つぶやき

2002年09月15日(日) フィーメンニンは謳う&フラワー=デストロイヤー

最近全く更新をせず、思いっきりやる気なさげな管理人です。
申し訳ありません。せめて日記だけでも更新するのがサイト管理者の義務だと分かってはいるのですが…。

さて、ここのところの復刻ブーム、文庫化ブームの例に漏れず、上記2作品も遂に文庫化です。
両作品とも既に白泉社では絶版になってます。私に言わせりゃ絶版にするのが早すぎだと思うんですが、一個人の意見など黙殺されるのが世の常なのでどーにもならんでしょう。

それはともかく、懐しくて思わず買ってしまったこの2冊、いっちょ感想など行ってみようと思います。
未読の方も興味を持たれたなら購入してみて下さいませ。


●フィーメンニンは謳う(山口美由紀)

山口美由紀の作品は、メルヘン調、ファンタジー調のものが多い。
でも、それは決して「おとぎ話」のような甘い話ばかりではない。
主人公・リーナは不本意にも事件に巻き込まれ、妖精族の女王となる少女・ミルッヒを「育てる」羽目になってしまう。
リーナが連れて行かれた「あちらの世界」は、美しい世界だったけれど「こちらの世界」の悲しさ、醜さを映し出す「鏡」のような世界でもあった。
美しさの中に生じる歪み。そして自ら封印したリーナの幼少時の記憶。
それらが明らかになったとき、リーナの心はどう変化するのか。ミルッヒは無事成長を遂げることができるのか。

物語の核は要するにその部分なのだが、今読み返すと、私は寧ろ闇に君臨する魔女・ラミアドナが気になってしまう。
孤独の壁を自ら打ち破る勇気を持たず、やり場のない悲しみばかりを募らせる彼女は、本当はどこにでもいる存在なのだと思う。
少し落ち着いて周りを見れば、魔物になる前に気付けたことが沢山ある筈だった。
彼女の家族が彼女を忌み嫌っていたわけではないこと、何よりも全てを捨てて愛してくれる存在(フェロール)がいたこと。
尤も、悲しみに囚われた人間は、周りに目を向ける余裕などないのだろうけど…。

人は、自分の心の闇とどう向き合い、乗り越えていくか。
その先にこそ本当の「強さ」があるのかもしれない。


●フラワー=デストロイヤー(那洲雪絵)

那洲雪絵の代表作といえば「ここはグリーンウッド」である。
だけど私はこの作品も好きだ。
正確には、一連の作品の主人公である高西姉妹が好きだ。
勝気で無鉄砲で破天荒な妹と、おっとり・のんびり・ぼんやりの姉。
一見正反対のこの姉妹は、だけど根っこの部分では非常によく似ているとも思う。
妹・智恵は突然自分が超能力を身に付けても全く動じず、能力を使いこなそうとさえしている。
姉・智美は自分の恋人の正体を知っても、殆ど慌てず騒がずそれを受け入れる。
ある意味この2人の居直り方には感動さえ覚える。
そして物語の重要部分に登場する姉の恋人・不破徹。
思いきり怪しさ全開の彼もまた、私は結構好きだった。それから別の意味で怪しい智恵の同級生・宮野も。

好きだったけど、でも私は智恵たちのようにはきっと一生なれない。
今を生きてる人間の大半は、多分鳥井さんのように混沌とした悩みを抱えて生きている。主人公達のように突き抜けた生き方をできる人間は少数派なのだ。
不安定で不確かな思春期と呼ばれる時代。不安や疑いや無知に覆われた暗黒時代(ダーク・エイジ)を終えた少女たちは、その先にもっと辛い現実が待ち受けていることをやがて知るだろう。
無知では済まされない、許されない。それでも泣いて逃げるわけにはいかない「大人」の現実に直面する。

だけど「198X年の私達に起きた出来事」を「忘れずに」いる限り、彼女達は決して「負けない」のだ。
どんなに弱い人間でも、超能力なんか持たなくても、負けない気持ちがあればいつか暗闇は晴れる時が来る。その時を信じて、人は辛い現実を乗り越える力を手に入れる。


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