Sun Set Days
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2003年10月23日(木) 岩手産地鶏

 先日、4人で横浜駅西口の近くにある居酒屋で飲んできたのだけれど、そのときに入った店もどちらかというと薄暗い、隠れ家のような個室がいくつかあるところだった。ここ1〜2年の間に個室のような仕切りスペースばかりの店が増えてきていて、仲間内の会話を楽しむとか、そういうときにはやっぱり重宝するのだろうなと思う。薄暗いということも、ビルの中の狭さを逆手にとってうまく利用しているということなのだろうし。
 また、料理も創作和食というのか妙に凝っていたり説明書きがいちいち細かかったりして(先日の店は岩手産地鶏が売りのひとつだった)、なるほどなあと思わされる。それでいて価格は普通の居酒屋とかとそれほど変わらないのだから、利用者にとっては便利な時代になったなと思う。経営しているほうは様々な企業努力をしなければならず大変なんだろうなとは思うのだけれど(ただ、最近の個室が多いような創作居酒屋の外観はあまりにも似た感じのところが多くて、結局模倣はどんな業界でもまたたくまに広がってしまうのだなと思う)。

 今日テレビで「ワールドビジネスサテライト」を見ていたら、「トレたま」のコーナーでニューヨークのDJバーの経営者が「最近のお客にとってレストランやバーは食事をするところだけじゃなく、エンターテイメントを求めているんだ」というようなことを話していたけれど、おいしい料理をしっかりとしたサービスで提供するだけでは生き残れないような時代になっている側面があるなんて、なんだか発達しすぎた世の中も困ってしまうところがあるのかもしれない。

 トレンドだとか、そういう言葉は最近ではあんまり積極的には使われなくなっているような気がするけれど、それでも最先端の流行に接するにはエネルギーやパワーがいるような気がする。元気なときには積極的にそういったことに踏み込んでかかわっている人も、年とともにあるいは元気じゃないときにはもっとスローなものに触れるようになる。いつだってハイテンションでアンテナを張り巡らせ続けることは(多くの人にとっては)そんなに持続できることじゃないのだ。
 最近はスローライフやらスローフードやらそういった言葉を雑誌で見かけることが多くなったけれど、短期間に与えられる、触れることのできる情報が多すぎて、逆にそういったものに惹かれる時期が早くなってきているようなところがあるのかもしれないと思う。たとえば、1から7までを経験した人が8以降にスローなものに惹かれるようになっているのだとしたら、10年前よりも1から7を体験することのできるスピードが早まっているような感じとでも言うのだろうか。しかも、昔と異なるのは実際にそれを体験していないのに体験したような気になってしまうほど情報が増えているということかもしれなくて、1から7までの体験が実体験ばかりでなく疑似体験も混ぜ合わせてのものになっているのなら、確かに消化のスピードは早くなるだろう。
 それが良いことなのか悪いことなのかはもちろん簡単には判断できないけれど。

 ただ、その居酒屋で料理を食べていたときにも思ったのが、外装とか、スタイルとか、そういったことももちろん大事じゃないわけじゃないのだけれど、それでも大切なことは料理がおいしいかどうかということなんだよなということだった。そのときの料理はどれもとてもおいしくて(もちろんそれはとても空腹だったせいもあるのだろうけど。店に入った時間は23時くらいで、12時過ぎから何も食べていなかった)、それがやっぱりとても嬉しかったわけだし。
 様々な物事に様々な要素が紛れ込んでいるので、できるだけ基本がなんなのかということに、核となることはなんなのだろうということに留意していきたいと思った。そんなのはもちろん当たり前のことなのに、ときどきあまりにもうかつにうっかりと、大切で当たり前のことを忘れてしまいそうになる。


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 そのときに一緒に飲んでいた後輩が、先月富士山に登っていてそのときの話をしてくれたのだけれど、その中で一番印象的だったのが8合目を超えた辺りから雨が地面から空に向かって降っていくのだという話だった。
 その話を聞きながら、その光景を一度見てみたいものだなと思った。雨が下のほうからから空に向かって降るなんてなんだかものすごく不思議な光景のような気がする。灰色の世界の中で、透明な雨が街とは反対の動きを見せるということ。後輩たちはそのときにはもう疲労困憊でその雨がかなり辛かったのだという話をしていたのだけれど、確かにそれはとても辛そうなのだけれど、映像としてはきれいなのだろうなと(もし自分が同じ場にいたとしたら疲労で見ている余裕なんてないにしても)思った。
 その光景は自分が見ているわけでもないのに結構クリアに想像することができて、やっぱりいろいろな人との話の中ではじめて知ることは多いなと思ってみたり。


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 お知らせ

 少しずつ冬の気配が感じられるようになって、なんだか嬉しくなるのです。


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