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| 即席珈琲エディクション/Instant coffee addiction...嶋紗雪 |
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2004年12月25日(土)
弟について
男性は、母親に似た女性を好きになるという
同様に、母親も息子を恋人のように愛し育てるという
私に息子はいないが、気持ちはわかる
姉である私にとって、弟は最も近い異性であり第二の恋人といえる存在だ
ほぼ毎日顔を合わせ挨拶し 言葉を交わし/笑いあい/喧嘩し/泣かし泣かされ
日常生活に不可欠な存在―――家族
自分を良く知り得る彼/彼を良く知り得る自分、と思い込んでいたに過ぎない
当たり前であるが故に…よく知ろうともしなかった
「存在している」ことが当然だったから/知識として蓄える必要がなかったから
彼の一挙一動を事細やかに記憶していなかった事を、喪って初めて悔やまれる
彼の呼ぶ声が聞こえない
彼の表情が読めない
彼の仕草が思い出せない
ただひとつ、記憶しているのは彼が私を呼ぶその一瞬だけ
「お姉ちゃん」 声変わりした低い声が言う
そこだけはいつも早口で、短くそう告げた
大きくなってもずっと変わらなかった私の呼び名
なのに、携帯のメモリーには「姉キ」と入力していたその生意気さ
親と喧嘩して部屋に篭もって泣いていた私を廊下からドア越しになぐさめてくれた
意外とイイ男になったと感じた時
奴の性格を表現するのは難しい
愛想の悪い奴だと思っていたが、参列した級友・友人たちの多さには驚いた
小学・中学・高校・大学まで同い年だけではなく、先輩後輩もかけつけてくれた
嬉しい予想外 彼の人望はかなりのものだ
それを失った彼らの哀しみは、はかりしれない
女の子まで泣かせて罪な奴
まだ成人式も迎えていない彼 事故後に仕上がったスーツは新品のまま
子供のままで逝ってしまった私の弟
好き勝手、気侭に……自分の思うがままに生きていた
実に、彼らしい人生だった
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