【読書記録】重松清「定年ゴジラ」

ストーリー:定年退職をして一ヶ月。暇になった藤田さんは近所を散歩する日課を作った。しかし、藤田さんの住むくぬぎ台は人工都市、作られたニュータウン。自然が多く残る中に一戸建てがひしめく町は、たしかに三十代の藤田さんにとっては夢のマイホームタウンとして輝かしく映っていたものの…。定年を迎えた藤田さんたちにとっては、これ以上ない退屈な町になったくぬぎ台だったが…。

昭和初期生まれというと大げさかもしれませんが、子供時代に戦争を体験してきた世代の藤田さんが主人公。私からするとおじいちゃん世代なわけですが、とにかく展開がうまいなぁというのが印象的でした。全編を通して、今まで会社一筋でとにかく真面目に働くサラリーマンだった藤田さんが家族に改めて向き合い、町内づきあいに触れ、生まれ育った町を懐かしむ中で、少しずつ丸くなっていったような感じがしていいなぁと思いました。ずっとまじめで穏やかな人だと思っていた藤田さんにも自分でも忘れ去りたくなるような一面があれば、正面から向き合う事が出来ない自分など、決していい人一点張りではない人間味のある物語になっていたと思います。後味もいい作品になっているので、重松さんを読むならわりと入りやすそうな作品かな。NO.009■p323/講談社/98/03
2008年04月06日(日)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン