【読書記録】豊島ミホ「青空チェリー」 |
豊島ミホのデビュー作含む3編が収録――。女による女のためのR-18小説の読者賞でデビューした著者。すでに既刊を読んでいるのですが、原点はこんな感じだったんだなぁと思うところが強かったです。表題作の青空チェリーは、神田川デイズのピンク映画を撮ろうというお話を彷彿と。冒頭に出した、『ハニィ、空がけてるよ』を私はお勧めしたく、このメモを書いてます。 ストーリー:大学教授と付き合っている主人公は、ある日突然彼から帰郷するように半ば強制的に言い渡される。それが戦時下にある国家で彼にできる唯一で、彼女は従って自分の田舎で夏をすごす。何もない地元でふいに出会った元同級生の男子となんとなく日々を送りながらも、教授のことが心配で日々はがきを送るのだが――。 私が読んだのは単行本の方で、巻末のあとがきにはこの作品には(特に)加筆・修正を行ったとありました。それだけずっしりと重みのある言葉になっているし、現代の戦時中という親近感のない設定にもかかわらずぞくりとするところがところどころありました。かなづちをもったシーン、はがきを買いにいったシーン、カードに気がついたシーン…。その一方で、ダーリンの気が抜けるほどの優しさと間の抜けた脱力感がとても心地よくて、そしてやはり本気で恋愛をしていた教授に対する気持ちなどの描写も丁寧で、とてもずきずきしながら読めた作品でした。うん、豊島さんの作品だと断トツで『檸檬のころ』がお勧めでしたが、今度からは一緒にお勧めしたいと思います。NO.44■p232/新潮文庫/05/08
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2008年09月10日(水)
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