Nさんが現れる。抱いているのか抱かれているのか分からない半身の融け合ったやたら親密な夢だった。その間にTは何処にいたのだろう。夢の中で鉢合わせたことが一度とてない。眠りながら見ているものに意味を求めるのも馬鹿げたことだが、しかし。 光に包まれた眩い列車に、知己が続々と乗り込んで行く。僕は乗り込むことなく、ここで手を振っている。見送ることには慣れている。それにしても、僕のいない世界のなんと眩しいことか。 『あんたは及川さんのことを愛してなかったと全部否定して女房に走っ て、その女房が自分を裏切ったら今度は、女房があんたのことを愛して なかったと全部否定する。あんたの人生は、いつもそうやって過去にあ ったことを消し去って成り立っているんだ。だからあんたは……いつも ひとりぼっちなんだよ』 早食いは病気、という文を目にした。端的な表現であり、なおかつ与えられる病名のないことは自明だが、まさに当を得ていると思った。ひとつところに拘束されるのが嫌で、息つく暇なく一気呵成に平らげる自分をさもしいと思う。待つことができない。味わって食べる精神的な余地がない。 「あなたは完璧に仕事をこなす。聞かれれば何でも答えられるし、一人で何でもやろうとして、それができてしまう」けれど、それでは同僚や後輩が育たないのだそうだ。この敵愾心は。この苛立ちは。Sさんに愚痴をこぼしながら、もう一人の俯瞰している自分は愚痴をこぼしている僕をせせら笑っていた。予め見下してかかってしまえれば楽だろうに。それを誠実でないと思うほど僕はまだ若いらしい。間が持たなくなって仕事の話を始めた自分にまた苛立った。これだから冬は。 ----------------------------------------------------------- 渋谷HOMEでひょうたん 「LessThanTV presents『another channel#18』」 NTTインターコミュニケーション・センターで 「ライト・[イン]サイト -拡張する光、変容する知覚」 エプサイトで「森永 純写真展『瞬〜揺』」 山本現代で「西尾康之“DROWN”」 資生堂ギャラリーで「佐々木加奈子展『オキナワ アーク』」 ヴァニラ画廊で「デパートメントHの全貌展 ~ゴッホ今泉とアンダーグラウンドパーティーの表現者たち~」 プンクトゥムで「倉田精二 都市の造景」 東京国立近代美術館で「高梨豊 光のフィールドノート」 「コラージュ -切断と再構築による創造」 「特別公開 横山大観《生々流転》」 ----------------------------------------------------------- 柴田よしき「聖なる黒夜」 宮部みゆき「龍は眠る」 種田山頭火「山頭火句集」 読了。
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