先日友人たちとランチを食べに行った。
その待ち合わせ場所に行く途中、 中年男性に声をかけられた。
「すみません。 この先にファミレスかなにかありますか?」
私は親切そうに見える微笑みを浮かべ、 『この笑顔を使うのは久しぶりだな』 と思いながら、
「ロイヤルホストがありますよ」
と答えた。
「あの、お昼ご飯はもう食べましたか?」
ああぁ、ナンパなのね。
微笑みの種類を素っ気無いものに変えて答える。
「これから友人と食べに行くところです」
止めた足を再び動かし始めたのに、 彼はめげずについてきた。
「今日とは言わないんで、今度ご一緒に」
曖昧に笑いながら、 指輪が見えるように左手を振る。
「あ、ご結婚されてるんですか」
「はい」
それであきらめると思ったのに、 なおも彼は食い下がった。
「贅沢は言わないんで今度お茶でも」
足を速める私の右腕を軽くつかむ。
その馴れ馴れしさにウンザリして、
「『贅沢は言わない』だと? アナタごときが私とお茶したいと思うのが、 十二分に贅沢なんだよ。
だいだい、 私に声をかけること自体、 10年遅いんだよ。 オヤジ」
という表情を浮かべたら、 さすがに諦めてどこかに行った。
そんなあしらい方をしていても、 友人と合流した時に、
「声かけられちゃった。 まだまだイケるみたい」
と笑顔で報告したことは、 言うまでもない。
軽そうに見えたのだろう。 簡単についてきそうに見えたのだろう。
そんな理由だと分かっていても、 この歳になるとナンパすら、 嬉しいもんなんだな。
終わってる?
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