Sun Set Days
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2004年01月28日(水) 1泊2日+『一勝九敗』

 27日から1泊2日で、千葉の某都市へ研修に行ってきた。朝が早いこともあって、前泊で。
 27日には横浜で別の研修を受けていて、それが17時くらいに終わって、電車に乗り込んだ。睡眠不足は相変わらず続いていて、運よく座席に座ることができたので、イヤホンを耳につけて音楽を聴きながらすぐに眠りに落ちてしまった。
 身体は時々とても便利にできているものだと思うのだけれど、乗り換えの駅のひとつ前の駅で目を覚まし、それから電車を乗り換える。いままで合わせても10回は乗っていない路線で、なんだか新鮮な感じがする。世の中にはたくさんの駅があって、その多くは代わり映えがしない同じようなものなのだけれど、それでも同じ駅は二つとない。それぞれの駅を利用している人たちも別の人たちで、そしてそのたくさんの人たちにそれぞれの日々があり、家族があり、友人がいる。そんなことをぼんやりと考えると、あまりにも途方もなくて驚いてしまう。世界は広いと、よく言われることを考えてみる。関東の、それぞれの駅でさえそんなことを実感してしまうのだ。他の国のことまで考えたら、もうきりがないし本当に果てがない。
 けれども、すべては、一人一人の日々や時間の集積からなっているのだと思う。一人一人の日々が何億もあって、それが世界のある部分を彩っている。世界は広いけれど、手が届く範囲はとても狭い。でもそういうもので、自分の周囲の時間を大切にしながら、ときどき世界の広さのことを考えるくらいでちょうどいいのだろうなということを考える。特に意味はなく、ぼんやりと、まだ眠気の残る頭の中で。


 目的の駅に着いて、ビジネスホテルにチェックインをする。そこは数年前にも出張で訪れた街で、そのときには半月ほど滞在していたのだった。
 数年ぶりでも基本的な通りは変わってはいないので、すぐにホテルを見つけることもできた。
 かつて見た街の様子に、懐かしさを覚える。たくさんの人が歩いていて、たくさんのネオンが輝いている。
 同じ研修を受けることになっていた別の店舗の後輩と連絡を取り合って、合流しだい一緒にご飯を食べようということになる。
 その後輩が到着するのは22時頃になりそうだったので、それまでホテルの部屋で翌日に行われるちょっとした試験の勉強をする。
 全然たいしたものでもないのだけれど、会社の研修のたびにちょっとした試験があるのだ。
 それから近くのコンビニで買った雑誌(新しい携帯電話とかパソコンとか、DVDプレイヤーとかばかりが載っているようなやつ)をぱらぱらとめくり、音楽を聴いていた。iPodはそういうときにもとても便利だ。たくさんの曲を、曲名順にランダムにかける。
 22時少し過ぎに、ようやく到着した後輩から電話がかかってきて、合流する。
 駅前を少し歩いて、最近本当に多くなっている個室系の、創作和食の居酒屋に入る。薄暗い店内は間接照明で照らされ、メニューや店内の壁には筆で書いたような読みにくい文字が躍っている。
 おでんが売りになっている店で、それを食べる。
 そして、0時くらいまでいろいろと話していた。睡眠不足が続いていたので、お酒は最初から飲まなかった。だいたいいつもは一杯だけビールを飲むのだけれど、最初からソフトドリンクにした。2ヶ月ぶりくらいに会った後輩はビールを飲んで、それからいろいろな話をした。


 店を出て、ホテルに戻る途中にコンビニに寄った。翌朝のパンと飲み物を買う。
 後輩と別れ、ホテルの部屋に入って、それから30分後くらいに眠った。
 翌朝は6時に起きた。


 そして28日の夜に、最寄の駅に帰ってきた。駅前のコーヒーショップでコーヒーを買って、それを飲みながらてくてくと歩く。
 今週はずっと睡眠不足気味だったのだけれど、眠気は不思議と波のように訪れたり引いたりする。
 それでもまあ元気なので、もちろんあんまり無理はしないようにしながら、日々を過ごしていこうとあらためて思う。


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『一勝九敗』読了。柳井正著。新潮社。
「はじめに」の途中にはこう書かれている。


