翔くんのときどき日記

2004年11月01日(月) 新作執筆ちゅ

いちおう、新作の構想を練ってます。

そんな訳で、いつもどーりとりあえず最初だけちょろっと書いてみました。

しれっと公開してみます。


静かな獣は何を謳う(仮)


 つんざくような悲鳴で目を覚ました。
 肌が凍り付くように冷たい。ずたずたの毛布にくるまったまま、俺は軽く辺りを見回してみる。
 裏路地の片隅は暗く、人通りも全くと言っていいほどない。先程の悲鳴の主すらも見あたらなかった。
 この辺りではよくある事だ。気にすまい。
 心の内で呟くと、もういちど目を閉じる。しかし心地よい眠れが近いとは寸分も思えなかった。
 仕方なく伏せ気味であった顔を上げる。
 遠目にそれは映った。
 こちらへと真っ直ぐにかけてくる若い女性。その後ろを追ういかにもな男。この街ではありがちな風景だったけれど、俺は立ち上がって二人を見つめていた。
「助けてっ!」
 女性はここぞとばかりに叫ぶ。しかしぼろ毛布に包まれた俺の姿をみて、落胆の色を隠しきれずにいた。
 今の俺の姿はホームレス以外には見えないかっただろう。これでも彼らよりは多少、身だしなみにも気を使っているつもりだが、本人の意識と周りの認識が一致しているとは限らないのが現実と言うものだ。
 ホームレスが身を張って自分を助けてくれるとは彼女も思わないだろうし、実際助けるつもりなんて全く無かった。
「てめぇ。見てないでさっさといけ!」
 追いかけてきた男は怒鳴り声を俺を追い払おうとする。
 別に怖くはないが、下手に関わり合いになるなんてごめんだと思った。
 ぼろ毛布に包まれたまま歩き始める。
「あ……」
 女性が呆然とした顔で声を漏らしていた。ほんの少しの希望すら絶たれ、目の前の男への恐怖で体全体が崩れ震えていた。
 背を向けてこの場から立ち去る。
 その瞬間、背中からちりちりと奇妙な感覚が伝わって、最低に居心地が悪く感じた。
 腹が減ったから。誰にともなく呟くと、俺は振り返る。
 女性の目が、ほんの少しだけ開くが期待している様子は無かった。
 当然だ。俺は助けるつもりなんてない。
 ただ、腹が減ったからだ。
「なんだぁ!? お前、ホームレスの癖して俺とやろうっていうのか。ああ」
 見た目通りの粗暴な口調に辟易とする。
 その態度が相手にも伝わったのだろう。男は俺の毛布を襟元から掴もうとした。
 同時に鈍い音が響く。
 拳が男の胸に抉り込んでいた。恐らくあばらの一つや二つは砕けただろう。しかしそれくらいでなければ意味がなかった。
 毛布が今の衝撃で剥がれる。
 鋲のついた黒い服。少し破れ気味の黒いスリムパンツ。首筋にはベルト仕立てのチョーカー。それが今の俺の出で立ちだった。
 気にくわない。だけど変える事もない姿。
 こうしてさらされると少し機嫌が悪くなる。
 拳に力を入れた。もういちど男へと無言のままで突きつける。
「ひぃ……か、かんべんしてくれ。俺が悪かった!」
 さっきまでの威勢はどこにもなかった。
 完全に負けを認めた姿で、地面へとはいつくばっている。
 左手で男の頭を掴むと、力の限り握り締めた。
 ぎしぎしと軋みを上げる。
 腹が減ったから。
 もういちど呟くと俺は男の手を離す。男は完全に気を失ってそのまま地面へと転がっていた。
 女の方へと顔を向ける。
 一瞬、びくっと激しく震えていた。
「……平気か?」
 それでも俺が声をかけると、少し落ちついたのか、あ、と小さく喉元を震わせる。
「は、はい。あ、ありがとうございます!」
 深々と頭を下げた。
 滑稽だな、と声には出さずに呟く。
「礼はいらない。俺はただ」
 そのまま女へと手を伸ばした。しかし女はそれに気がつきもしなかっただろう。
 ぽぅ、と白く光る何かが俺の前に生まれていた。女はまるで意識を失ったかのように立ち尽くしている。
 その白い光を掴むと、すでに左手の中につかみ取っていたやや黒く濁った珠と合わせた。
「腹が減っていたから」
 誰に言うでもなく、俺は空を見上げた。
 雲なんてないけれど星は見えない。
 ちりちりと痛んでいた背中は、少しだけ和らいだ気がする。
 光をゆっくりと口に運んだ。
 苦くてまずい。
 こんな場所で得る心なんて、この程度だと言う事はわかっていた。食事はとったばかりで、これ以上必要はなかった。
 それでも満たされない腹具合に、思わず手を出してしまっただけだ。
 たぶん彼らはそのうち気がついて、今日の事は忘れてしまうだろう。俺の事なんて寸分も覚えていないはずだ。
 俺がいま喰らっているのは、心だから。激しい感情と記憶の塊。俺はそれを食べて生きている。
 だから俺の事を覚えている人はいない。
 俺の事、人の中に生きている心を喰らう獣の事なんて、誰も知らない。
 




……うーん。どうですか?

続きを読みたい方がいたら、ぽちっと拍手をお願いしますっ(笑)!




ではではー


Web拍手コメント
「ごめんそれ私じゃねえ(笑) 」
「Hさんの名誉のために言うと「そこまで年ではない」私はKさんの方です。」

うわっ。Kさんの方でしたかっ。Hさんすみませんっ。やっぱり日頃の行いが

っていうか、また「そこまで年ではない」いわれた!?
くっ。

うわーーん。どうせ年ですーーっ。


……っていうか、Kさんここみてたんですね。その方がびっくりです!


「完結お疲れさまでした。感想はまとめて後日に。@えんためでテンパってる××」

お名前は伏せさせていただきました。

ありがとうございますー。感想はお暇なときで十分ですので、えんためがんばってくださいね!!

獣は電撃向きに書くつもりなので、えんため用は別にかかないと。
かけるかなぁ……がんばらないと!

ではではーっ


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香澄 翔 [MAIL] [HOMEPAGE]


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