昼間、ノックの音が聞こえても、基本的に居留守を使うことにしている。 連絡も無しに訪ねてくる知人はいないので、大抵、セールスマンである。 新聞の勧誘が一番多い。 宅配便が届く予定があったりする日に、うっかり出てしまったときは、「インターネットで全紙読んでます」と応えると、大抵ドアを開けるまでも無く帰ってくれる。
今日は、なんかノックがしつこかったので、ちっ、居留守バレてんのか、と舌打ちしつつ、出てみたら、引越し業者だった。
「はい?」
「すみません、お隣に越してきた方の荷物を運んで来たんですが、鍵を失くされたらしいんですよー」
「はぁ」
「申し訳ありませんが、御宅のベランダ伝って、お隣に行かせていただけませんか?」
業者も、お隣さんも、物凄く困っているんだろうから、それくらいは構わないが、ベランダの鍵も閉まってないか? と、いうか、此処は五階だが、大丈夫なのか?引越し業者。 ベランダの手摺に乗って、隣のベランダに行ったはいいが、やはり戸は開いてない。 なにか器具でも持ってるかと思ったが、ひとしきりガタガタしただけで、また手摺を越えて戻ってきた。 鍵業者を呼ぶよりは、ベランダのガラスを割った方が安くつくだろうな、とは思ったが、流石に、そんなことは奨められなかった。
その後、お隣に越してきた夫妻が「御迷惑かけてすみません」と言いに来た。 笑って、「気にしないでください」と言ったのだが、夜になって、改めて引越の挨拶に来た。
「部屋には入れましたか?」
「ええ。なんとか」
失くした鍵を発見したか、管理会社から合鍵を借りたか、業者を呼んだかの何れかだろうが、そこまでは訊かなかった。 細長い箱と、何故か、封筒を受け取った。 箱には引越の御挨拶の定番のタオル、封筒の方には、近所のスーパーの商品券が入っていた。 特に、なにもしてないのに、えらく気を遣ってくれたらしい。
御近所づきあいというものが苦手で、現在のところ、それと無縁に暮らしているので、こういうことをされると困惑してしまう。
ランディの薬がなくなったので、代わりに病院に行った。 本人を診察しないと、この薬は出せない、と言われたが、ランディは来週金曜まで時間が取れないので、頼み込んで処方箋を書いて貰った。 返してもらったランディの診察券には『次回必ず診察』とでかく書いた紙が貼られていた。
出かけたついでに、久々に中華街へ。 まだ旧正月を祝っていた。
いつも通り、茶藝館行ってお茶飲んで、茶葉を買って歩いた。 なにも考えずに歩いていると、閉め切ったシャッターに破産を告知する貼り紙をしてあるレストランなんかがあった。 うーん、何処も大変だ。
昼食は、トルコ料理。 はじめて行った店だが、ランチは安い。飲み物つきで800円から。 料理人は、なかなか日本語の達者な初老のおじさんだった。 美味しかったし、また行こう。
両手に中国茶の茶葉持って、電車に揺られて最寄り駅に帰る。 いつも使ってる処方箋薬局に行ってみたらば、休みだった。 それから、わたしは、自宅から徒歩圏内にある薬局の殆ど全部に足を運んだ。
「あー……この薬は無いですねぇ。処方箋書いてくれた病院の近くの薬局だったらあるんでしょうけど……」
閉店間際に滑り込んだ薬局でも同じ応えだったが、
「明日、朝一番に揃えて、御自宅までお届けしますよ」
と言ってくれた。 今日中に間に合わないなら、明日の朝十時だろうが、夜八時だろうが同じなのだが、疲れ切っていたので、御言葉に甘えることにして、よろよろと帰った。
疲れた。
2003年02月03日(月) |
行ってきた。帰ってきた。 |
・航空会社に感謝(ひとつ前の日記参照)。
・お気に入りの中国茶数種類を小分けして、ジップロックに茶匙と共に密封し、それを更に一回り大きなジップロックに入れてぴっちりと封をしたものを、バッグに入れ忘れていた。
・実家には以前、わたしが送った烏龍茶がまだあったので、死なずに済んだ。
・おた画伯に電話したら、何故か、めちゃくちゃうれしそうな声で、「なーなー、やっぱ、あれ?『実家に帰らせていただきます』ってあれ?」と言われた。
・実家に帰っていたのは間違い無いが、ニュアンスは違う。
・入院中の父は、やはりやつれて見えた。
・痛々しく思う間も無く、病院の屋上へと誘われ、なんだろうと思っていると、病院のお仕着せのパジャマにガウン羽織って、物凄い勢いで歩きはじめた。運動不足なのだそうな。
・一緒に歩こうとすると、「おまえなんかについて来られるペースではない」と言う。
・嫌になるほど元気じゃないか。
・……もしや、わたし、泡喰って、空飛んで来なくてもよかった?
・途端に、気分を一新し、関西圏在住の皆様に電話しまくりオフの算段。
・わたしは自動車の運転免許は無く、原付の免許も失効してしまっている。そして、病院の場所は非常に不便な処なので、チャリンコで走る。
・なのに、故郷は何故か、数十年ぶりの寒波で、雪なんか積もりやがる。
・旧友アリアに、『寒波を運んで来た』と言われる。筋金入りの雨女にそんなこと言われる日が来るとは思わなかった。と、言うより、お前も同じ飛行機で飛んできたではないか。
・暇つぶしに持ってきた『ネクスト・キング』に母がはまる。
・父が愚痴る。
・父が説教する。
・聞く。
・早寝早起き、ネット無し、適度な運動、低カロリーな食事、空気は綺麗。なんて健康的な毎日。
・これではいかん。
・関西圏のネット友呼びつけてオフ会。
・久々に、酒飲んでアホになる。
・二次会はカラオケ。
・ああ、楽しかった。
・父の退院はもう少し先らしいが、無駄に元気そうなので、とっとと帰ることにする。
・帰る間際、母に、『お父さんによろしく。今は小康状態みたいだけど、悪くなるようなら何時でも電話して。お母さんも身体に気をつけて……』等々、くだくだしく挨拶しようとすると、母は言った。
「キャラウェイって、なにをプレゼントすると喜ぶんだっけ?」
・「剣と鎧とドレス」と応えつつ、こりゃ父は大丈夫だな、と根拠も無く思い、かつ、ゲーマーのDNAは母から受け継いだのだと確信した。
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