私が育った家の庭には白いタンポポが咲いてました。 テラスと縁側に面した主庭は、花木や果樹が雑多に植えられて雑草が生え放題、春になるとオオイヌノフグリやホトケノザに混じって、白いタンポポがあちこちから咲き出しました。 小さい頃は当たり前のようにタンポポって白い花だと思っていたし、黄色いタンポポの存在を知ってからも、普通に白と黄色の二種類があるものだと思っていました。関東では白花タンポポはごく珍しいのだと知ったのは、随分大きくなってからのことです。 タンポポなんてわざわざ植えるようなものではないし、うちには関西や九州に親戚や知人もいないし、不思議なこともあるもんだな〜程度に思って、大して気にも留めないままでしたが… もう5,6年前になるのかな、知覧飛行隊を描いた映画が公開されましたよね。私はこの映画を観てませんが、公開に合わせて知覧関連のTV番組が多く放送されていて、そのひとつを何とはなしに観ていた時に気が付きました。 私の家が建てられた場所は、太平洋戦争時、飛行場だったってことに。
もしかしたら、いやきっと、飛行機の積み荷や機体のどこかに白花タンポポの綿毛がついたまま、遠く関東平野の外れにまでやって来たのかなあと。 戦後、滑走路は畑となり、碁盤目の道路ができて工場が建ち、周辺にちまちまと住宅が増えていき…と目まぐるしく変化していくなかで、ひとつの種が運良くうちの庭で生き残ったのかもしれないなと。
そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。 それよりちょっと愕然としたのは、あの場所が飛行場だったってことを知っていても、それまで全く思い出しもしなかったことです。 今の自分がいる場所が過去からずうっと繋がっていることを忘れて暮らしているということ。 無関係ではないのに、他所事だと感じている事実。
「夕凪の街 桜の国」を読んで、久しぶりに思い出しました。 うちのとこの飛行場は特攻隊の基地でもあったそうです。
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