夕暮塔...夕暮

 

 

「私の事好き?」 - 2001年11月29日(木)

私の大切な人は、私の事好きですかと尋ねると「普通」と答えて下さいます。…わかってても、時々切なくて本気で泣きそうになる。もう、ばか、ひどい。

暗くなってから、ベーグルを買いに出た。繁華街の駅ビルが目当てなので、全くの無防備な恰好というわけにもいかないから、ベースメイクはごく薄く、マスカラはばっちりで。これはもう趣味みたいなものだと思う。適当に済ませようと思ってもいつの間にか熱中している。ローズクオーツなどが賑やかにぶら下がった、バロックパールのイアリング。アンティークショップで一目惚れして購入したのに一度もしていなかったのだけど、何となく気分で。防寒にラベンダーのパシュミナをマフラー代わりに巻いて自転車に乗る。まあこれで一応の恰好はつくだろう、という路線。
フロア内の向かい合わせに、ベーグル専門店と大きなベーカリー。双方ともに色んな種類のが置いてあるけど、私の好みには今一つ合わないみたいだ。あーあと思う。通い先の駅の側にあるあのパン屋さんのものの方が数倍好みだ。やわらかいソフトベーグルなんて、つまらない。あのどっしりとした感じがなければ。
家に帰って早速焼いてみる。やっぱり重量感のあるものの方がおいしい。
何だか当分続きそうなこの嗜好的流行。


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夢の嵐の - 2001年11月28日(水)

凪を待つ あなたにはきっとわかるまい 夢の嵐の悩ましき熱




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クリスマスツリーを模した荒っぽい電飾の頂点に、ベツレヘムの星。既に葉を落とした柑橘系の樹にあの大きすぎる電球は、残念ながらあまり似合っていないと思う。駅から自宅へ向かう道の街路樹を繋ぐ小さな電飾の波、あの方がずっと美しい。この季節には母校の夜の綺麗だったことを思う。ツリーの点灯式、さざめく無数の蝋燭の灯り。明かりがついた瞬間一斉に歌い出す聖歌隊の、よく通る声。最後に見た時の時計塔の真上の三日月は、着飾った女性の爪先のようにきりりと細かった。


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金の影揺れ - 2001年11月27日(火)

窓の外 金の影揺れ 昼の月 佇む私も 今ここになく



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快晴。銀杏の大木が重そうな程の葉をそっと揺らしている。晩秋の眩しさの中で霞んでいたけれど、その隣にはそっと真昼の半月が寄り添っていた。見とれている私は、まさに心ここにあらず。


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怖いとあなたは言うけれど - 2001年11月26日(月)

傷つくのが 怖いとあなたは言うけれど 怯えて失う方が切ない



痛みには いつかは慣れると たやすげに 口にできるまでどれだけかかるの




胸の内 そっと謝る わたしには 禁忌破るだけの 恋も勇気も





…………













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古都を旅する - 2001年11月25日(日)

紅の 古都を旅する君は今 昔の恋を 思うことだろう



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金曜から発熱。快晴の連休が療養で過ぎてしまった。そういえばこの間も熱を出していた気がする。余程管理がなっていないのだ。反省。

さて、しばらくの一人暮らしが始まった。
京都はさぞ美しい時期だろう。羨ましさ半分でお土産を尋ねるメールを出してみる。「コラーゲン入りあぶら取り紙」……ああ、そう……。



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別れの曲 - 2001年11月23日(金)

生後三ヶ月の赤ちゃんを抱っこさせて貰う。暖かくてやわらかい、そっと扱わないと壊してしまいそうだ。眠たくてぐずっているのを、鼻歌を歌いながらあやしていると、そのうちに眠ってしまった。子守歌は歌えない気がして、「別れの曲」。寂しいメロディだけれどとても綺麗だと思う。携帯電話の着信音も、この曲からずっと変えていない。
弟がうんと小さかった頃を思い出す。いつもこぼれんばかりの笑顔で、黄色がよく似合った。陽に当たった銀杏の葉のような色。笑うとそこから一気に世界中が花で満ちるような気持ちになった。一体どういう因果なのだろう。


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噛みつけばきっと - 2001年11月21日(水)

乾土にて 喉をうるおす一滴の 水の如くと 父は名付けし



月よりも 白くやわらかな 喉ぶえに 噛みつけばきっと 甘いと知ってた  




…………





 


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奈落はこの身の内にありしか - 2001年11月20日(火)

