みかんのつぶつぶ
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2003年11月03日(月)


月は、欠けてもまた満ちてくるのに。
命は、短いと感じたその日から欠けてゆくばかりで。
しなやかなススキの穂が毛羽立ち始めた様子や、
柿木の実がカラスにつつかれ落ちている景色や、
稲を刈られた田んぼが眠りにつこうとするような感じや、
街路樹から散り落ちる枯葉が虚空に舞う寂しさや、
そんなことなどなどがどれ一つをとっても涙に変わる季節となった。


この、実りある秋の日に、
その生涯を閉じようとしていた。
期は熟し、見送る私達は、ただただ涙するしかなかった。


人には皆平等に120歳という寿命が与えられていると誰かが言っていた。
その120年をどこで終えるのかは、その人の生き方で早くなり遅くもなるという。


生き急いでいるようでもあったような、彼等は。


父が、あとの一年という寿命を彼に与えてくれたのではないだろうか。
「退院しても無理はさせるな」という父の言葉、私への最後のお説教。


彼は、無理をしたかった。したがった。
短い社会復帰、でも、喜びに満ち溢れた姿だった。


無声音の映像が頭のなかを静かにコマ送りされるように、
出勤するその後姿を見送る私自身を思い出す。


人は、なんて儚いものなのでしょう。







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