夕暮塔...夕暮

 

 

堕ちてゆくのはわたしかあなたか - 2002年02月14日(木)

春迫る 今宵三日月は猫の爪 堕ちてゆくのはわたしかあなたか





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夕暮れを背にして都心へ向かう。駅のポスターで何度目にか思い出す、そうだ、上野でやっている展示を見たいと思っていたのに。当分やっているとたかを括ってしまって、いつも見逃す。気を付けなければ。一時期はしょっちゅう映画や美術展へ出掛けていたのに、最近の私はやや怠慢だ。
門の近くに座っている猫を撫でて抱き上げる。ふわふわと暖かい。「猫、好きだったっけ」不思議そうに問われる、「兎や犬が好きなんじゃなかった?」好きよ、猫も犬も兎も。どれも飼ったことがあるし、犬と兔は今も実家にいる。…だけど猫を最後に飼ったのは何年前のことだろう。最後にいた猫、拾ってきた三毛猫で性格のいいかわいい子だったけれど、ある日ふっといなくなった。今はもう無い裏口の木戸の隙間をすり抜けて出て行く姿を、私は今も鮮明に記憶している。猫はいつもそうだ。約束したようにいなくなる。子どもの私は理由を知っていたけれど、だからといって割り切れるわけではなかった。最後に見た後ろ姿、決して薄れないあの画像。思い出すだけで寂しい。だから忘れられないのだ。
すっかり暗い帰り道を歩く。今日の三日月はあまりに細い。


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