 ぼくは現在五十四歳。いままで経営書、企業の成功物語などを数限りなく読んできたが、本を書くのは経営の第一線を引退し、人生を総括するような年齢に達したときで充分であるし、自社の経営そのものに多忙で、そのような余裕もないと思ってきた。(……)
 しかし、今、会社もぼくも大きな転換期にある。きちんとした形で何かを書き残すとしたら、今しかそのチャンスはないと思い、これまで自分がたどってきた道筋を振り返ってみることにした。
 呑気な回顧録にするつもりはない。現場は時々刻々と動いている。やるべきこと、やりたいことはまだまだいっぱいある。振り返っている時間はあまりないのだ。しかし会社経営の原点、会社で働くということの原点は今一度確認し、これからも一緒にやっていく仲間である役員や社員たちとそれを共有したいと思った。この本を出すことにした理由である。(4〜5ページ)


 この本は、著者名を見てわかるようにファーストリテイリングの創業者の書いたものだ。数年前にフリースの爆発的なヒットによってユニクロブームを作った経営者が、ブームの終焉後の苦しい状況の中で、転換期と話しながら様々な内容を振り返り語るのだから、かなり興味が惹かれてしまうのも当然だろう。しかも、なんだかんだいっても、ファーストリテイリングは現在進行形の企業であり、著者もまだまだ(社長こそ若手に譲っているが)現役の経営者なのだ。そう考えたときに、このタイミングでこのような本が出版されるということは、やっぱり興味深いことだと思う。

 創業時代から、ユニクロがどのように数多くの失敗と、数少ない成功の末に成長してきたのか、そしてその成長の背後にはどのようなビジネス哲学があるのかを歯に衣着せずに率直に語っている。明確なビジョンを持っていることがはっきりと感じられ、ベーシックな原則に忠実でありながら、その具体的な進め方が革新的なところがとても印象的だ。
 たとえば、その革新的な部分は、スーパースター店長という制度に象徴的に現れていると思う。具体的には、ユニクロは小売業であり、店舗がお客様に満足してもらう場所ということになる。だからこそその店舗の店長は商人でなければならず、最大限の成果を挙げなければならない。そして、そのような仕事をする者には大胆に裁量を与え、また給与面においても柔軟に対応する必要がある。ということで、店舗の様々な面における裁量を与え、また実績によって年収が300万円にも3000万円にもなりえるという制度を作っているのだ。現場が重要だと説く企業は数多いけれど、そのように実際に待遇面まで含めて明確に打ち出してきている企業は正直なところここだけだと思う。

 他にも、日本の年配の熟練技術者を中国の生産工場の技術指導者として常駐させる「匠プロジェクト」なども同様のものだと言えるだろう。SPA的なビジネスモデルの中で、自ら作り上げる商品の品質を高めるために、熟練の技術者を配置する。自己実現をはかりたい技術者と、実際に有益な指導を受けることのできる現地の工場の双方が満足し、しかもそのような取り組みによって、最終的な目的である品質の維持された商品をお客様に提供し、喜んでもらうことができる。これも品質はより高くしかしより安くといった基本的な内容を実現するための革新的案手法のひとつだと言えるだろう。

 先月は既存店が盛り返してきたという記事があったけれど、なんだかんだで多大な利益が出ているし、柔軟性もあり強い企業なのだとは思う。しかもリアルタイムで動き続けている企業でもあって、やっぱり今後のファーストリテイリングがどうなっていくのかは気になってしまう。


 いくつかの部分を引用。

 ユニクロの至上命題は、常に低価格高品質を自社の力によって極め、実現することだ。(101ページ)

 当社の店長とは、知識労働者だと考えている。店長を「店舗という場所で、自分たちの力で付加価値をつけていく人」と定義(134ページ)

 小売業の場合とくに顕著だと思うが、お客様や周りの環境に対してどうしても受身になってしまい、攻めようとしない。店を開く前はあれこれ考えるが、開いたらそれでお終い。黙ってお客様を待っていたら、売れない店は絶対に売れない。店の態勢を抜本的に変えようとしなければ売れる店には変身しない。(208ページ)


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 お知らせ

『A Scenery Like Me』が楽しみな今日この頃です。


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