『人生、一度きりよ』

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七倉 薫 /MAIL


2004年07月19日(月) 消えた家人

金曜日のこと。

私は家人の友人と家人と3人で飲んでいた。
家人の友人と別れ、私と家人は電車に乗って帰宅の途についた。
終電の1本前だった。
途中で1つだけ席が空き、私が座った。
酔っているせいかとても眠かった。
私はすぐに眠りに落ちた。
途中、家人が私の頭をつついた。
「降りるよ」
寝ぼけ眼で私があたりを見回すと、まだ降りる駅ではない。
勘違いしているようだ。
「ここ、まだ××だよ」
私が教えると、家人はうなずいた。
私はまた、目を閉じた。
アナウンスが聴こえる。次が降りる駅だ。
目を開き、家人を探す。いない。
立ち上がる、あたりを見回す。やはりいない。
とりあえず、電車を降りた。ホームにも見当たらない。
携帯電話に電話してみる。留守番電話になっている。
家人はどこに消えたのだろう?
席を見つけて寝入ってしまったのだろうか?
でも、見える範囲に家人の姿はなかった。
他の車両に移った? でも何のために?
何度も後ろを振り返りながら、家に帰った。
やはりここにも家人の姿はない。
時間軸が捩れててしまったのだろうか。
それとも家人はもとからいなかったのだろうか?
気がおかしくなりそうだった。

10分後、家人がごきげんで帰ってきた。
「ど、どこにいたの?」
「んー? ××駅で降りてうんこしてたー」
「は?」
「降りるよ、って言ったでしょ?」
「は?」
「がまんできなくなっちゃってさー」

こうして私のSF体験は幕を閉じた。


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