初めての芸術座でした。 とにかく、いつも見てる舞台とは毛色も客層も違うということを覚悟して…行ったんですが、思ったほど毛色も客層も違いはなかったです。すごくホッとしました。
ストーリーは…かつて小樽で暮らしていた仲間が35年ぶりに再会して、昔を懐かしむ…端折ってしまえばこういう話でした。<端折りすぎ
かつてのマドンナに宮本信子さん、その元恋人で幽霊が鈴木綜馬さん、綜馬さんの若い奥様に高嶺ふぶきさん、宮本さんや綜馬さんの同級生が尾藤イサオさん、松澤一之さん、坂本あきらさん、若松武史さん、『十三番地』(ダンスホール)のホステスに南風洋子さん、その弟で宮本さんの元旦那さまに近藤正臣さん…という豪華な顔ぶれでした。
いきなり、綜馬さんが学生服姿で出てきた時は心の中で『ひッ!』なんて悲鳴をあげてましたが・・・尾藤イサオさんのリーゼント姿に笑い、宮本さんの…セーラー服姿を目の当たりにした時は………正視できなくて…<(_ _)>…綜馬さんばかり観てました。
しかし、『港町十三番地』と聞いても、母に言われるまで気づかなかったのに、一緒に歌えるってどういうことなんだと思ったり。(-_-; ミュージカルではないけれど、随分、音楽的に美味しい舞台でした。 初っ端から『シング・シング・シング』で盛りあがり、『港町十三番地』も年配の人とかは嬉しそうにしてました。 それに、『恋人よ、我に帰れ』が聴けるとは思ってもみなかったです。ちょっとした思い入れのある曲なので…プログラムで見つけた時は小躍りしたいくらい嬉しかったです。…綜馬さんが歌うと信じて疑わなかったから。(^^;<ちょこっと歌ってましたけどね。 でも、なんと言っても生『明日のジョー』! まさか、こんなところで聴けるとは…!(笑) 本多俊之さんのサックスの音も好きなので、本多さんのオリジナル曲も聴けて嬉しかったです。
本当に、綜馬さんと本多さんの音楽…ってだけで観に行ったので、全然まったくさっぱり期待はしてなかったのですが、楽しかったです。 婆ァ向けの懐古趣味の浪花節…と思ってたなんてことは口が裂けても言えません。 思いきり笑って、思いきり泣いて…やはり、芝居というものはこうでなくては…! と思わせてくれました。まさか、本多さんも役者として出演してるとは思わなかったですけどね! 芸達者な人たちばかりだし、息もぴったりで演技に余裕もあるし…いい舞台でした。
途中、綜馬さんは"素"の状態で、お客さまと一緒に笑っていた気がする! それでも、ピアノを弾きだす時には、口元は笑ったままでも、眼は怖いくらいに真剣になっていて…そういうところが好きで、やっぱりかっこいいと思うのです。 (ピアノに向かってる時にはお客さまには殆ど背を向けてるんですけど、顔がピアノに映っていて…他の人をあまり観ないで、そんなところばかり見てました)
思いきり、やられた…と思ったのは高嶺さん! 最初、綜馬さんの奥様が高嶺さんだとは全然気づきませんでした。 まさか、あんな地味な形して現れるとは思っていなかったんで…。(^^; ゴージャスな美女というイメージがあったんで、ぜ…全然、印象違いました。 しかし、ビールケースを担いで運ぶ姿に惚れました(笑)。
あと、カーテンコールでの御挨拶の時に近藤正臣さんが『昔は二枚目だったのに…』と言っていた姿が忘れられません。 確かに…昔は、気難しげな役が多かったような…。 神津恭介やってた時が一番好きでした。 その時に『この役の中で一番好きな台詞があります。〜『昔は大きくなったら何になろうかってそればっかり考えてた。…今でも、何になろうかってそればっかり考えてる』〜自分もそうでありたい』ってなことを言ってらしたのが、印象深かったです。 私も、日々なんとなく生きて、何も考えずに、ただ流されてるだけの海月のような人生より、そう生きたい…そうであればいいと思います。 何かになりたいってのは思わないんですけどね、いつも、確固たる自分でいたいとは思います。
毎年、3月〜4月は余裕のないことが多いから…と千秋楽しかチケットを取らなかったのが悔やまれます。 綜馬さんの涙も見ちゃいましたしね〜。(*^^*) 随分、美味しいことの多い舞台でした。 やはり、食わず嫌いはよくないですね。 (とはいえ、嫌いだから食わないこともあるんです)
千秋楽公演の『風と共に去りぬ』…ちょうどGWにはいってくれたので、平日でも観に行くことができました。 本当は、地元でやるにも関わらず、観に行かないつもりでしたが、母が行くというので、そのお供で…。(^。^)>
で、初演の時とどう違うかといえば…
家のミニチュアがなくなってた…。(;_;) ところどころ、端折られていた。<名古屋だから…?それとも、演出で…?