春を謳い 肌のかげりも知らぬ間に 奈落はこの身の内にありしか




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今日はbackstreet boysのコンサートへ。席は後ろの方で米粒みたいにしか見えなかったけど、それでも本当に楽しかった。生で聴いてしまうと、CDでは物足りなくなる。これはいいことなのだろうか。どちらかというと弊害か。何にしても、また日本に来てくれるといい。日本で私がおそらく1番に好きなアーティストは、現在活動休止中なのだ。濁りのないのびやかな美しい声、歌う為に生まれた人間の。あの声をもう一度生で聴きたい。


そういえば研究が進んでいない。多忙に紛らわされている事が多いが、ふと思い出すと一気に血が下がる思いだ。必要以上に急かされているのはわかっているけど、それでもやらないわけにはいかないのに。ああもう道よ開け。違う、私が開くほか無いのだった。



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春の奈落へ - 2001年11月19日(月)

しかと今 指絡め合い 堕ちゆかん 世に一度きりの 春の奈落へ



……………





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誰が鉛を飲んだのか - 2001年11月18日(日)

誰が鉛を飲んだのか。そんな風に思う事があると告げたら、あなたはきっと嗤うんだろう。自分以外の誰がと、そう言ってくれるなら私は本当の意味で救われるに違いない。嘘を以て愛を証明することが時に陳腐でない事を、最初に教えたのはあなただ。



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洗い髪のまま外に出た。流星群は美しかった。私の住んでいるあたりは残念ながら雲と外灯が多くてそう沢山は見えなかったけれど、尾をくっきりと引く程に大きな流星を、私はこれまで見たことがあっただろうか。天体現象が人の心を動かす。とても簡単なようなのに不思議なこと。






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凪ぐように - 2001年11月17日(土)

いつの日も 誰かの心が凪ぐように そう願うことの 愚かさを知り


あなたのこと 思えば風が吹き抜ける つまらぬ女に したのはあなた



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久々に朝までコースで遊んだ。年下の男の子が、最近さっぱり飲めなくなったと言う。実際ちっともお酒が進んでいない。なんて不甲斐ない、なってないわと冗談っぽく叱咤してみるが、実は結構本気だ。でもそんな事言いながら自分は二軒目のテーブルで少し寝てしまった。ごめんね。遊び疲れた未明の空には雲一つなく、ひんやりとした空気が肌を包んだ。


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プレジール - 2001年11月16日(金)

"プレジール〝 喜びの名を 捧げたし 我が最良の 今日という日に

 
失いし ものなど1つもないだろう 幾ばくの恋 幾ばくの夢




…………




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散る花を - 2001年11月14日(水)

春浅く 薄暗がりに 散る花を 躊躇せず踏む あなたを憎もう



…………




もう振り向きもしない、たとえ隣にいても目線をくれる事もないあなたの後ろを、それでも呆然とついていく。日暮れ、舗装されたばかりのアスファルトに、白い花弁が点々と散っている。美しいと思う。わたしの中に何かを賛美する部分が残っていたことを、あなたは知らないだろう。きっと知らないままだろう。





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今朝はもう、死ぬかと思った。やってはいけない間違いをしてしまった。消毒液に浸かったコンタクトレンズを、あろうことか保存液で洗うという行程を抜かして、即、目に入れてしまった。昨晩、一本で洗浄も保存もOK、というタイプの洗浄液で洗ったつもりが、実は消毒と保存が別々のタイプ(の、消毒液)で洗って漬けていたらしい。確認したつもりでいたのにな、ああ、もう。
装着した瞬間、痛いというより「熱い」という感覚が左目を襲ったので、すぐに私は自分の間違いに気付いた。しかし、時既に遅し…。それでもどうしても早く家を出ねばならない日だ。遅刻するわけにはいかない。水で洗って目薬をばしばし差して、眼鏡で出る。やばい程痛い。自転車に乗ると向かい風が痛くて目が開かない。切ない…。
今も痛くて目が真っ赤。片目だけアルビノの兎のよう。まあでも、眼科のDr.は「今回は表面がべろっと剥がれたわけではないので、充血がひいたらコンタクトしていいですよ」とおっしゃっていたので、とりあえず安心…。


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咲き急ぐ - 2001年11月13日(火)

咲き急ぐ 君を誰しも 責められぬ 時は短し 思うままゆけ



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椿油を買って来た。まずはお風呂でマッサージしてからシャンプーした後、ゆっくり湯船に浸かりながらオイルパックしよう。その間に顔もパックして。こういう些細な愉しみが点在している事を考えると、女っていいなと思う。ああ、最近は女ばかりでもないのかな、こういうことは。





