夕暮塔...夕暮

 

 

さざめく - 2002年01月21日(月)

君と手を取りて眺めし海原よ 夜の彼方には不安さざめく





君が手を 取りて異国の夜の海へ 向かう胸の帆は風に荒ぶる






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ゆうべの些細な雑談から、数年前、南の島で夜の海へ向かった時の事を思い出した。
私も友人も、終わりとはじまりを迎えようとしていた時期だった。
広大な敷地を持つリゾートホテルでのんびりと過ごしていた日々のうちのある一夜、散歩の途中で誰もいない砂浜に立った。雨期の夜で星も月も見えなかったが、サーチライトが海を照らしていたから、海がさほどおだやかでない事がわかった。
隣に立った彼女が何を考えていたのかはわからない。「こわいね、なんだか」わたしたちはサーチライトに照らされた波の荒い海を目の前にして黙り込み、私はこれから来る障壁とその困難を思った。今となってしまえば随分軽々と飛び越えた壁ではあったが、当時の私に自信があるとは言えず、自信だとか不安だとかを論じる以前の、もっと漠然としたところにいた。未来を展望する事が時に恐ろしいという事実に、私はかすかに喉を震わせて夜を睨んだまま、もう帰ろうという友人の声を待った。




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