| 2006年02月08日(水) |
「六畳一間。幽霊付きっ」 |
と、いうのが新作のタイトルです。
……、いやそのタイトルはどうなのよ。と自分でも思わなくもない今日このごろ。
まぁ、でもそういう話でした(笑) 思い切りコメディでライトノベルですね。
と、言うわけで、すこーしだけ中身を晒してみます。 あ、興味ない方は読み飛ばしてくださいませ。
-------------------------------------------------------- 「六畳一間。幽霊つきっ」
見知らぬ少女が部屋の中心で浮かんでいた。 誠(せい)は声にならない叫びを上げて、いちど扉を閉めて表札を見やる。しかし206号室とかかれたその部屋は、確かに自分の借りた新しい部屋だった。 見間違いかもしれないと思い、恐る恐るもういちど扉を開けてみる。 六畳一間のちっぽけなぼろアパートの一室。その部屋の中には、まだ荷物も運び込まれておらず、がらんとした空間が広がっている。 その部屋の真ん中に少女は浮かんでいた。 腰までのびた長い黒髪が、真っ白なワンピースを引き立てている。くりんとした大きな瞳に、整った鼻先。艶やかな紅い唇は、微かな笑みを覗かせている。 すらりと伸びたカモシカのような細い手足。右手に銀色の、左手には金色のブレスレットを身につけており、よりいっそう彼女の可憐さを引き立てている。 どこか全体的に儚げな色彩を帯びて、触れれば消えてなくなりそうにも思えた。 そしてそれを示すかのように、彼女の足先は畳から十センチほど浮かんでいた。 「う、浮いてる!?」 誠は思わず声を漏らして、背を向けて逃げ出そうとしていた。 しかし慌てたせいか自分で自分の足を絡めてしまう。 転びそうになって部屋の壁に頭をぶつけ、 逆に部屋の中に入り込んでいた。 バタン。同時に音を立てて扉が締まる。部屋の中に、二人だけが取り残されていた。 さすがに少女も誠に気がついたらしい。真琴へと振り向いて、それから目を大きく開いて、慌てた様子で声を漏らした。 「ち、痴漢ですかっ」 唐突な少女の台詞に、思わず誠は咳き込んでしまう。 「ぶはっ。げほっげほっ」 「あ。だ、大丈夫ですか。でもほら、痴漢とかしようとするから、そういう目にあうんですよっ。悪い事したらいけませんっ」 少女はやや眉をつりあげて告げると、指先を一本たてて左右に振るう。 「だ、誰が痴漢だよっ。誰が」 誠は何とか息を整えながら、目の前の少女に向かって声を荒げる。しかし少女は誠の言う事がわからないとばかりに眉を寄せると、上げていた手を降ろして、その腕を組んでいた。 「え、違うんですか。突然部屋の中に入ってくるからてっきり。えーっと、じゃあ」 少女はしばらく首を傾けながら考え出すと、それからすぐにまた指を立てて誠へと向ける。 「あ、わかりました。訪問販売ですねっ。私に布団とか高値で売りつけちゃおうとか、そういう訳ですね。おっと、そうはいきませんよっ。なんたって、私はお金もってないですからね。あ、いっときますけど、ローンも組みませんよ。布団一つが十万円とか、絶対ありえませんからっ。買いませんよー。ええ」 また勝手に勘違いして話を膨らませていた。 もちろん誠は訪問販売員ではないし、ここはそもそも誠の部屋のはずだった。 誠の親は事情によりこの街から引っ越す事になった。しかし誠はまだ高校に入学してから時間がたっていないし、また親の引っ越し先も長くいるとは限らない。その為に誠は一人暮らしを始める事となり、今日はその引っ越しの当日であった。 だがその部屋の中には、見知らぬ少女が一人で浮かんでいる。そしてまるで自らがこの部屋の主のように振る舞っていた。少々反応がおかしくはあったが。 