『人生、一度きりよ』
一覧|すこし前|ちょっと後
金曜日のこと。
私は家人の友人と家人と3人で飲んでいた。 家人の友人と別れ、私と家人は電車に乗って帰宅の途についた。 終電の1本前だった。 途中で1つだけ席が空き、私が座った。 酔っているせいかとても眠かった。 私はすぐに眠りに落ちた。 途中、家人が私の頭をつついた。 「降りるよ」 寝ぼけ眼で私があたりを見回すと、まだ降りる駅ではない。 勘違いしているようだ。 「ここ、まだ××だよ」 私が教えると、家人はうなずいた。 私はまた、目を閉じた。 アナウンスが聴こえる。次が降りる駅だ。 目を開き、家人を探す。いない。 立ち上がる、あたりを見回す。やはりいない。 とりあえず、電車を降りた。ホームにも見当たらない。 携帯電話に電話してみる。留守番電話になっている。 家人はどこに消えたのだろう? 席を見つけて寝入ってしまったのだろうか? でも、見える範囲に家人の姿はなかった。 他の車両に移った? でも何のために? 何度も後ろを振り返りながら、家に帰った。 やはりここにも家人の姿はない。 時間軸が捩れててしまったのだろうか。 それとも家人はもとからいなかったのだろうか? 気がおかしくなりそうだった。
10分後、家人がごきげんで帰ってきた。 「ど、どこにいたの?」 「んー? ××駅で降りてうんこしてたー」 「は?」 「降りるよ、って言ったでしょ?」 「は?」 「がまんできなくなっちゃってさー」
こうして私のSF体験は幕を閉じた。
|