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■ 突発sss
■古今東西諺事情 「もう師走かー」 クリスマス一色に染まった街を歩きつつ、麻衣は白い息を吐きながら呟いた。彼女はねえ、と笑って隣にいるナルを仰ぎ見る。 「ツリ−買おうよツリ−。クリスマス近いんだしさ」 ナルはこの言葉に呆れたような声を出した。 「お前はキリスト教徒だったか?」 「違うけど」 「なら、必要ない」 耳に心地よく響くテノ−ルは、しかしすげなく意見を却下する。麻衣は頬を膨らませた。 「日本人には宗教関係ないの! クリスマスにはケ−キ食べて、お正月にはお節とかお餅とか食べて」 「花祭りには甘茶を飲む?」 「……いや、それはぼーさんだけだと思う」 滝川が聞いたら怒りそうな台詞だが、ナルの珍しい軽口を麻衣は真剣に否定する。そして、それはともかく、と声を上げた。 「ナルってキリスト教徒じゃないの?」 「僕が一度でもミサに行った事があったか?」 「ないけど……」 でも、と続けようとする麻衣を手で制し、ナルは言った。 「イギリス人が皆キリスト教徒だとでも思っていたのか? 僕は少なくとも無宗教だ。そんな事するよりも論文を書いていた方が世程為になる」 「論文……」 確かにナルらしいと言えばあまりにナルらし過ぎる返答である。このままだと、彼は本当にクリスマス当日に論文を書いているかもしれない。それだけはぜひとも避けたい所である。何せ、日本でクリスマスと言えば、恋人達にとっては一大イベントだ。これは精々彼にバレないように準備を進めなければ。 「まあ今この場でクリスマスの話はもういいや……。それよりもクリスマス過ぎればお正月! あ、年賀状書いてない」 「忙しいな」 「ナルみたいに世間と断絶はしてないからね」 呆れたようなナルの声に、麻衣はそう言ってべ、と舌を出す。別にナルが本当に世間と隔絶等していない事は、イギリスのスポンサーや上司などとも良くメ−ルや電話でマメに連絡をとっている事などでわかってはいるが、ナルは基本的に人付き合いが嫌いである。と言うよりも、むしろ苦手なのだろう。しかし、決して猫を被る事がないのは呆れを通り越して天晴れな所ではあるが。 本人も、かつて「猫を被れば倍は取れるかもしれないな」などと不穏な発言をしている。因にこれに関しては、麻衣は同感だ。 「あ、じゃあナルの来年の目標。“周りに気配り”」 「まず上司に向かってそれを始めてから言うべきでは、谷山さん?」 「こんな時に限って上司面する奴に気配りなんて必要ないと思います、所長」 こう返されるとは思ってなかったのか、ナルは諦めたように溜息をつく。麻衣は密かに勝利にほくそ笑むと、少し前を歩いていたナルの腕を取り、自分の腕を巻き付ける。ナルは恋人の名前を呼んだ。 「麻衣」 「こっちの方があったかいんだもん」 麻衣はくすくすと笑ってそう答える。それにナルもそれ以上言う事もなく、ほどく事もなく立ち止まらずに歩いて行く。知らず歩調が弛んでいるので、麻衣はそれに気付いてくすりと笑った。 おそらくは彼も自分で気付いていないであろう、小さな優しさだ。麻衣は気付いても、口には決して出してやらないけれど。 「でもホント、一年ってあっという間だったなぁ」 麻衣は少し眉根をあげる。 「えっと、なんてゆーんだっけこう言うの。“光陰矢の如し”、かな?」 「何?」 「月日は矢のようにあっという間に過ぎて行くってこと。なんで矢なのかは知らないけど」 「ああ――Time flies like an arrow?」 「? 何?」 本場の発音に、麻衣は一瞬首を傾げる。ナルは簡単に説明した。 「直訳すれば『時は矢のように飛んで行く』。たぶん、光陰矢の如しと同じ。向こうの諺」 「へーぇ……」 「習わなかったのか?」 「一言余計! えーごは苦手なの!!」 麻衣は空いている手で肩を竦めているナルを軽く殴ると、もう、と息を吐いて、すぐにふふ、と笑った。 「何か不思議だね。似たような諺って結構あるもんだねえ。なんだか、人種は違っても、やっぱり考え方は同じ人間なんだね」 嬉しそうに笑む麻衣に、ナルも薄く笑んで答える。 やはり、国は違っても同じ人間ってことで。 それだけの事だけれど、麻衣はすごく嬉しいのだ。 「――――ちょっと早いけど、来年も宜しくお願いします」 「――ああ」 ずっと、傍に居れますように。
■後書きと言う名の言い訳 花祭り、これってどの仏教にもあるもんなんでしょうか……(滝汗)。調べてないのです。ちなみに悪霊のラストでぼーさんが言ってた仏教学校、実は浄土真宗なんですよ。何故知ってるか……うち姉妹校(?)なんざんす(汗)。うちの学校にはそこ出身の仏教の先生ウヨウヨ居ます。何故か英語の先生も居ます。何でよ。 そしてナルの性格がなんかヘン。建築探偵さんとまざってしまいました(汗)。あれー、こんなはずでは……(滝汗) そして日本語と同じ諺。「溺れるものは藁をも掴む」、「歳月人を待たず」、「鉄は熱い内に打て」、「時は金なり」などなど。捜したらまだありそうっすね。覆水盆に返らずも似てるっちゃ似てますが、ありゃミルクだしな、えーごでは。
■近況。 報告できるような状況は何一つナッシング。っつーか寒いよ!!!(大泣)うう、冬はキライです……。 あ、そういえばまたおもろい出来事が一つ。センターの問題集を解いていた時の事。突然目の前に飛び込んで来た文字。なんと Mt.Fujiyama ……フジヤマー!!??と驚き再び見返せば。 Mr.Fujiwara(藤原さん) ……見間違いです、ええ、ただの見間違いですとも!! にしても何故にフジヤマ!? 自分がよく分かりません。
2002年12月16日(月)
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