ア イ デ ン テ ィ テ ィ 。   by胡桃。
2003年09月14日(日)  小旅行。想い出の場所。郷愁。
この様子はPHOTOの方にも少々アップしてます。


台風の影響からか。風強し。天気快晴。

朝8時半に迎えに来てくれた彼の車に乗って。小旅行。

上山から月山を抜ける頃には天候も曇りだす。そして人生初の秋田入り。

海の見える道の駅で折り返して。霧の鳥海山を超えて。また山形へ戻る。

ひたすら日本海沿いの道を南下。

海に沈んでゆく夕日を観れそうで。ワクワクしてた。

そんな時。

『昔さー。山形の『由良荘』っていう旅館に泊まったことがあって』

ふと想い出して。言ってみた。

『海からすぐそばの旅館でさ。坂のてっぺんにあって。』

『そこから見えた夕日がすごい綺麗だったんだ』

『もう20年近く前の話だけどさ。アレどこだったんだろう』

地図を横目に運転してた彼がいった。

『この先『由良浜』っていうとこ通るよ。そこなんじゃん?』

『じゃあさ。そこに車停めて夕日観ようか』

彼の一言で私の『遠い記憶巡り』は始まった。

由良浜に差し掛かった頃。高台に見える旅館らしきものがあった。

入り口には『由良荘』の小さな看板が確かに在った。

彼がわざわざ細い坂道を上ってくれる。

広かったはずの記憶の中の坂道。こんなに狭かったんだ。

道は。旅館に入る寸前で通行止めになっていた。

既に廃館。近くで見るとすべてがボロボロになっていた。

水着のまま浮き輪を抱えてこの坂道を下りて。

帰りの坂道の途中で見た夕日が真っ赤だった。写真だって残ってる。


郷愁。郷愁。郷愁。

潰れてしまった旅館を見ていることは。途方もなく哀しかったけど。

沈む間際で雲に隠れてしまった夕日も哀しかったけれど。

想い出をたどれてよかった。

そのまま新潟に入って山を越えてまた米沢へ。

そして福島へと戻る。




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4県をまたぐ日帰りでは強行すぎる旅。

運転好きな彼と助手席で景色を眺めるのが好きな私。

途中ケンカもしたけど。楽しい旅だった。

ずっと運転。お疲れ様でした。

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おまけ。

翌朝。母に。『昨日由良荘に行ったよ。既に潰れちゃってた』と話すと。

『昔はすごい人気の旅館で。抽選で当たらないと泊まれなかったのよ』

と教えてくれた。

『夕日が綺麗だったんだよねー。坂道からの。覚えてる?』

と尋ねる母に。

『うん。覚えてる』


そう答えて。また。ちょっとだけ胸が詰まった。



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