||〜*…clover…*〜||
There are all in one.
◆cloverに出てくる人々◇|*|◇エンピツ書きに48の質問◆
彼女は窓の端に座っていた。 突き落とされるぞと言ったら、いいよと言われた。 突き落とすような奴はこの部屋には来ないから、というその言は、しかし決して信頼からくるものではないのだが。 だから、彼女が窓から落ちるときそれは俺が突き落とした時だけで、だけど彼女は其れを拒否しない。 だから、彼女が窓から落ちるときそれは不慮の事故の時だけで、だけど彼女は其れを回避しない。
落ちるつもりは毛頭なくても、落ちないための工夫は見当たらなかった。
その背にナイフを突き付ける。 彼女は其れを拒否しない。
前に崩れ落ちることも後ろに倒れこむことも出来なくなって、彼女は笑った。
このまま。
「殺そうか」 「あずゆーらいく」 「生きたいか」 「生きてほしい?」 「死にたいか」 「それでもいいよ」 ああ、でも少し疲れたな。
あたしが居なくなっても世界は回る。 其れだけなのだ。 利害の無い答えを出すのは今のところ難しい。
ただ、これは愛なのだ。 哀しい程に見返りの薄い愛なのだ。 其れでも「彼」はあたしを生かそうとし、殺そうとする。 少しでも善い答えを求めて彷徨っている。取り返しのつかないことはしたくないらしい。 だから、答えは二の次だ。
ああ、これが愛なのだ。 愛されすぎてあたしは笑う。 責任を負う覚悟なんてとっくに出来てるくせに、結果の善し悪しだけが定まらなくてこの様だ。
そんなものに答えはないのに。
何れにせよ、結果は等価値である。 だからこそ彼はあたしを生かそうとし、殺そうとする。 少しでも善い答えを求めて彷徨っている。
1mgでも良い方を択びたくて、 ああ、 なんて幸せなんだろう。
その見返りが、今のところ彼に注がれる余地はない。 あたしの其れは、概ね全て出荷されている。 あたしを生かしている以上、手に入れた外貨が彼を満たすことはない。 其れでも取り返しのつかないことはしたくないのだと答えを探し続けてる。
報いたくないわけが無い あたしの答えは多分出てる それなのに
ああ
でも少し疲れたな。 後悔なんかしない覚悟はついたから一思いに殺ってくれてもいいのだけれど、 彼はそれを望まない。
生かそうか、殺そうか 全力で答えを探している。
だからあたしが窓から落ちようとしても 許されないのだ。 ありがたいことに。 だからあたしが窓から降りようとしても 許されないのだ。 ありがたいことに。
選択肢を奪ってくれているのだ。 ありがたいことに。
そんなことを考えながらこの部屋にくる奴なんて、彼しか居ないのだ。 ありがたいことに。
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