しかしそのおかげというべきか、少女が浮かんでいるという不思議への驚きがかなり薄れ、誠を冷静にさせていた。 「訪問販売でも宗教の勧誘でもないっつうの。だいたい、お前誰だよ。ここは俺の家だぞ、俺の家」 「ええええっ。そんな事ないですよ。ここは私の家ですよ。変な事言わないでください。はっ、さてはそんな事いって、何か私を騙そうっていうんですね。そうはいきませんよっ。ええっ、もうっ。私、しっかりしてますからね。騙されませんよーっ」 少女は言いながら、再び右手の人差し指を一本だけ立てて左右に振るう。たぶん意識してやっている訳ではなく、癖のようなものなのだろう。 「いや絶対ここは俺の部屋だっつうの。メゾンシャトル206号室。ほらっ、みろ。これが契約書だ」 鞄の中から契約書を取り出して、少女へと突きつける。 少女が何者なのかはわからなかったが、とにかくこの部屋から出ていってもらわなくていた事が頭の中から消え去っていた。 少女はきょとんとした顔をして、誠の持つ契約書を覗き込もうと近づいていた。その時、全く音がしなかった事実に気がついて、誠は少女が浮かんでいた事を思い出す。 「そ、そうだ。こいつはなんでか浮かんで」 急に恐ろしくなって、慌てて後に下がろうとする。 しかし誠の足は下がるどころか、絡まって前へと倒れかかっていた。 「わぁぁっ!?」 思わず情けない声を漏らして、少女の上へと覆い被さるような形になる。 しかし誠の身体は、全く抵抗感を感じない。そのまま大きく音を立てて、床へと倒れ込んでいた。 その誠の身体の上に、少女はそのまままっすぐに立っている。まるで誠の身体が触れる事はなかったかのように。 「わわわっ。や、やっぱり、ほんとは痴漢でしたかっ。だ、駄目ですよ。そんな事をすると天罰が下りますよ。いつも神様はみていますからっ。ああ、イエス様、マリア様っ。この私をお守りくださいっ」 少女は胸の前で十字を切ると、力の限り目を閉じていた。 目の前にはっきりと見えている。しかし誠は全く彼女に触れる事すら出来なかった。そして彼女は宙に浮かんでいる。 そうなれば、考えられる事はただ一つ。 「ゆ、幽霊!?」 思い切り叫びながら、なんとか後ずさろうとして手を動かした。 しかし驚きのあまりか、誠の身体はぜんぜんその場から動こうとしない。 「ええええっ。私、そんなのじゃありませんよ。失礼ですねっ。どこをどうみたらそうみえるんですかっ」 「ど、どこをどうみてもそうみえるっ。ゆ、幽霊じゃなかったら、い、いったいなんなんだよ」 ややどもりながらも、まだ何とか正気を保ったまま少女へと告げる。 「そんなの決まってるでしょう。私は」 少女は呟きながら人差し指を立てて、そのまま指先を振るう。それから唐突に動きを止めたかと思うと、伸ばした指を口元に当てた。 そのまましばらく誠を見つめる。まっすぐに向けられた瞳に、思わず顔を背けたくなる。 しかし誠はなぜだか彼女から目をそらす事が出来なかった。時間が止まってしまったかのように、唐突に沈黙が訪れた。 少女は困ったように眉を寄せて、もう一度首を肩の方へ倒す。 今までよりもずっと落ち着いた静かな声で、少女は誠へと訊ねかける。 「私は。誰なんでしょう」 少女のその呟きに、誠は思わず目を丸くして、言葉を失っていた。
--------------------------------------------------------
どーでしょう? 面白そうですか?(笑) ……なんかヒロインがちょっと微妙に結愛っぽいのが何ですが。。。
笑いあり、涙ありで、がんばってかいていきたいと思います。
ではではー
Web拍手コメント 「頑張ってください。応援しています。」
ありがとうございます。がんばります!
|