きっとミサトさんならそう言ってくれるだろう。
僕の理想と彼女の現実は少しずつズレていった。 それは些細なすれ違いの積み重ねだったけれど、僕が常に現実を正しく認識しようと努力していれば、きっと手遅れになる前に気付けたはずだった。
僕には僕の理想があり、彼女には彼女の理想と現実がある。 それが必ずしも一致しないのは、この日記を書き続けてきた僕にこそ理解できるはずだったのに、僕はその努力を怠っていた。
現実の仕事に追われていたかもしれないし、バイクに夢中になっていたかもしれない。現実で出会う様々な経験に夢中になって、僕は自分を見失っていたのかもしれない。そして、それは彼女も同様だったかもしれない。
そして、二人の現実は少しずつすれ違い、僕はそれに苛立ちを募らせた。募る苛立ちは彼女にも伝わり、気付いた時には彼女の感情はもう戻れない所まで来てしまっていた。
いや、きっと僕は早い段階で気付いていたのだ。けれど、現実を直視する事が面倒で目を背けて、外罰的に苛立った。つまり、他人のせいにした。それは彼女をよけいに感情的にしたし、僕から目を逸らす原因にもなった。
二人の安定感の上に胡坐をかいていたのだ、僕は。そして、彼女に依存しようとしたのだ。彼女を依存させているフリをして、実は自分が依存できるように束縛しようとした。けれど、外の世界を知った彼女はもっと自由を求めた。そして、彼女が思い通りにならず、僕は苛立った。
そんな傲慢な苛立ちはますます彼女の目を外へと向けさせ、いつしか戻れない所まで来ていた。
どうして止められなかったのか。それを考える時間はいくらでもあるし、それは真実を刻み付けるなどと吹聴してきた僕の責務なのだろうと思う。
ここから先も僕の思うようにはならないかもしれないし、想いは伝わらないかもしれない。けれど、諦めるわけにはいかない。そんなに簡単に諦められるなら、最初からぜんぶつぎ込んでない。
自分勝手な想いかもしれないけれど、でも好きなものは好きだからしょうがない。諦めないよ。たとえそれがホリゾンタル・グレイズのような夢物語だったとしても。
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