とにかく、『なんであんな無茶なキャスティングをしたんだろう…』って考えずにはいられませんでした。はっきり言って…
『なんでアシュレーをあんな若造(笑)にやらせるの!』 いや、だって…アシュレーつったら、スカーレットの『憧れの人』なのに…石井さんじゃあ若すぎます!真央さまの『憧れの人』ですよ!? 物語に説得力がなさ過ぎ…(-_-; 今井さんのアシュレーが今となっては懐かしいです。
バトラーに関しては、初演で観たのがインパクトの強いあの方だったので、いい噂は聞いてなかったんですが…噂ほど酷いバトラーでもなかったと思います。 ただ、真央さまが気に入らなかったのは、旦那様と演技タイプが似ているから…? 私は…祐一郎さんよりも今井さんの方がよかったと思うんですけどね。 ただ、初演がインパクトの強いあの方で、それを想定して書かれた脚本だっただけにどうしてもつらいものがありますね。再演の時に直すといっても、骨子が既にできあがっているものでは直す箇所も限界があると思うし…。 あと、アトランタからの脱出の場面では、乱闘シーンで、一生懸命足を振り上げてる姿が…泣けました(笑)。 でもやっぱり、今井さんは押し出しの弱いところがあるからそれで損をしてる! それでも『掌』を聴いた時には『やっぱり、今井ヴァルジャンも観に行こうかな…』などという気にさせられました。もう、7〜8月はいっぱいいっぱいなので、行くのなら、9月かな…?(いや、本当は9月は行かないつもりだったんだけどな…)(^^;
スカーレットに関しては、あまり言うことなんてないでしょうね。 …というより、このミュージカル自体が真央さまの為に書かれたものだから、何を言ったとしても無駄になる気がします。 ただ、あの歳であの声をキープしてるのはすごいけど、もう少し時の流れを感じさせてくれる音程で歌っていってほしかった。 でも、…今まで、どうしてもスカーレットが好きになれなかった理由というのがわかりました。それは…
いつもうちで同じような性格を見ているから(笑)
姉の性格にそっくりです。長女で甘やかされて毒も棘も撒き散らしながら生きているくせに、それでもちゃっかりと美味しいところをさらっていくところとか、ピンクの服を着てるくせに、『落ちついた服装にしてみた』って平気で言うところとか、自分が世の中の中心でなくては気がすまないところとか…同じですとも!(T^T) だから、わざわざ劇場まで観に行きたくはなかった…ような気がします。
そんなこんなな『風と共に去りぬ』でしたが。これだけは言いたいことが…! ひずるさん、ダイエットされたんですね…。(^^;;; 顎のあたりが以前よりすっきりされてたんで、なんだかホッとしました。
それから、カーテンコールの時にダブルキャストだった岡幸二郎さんが登場しましたが…人の意表をつくのが大好きな方だけあって、『ジャガイモ抱えた姿』での登場でした。てっきり、出てくる時は茶色のスーツだと思ってたんですが…。
ただ、成長というものは感じられない舞台だったんで、どうも面白味に欠ける舞台でした。やっぱり、私はこの演出家との相性は悪いです。 必然性のない曲が入れられてたり、アンサンブルは動く背景扱いされてたり、だから、日本のオリジナル・ミュージカルは馬鹿にされるんでしょうね、と思わずにはいられない。どうしても…! そして、今度は私にキャスティングさせてくれ〜〜ッ!…って言ってみたり。
美輪さんの美の字は『美学』の美〜!
全体の感想はこれに尽きました!(笑) すごいこだわりの舞台でした。 本当にいい物を観たという感想でいっぱいです。
演出・美術・音楽・衣装…総て、美輪明宏さんというのを見た時に小さな溜息をついてしまったことは、今となっては秘密ですが。
役者が演出家を兼ねる時は大抵マニアックになりすぎて、観ていて辛いことが多いのですが…マニアックになりすぎず、かといって矜持を置き去りにしたわけでもない『本物』の舞台を観ることができました。
日本の演劇界…このくらいのレベルを基準としてほしいものですね。
ご自身が新聞のインタビューの中で自信たっぷりに語ってらしただけはあります。 確かに、これほどいいものを見せて貰えるのなら、積極的に劇場に通うようになるのもわかります。ストレートプレイはあまり観ないというか…ミュージカルの方を優先してしまう私でも、また行きたいな〜(^^)と思える舞台でした。
ただし、明智君は別の人を希望(笑)。 高嶋兄ィ…(T^T)ルキーニの初演の頃を思い出したよ。 初演の時は××だったもんね…。 せっかく、美輪さんと並んでも見劣りしないキャラクターなんだから、もっと明智君になりきってほしかった。徳川家康とあまり差がないんでがっかり…。 明智君は知的であってほしいのに、なんか笑い方が下品(笑)。 私の中の明智小五郎像は天知茂さん…某2時間ドラマで最も心を熱くして見てました。(///)…なんで、どうしても凝り固まったイメージというのはあるんですが、どうしても『高嶋兄ィ…もっと頑張ろうよ』と、思わずにはいられなかったです。 美輪さんが円熟しきっているだけに粗が目立つのですが、これは演技力というよりは、役に対するアプローチとセンスの問題だと思いました。 はっきり言えば、役者としては不器用とも言えるのでは…。(^^; もっと早くに才能豊かな演出家と出会えればよかったんでしょうか…?
