離には来てくれない。 でも、クローディアスに剣を突きつけたり、ハムレットとの試合の場面では一番かっこよく見える側だったと思います。 流石、ファンクラブ席…とりあえず、来年も更新しておいてよかった〜♪(^o^)
さて、『ハムレット』といえば悪役も大事な役ですが…西岡さんは某警部より悪役をやってるときのがお似合いなので、さぞかし面白い舞台になるだろうと思ってましたが…悪くはないけど思ったほどでもなし(苦笑)。 それも単に台詞をかんでばかりいたから。素人にもはっきりわかるほど台詞をかんでしまうのはまずくはないでしょうか。しかも、結構クローディアスの見せ場でかんじゃってますよ。それさえなければねぇ…。 とはいえ、ねっとりとした感じはクローディアス以外の何者でもなく…高橋ガートルードとのキスシーンがあったのですが、キスシーンがこんなに恥ずかしかったのは初めてでした。ねっとり感倍増。年の功は伊達じゃない…て感じなんですよ! 王妃を金網に押し付け軽く抵抗しようとした手すらも押さえ込み、篭絡してゆく…あれはまさにそうとしか呼びようのないものでした。 また最前列だったし、席に近いほうで思い切りかましてくれたので、どきどき…。 そりゃ、ハムレットこんなのをうっかり見せられたらいやだよ〜反対するよ〜(><)…と激しくハムレットに味方したい心境でした。
あと、ガートルード王妃…とても色っぽいです。TVとかで見てる分には地味な役どころが多いので、華やかさに欠けるかとも思いましたが、全然そんなことなかったです。実物のが綺麗…。また肌が綺麗だったんですよ!<どこを見てる(笑) 北海道生まれだけあって真白な肌…そりゃ、王位に加えてこの王妃様もついてくるとなれば…毒を盛るくらいするよね…って思えてしまうから不思議! この人の肌を見た後では…杏ちゃん…もう少し肌のお手入れに気を使おうよって思わずにはいられない。
後は気になったのが…旅役者の中でスキンヘッドの人がいて…観たことはあったんだけど、名前が思い出せない…と悶々としてたんですが、劇中劇のとき、ヌードで出てきた姿を見て思い出しました! …井出らっきょやん!! この人はいまだに脱いでるんですね…女と違って男のヌードは金にならないって言われますが、ちゃんと芸になってるからすごい(笑)。 しかも、いまだにヌードになれるほどには体を維持できてるってことでもありますしね。 しかし、TVと違って舞台では都合よくモザイクが現れないため、真中には角がついてました(爆笑)。 この角から毒を取り出し、王様の耳に垂らす…毒ということを差し引いてもなんだかとってもいやん(><)な光景でした。 …角の下には肌色Tバックを穿いてたんですけどね…まあ、なんとなくね。(^^; でも、そういうキャラクターとは裏腹に墓掘りもやってたんですが、この時はごくごく堅実な演技でした。たけし軍団って見た目より器用な人が多い…。
それから、たけし軍団といえばグレート義太夫さんもいらっしゃいました。 この人はほんとにごくごく間近で見てしまいましたが、暑苦しそうな衣装だったので、汗だくだくの…至近距離から臭ってきそうで…これまたいやん(><)な感じでした。 同じ汗でも…藤原君のは一生懸命やってるぞ〜な感じで微笑ましいのに(笑)。
長くなってしまったのでそろそろ切り上げることにして、最後にこれだけは…
ラストシーンは皆殺しではありませんでしたよ!
前回の蜷川版『ハムレット』でこれがいちばん不満だったので、皆殺しにされなくてすんだだけでも…嬉しかった。 舞台が変わっていることのほか、役者さんの演技については総じてスタンダードな演出だったので、ほっとしました。 こういう『ハムレット』ならまた喜んで観にいきたいです。 …ということで、次回は12/13に(笑)。
でも、これってば東京以外ではやらないのかな? コクーン以外ではやれないのかな?
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