まあ、高嶋兄ィに限ったことでなく、演技の上手い人とそうでない人の落差は激しかったです。 雨宮さんと早苗さん役の人は『美しい』と散々言われている筈なのに、ちっとも美しく見えない…(ーー; 早苗さん役の方は役者さんにしては薄めの顔なので、どうもインパクトに欠けるというか…立ち居振舞いがお嬢様役にしてはぞんざいだったとか…、登場してすぐのシーンは可愛さを強調しようとしすぎて、わざとらしくって白けた雰囲気になってしまっていたとか。ここの場面なんて、もっと普通にしていたほうが可愛かったんじゃないかと…思うんですけど…。 逆に雨宮さん役の方は顔が濃すぎて…客席の中程より少し後ろの席だったのですが、こんな席でもくっきりはっきり!(笑) 一緒に行った子は○イドーのCMの石原裕次郎の若い頃を思い浮かべてしまい、雨宮さんが出る度に、頭の中をあの歌が駆け巡っていたそう。(^▽^) 演技も顔と同じで濃ゆかったデス。
ただ、下手なりにどの人も『これから』のことを考えると面白そうな人ばかりなので、美輪さんの審美眼はいかほどのものかを窺い知ることができます。 でも、その人たちもいい演出家と仕事ができなければ、成長と脱皮は無理でしょうね。…美輪さん、温かく、厳しく(笑)、育ててあげてください。
しかし、出演者よりも私の心をがっちりと掴んでしまったのは舞台美術! 客席からはあまり見えないのに…絨毯もいい物を使ってらっしゃいましたし、とある場面の椅子などはさり気なく使われているのに、多分1脚、3〜4万円のものですよねぇ…。 (こういうものの値段を出すのもなんだかいやらしいかな…f(^^;)
舞台奥や隅々まで本当に細部に至るまで、観客を惹きつけてやまない美術でした。 学芸会で出てきそうな書き割りなんてどこにもありません。ああ、商業主義だけのチケットはバカ高いくせに、ケチケチ舞台装置の○○に見習ってほしいです!
衣装もゴージャスで、緑川夫人という役において、いつもの美輪さんよりも大分、シックな印象でしたが…なんといっても髪の毛が『黒』!(苦笑)…エレガントなラインで、立ち姿がお美しかったです。 動きがすごく優雅で滑らかで…TVなどで見るほどには毒々しさがなかったです(笑)。 着物の早変わりなどは本当にあっという間に変わってるんで、驚きました。 『悪の華』の時のあのスピードはなんだったんだ!…って思うくらいには比べものにならない早さでした。 …とはいえ、『悪の華』は着物から着物、『黒蜥蜴』は着物から洋服…またはその逆なので、簡便さもまた違ってくるのでしょうけど。 それから、ちゃんと衣装を替えるたびに指輪やアクセサリーも替えてらっしゃいました。ここにも美輪さんのこだわりが…。 宝石スッキ〜としてはこういうところも嬉しいですねェ。 あれは果たして本物なのか、それともフェイクなのかが気になりますが…やっぱりそれを舞台を観てる時でない時に追求するのは野暮なんでしょうね。
初めての生美輪さんでしたが、はまる人の気持ちがよくわかりました。 TVとかで観てても、底知れない恐ろしい人だと思ってましたが…やはり、この人は怪物でした。すごく、存在感が大きかった。 大して盛り上がっていたとも思えなかったのですが、最後はやはり、スタンディングオべーションで。 尚且つ、(私は気づいてなかったのですが)拝んでいた(-人-)人もいたそうです。 舞台のもつパワーってすごいですね。 ただ、3幕構成はいいけど、15分の休憩を2回挿んだとはいえ、18時半開演で22時半終了ってのは…ちょこっときつかったデス。 仕事帰りで疲れてたのもあって、3幕目のあまり上手くない人たちの掛合いの場面でちょこっと寝てしまいました。(。_。; で、でも、そこの場面は冗長だったし、削ってもさして支障はなかったかも…。 (肝心のものはしっかり観てきましたから)
今度は、三島由紀夫脚本の別の舞台を観たいです。 (構成も絶妙でしたから、もう少し、小説以外のこの人の世界を見てみたい気がするのです。)
※ ふと、気になったのですが、今までいろいろな方が明智さんをやってらっしゃるのですが…あまり定着してないということは美輪さんはどの明智さんにも満足はしていないのでしょうか? 嗚呼、聞けるものならご本人に聞いてみたいですね…。
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