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こころ揺らせる - 2001年11月11日(日)

時に泣き 煩がられても ああ君の こころ揺らせる 人でありたい



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君の背を押す - 2001年11月10日(土)

断崖で 君の背を押す 悲しみの 底知れぬ程の 深さを思う


君の背を 押す悲しみは 消せないが 手を離さずに ここにいるから



…………



いつか飛び降りる日が来る事を思って屋上を探す、そんな日があなたに二度と来なければいい。崖に立つあなたの片手を握る事を許してくれたなら、命の底を見下ろすその後ろに、私はじっと佇む。あなたに最期の場所を探させる、悲しみを癒せない自分を憎む事はすまい。けれど私は諦めない。冥い目をしたあなたを、決して諦めない。



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日本橋で草月のいけばな展を見てきた。睡眠不足でかなり疲れていたので、途中下車をやめて、そのまま帰って眠ってしまおうかという誘惑にかられた。土曜のデパートは人が多くて疲れる。しかし私の先生の作品が今日で展示終了なのだ。どうしても見たい、そう思い直して会場に辿り着いた。
デパートのエントランスホールの大きな作品は前回の方が好みだったな、と思いながら入場する。傾向がやはり前と違うようだ。時節柄もあるのだろう、針金や電飾を使った作品が少なく、代わりに枯れものがよく用いられている。草月は本当にいけばなというよりは現代アートだ。鮮烈で感覚的なものが多い。氷柳の鳥篭、冠のように巻き付いた白いイバラ。じわりと涙が滲んだ。


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口をひらけば - 2001年11月09日(金)

ひとことも 交わさず暗い坂下る 口をひらけば さよならになる



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傷付けないために傷を負う事を、美しいとは思わない。けれどもっと幼かった頃には、そんな風にしか考えられなかった時期もあった。研ぎ澄まされた両刃の剣をしまう鞘も持たず、かといってそれを振り回す程愚かでもなくて。誰の血も見たくない、そう願う事のエゴイズムから目を背け続けた。










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この混沌の年に生き - 2001年11月07日(水)

見ぬ間にも 君が変わると思い知る 夜ぞ悔しき 嵐雲近し


よくぞ今 この混沌の年に生き それでも恋を 見失わずや




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ミステリーのドラマを見て、ぼろぼろ泣いてしまった。涙ぐむ、とかそういうレベルではなく、頬を伝ってはたはたと落涙する。
浅田次郎が考えたのかと思う位切ないオチがついていて、すっかりツボに入ったらしい。ああもう、やられた。

今日はもうこれで眠ってしまいたいけれど、そうはいかないのが辛いところ…。


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会いたいと - 2001年11月06日(火)


会いたいと 伝えて「そう」と返されて 受話器の向こうで 笑む気配する




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ああお願いだから、お願いだから会いたいと言ってくれないだろうか。
一生に一度でいいんだけど。

白鳥英美子の歌うアメイジング・グレイスの入ったCDを借りた。ゆっくりと透明な歌い方は、黒人霊歌のCDに入っていたのともシャルロット・チャーチのとも違う。これが一番好きだ。


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恋も暮れ果つ - 2001年11月05日(月)

失楽の 重きまどろみに 飽くなかれ その時われらの 恋も暮れ果つ


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我照らす火は - 2001年11月04日(日)

着々と 神無しの月は欠けゆけど 我照らす火は 衰えんなり


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貘を箱船に - 2001年11月02日(金)

箱船に 最後に乗せるというのなら 貘がいいなと 切なく笑った



いっそもう 貘の意のまま 終わろうか 喰らっておくれ 箱船の夢




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ここのところ毎週、金曜はへとへとになる。
ベーグルが食べたくて、でも地元で贔屓にしているパン屋さんには置いていないので、ターミナル駅のデパートの地下へ寄る。ベーカリーはいくつかあるだろうと思っていたのに、降り立ってみると1つしかない。しまった、読みが甘かっただろうか。別のデパートにすればよかった。今からもう他へ移動する体力がない。品揃え自体は豊富そうだけど、店の名前からしてフランス語だ。ちょっと嫌な予感がする。
結局ベーグルはなかったが、おいしそうなものはいくつかあったので買ってみる事に。オレンジピールの丸いパン、シナモンペーストが生地に巻き込まれた小さめの食パン、クロワッサンはアールグレイのと普通のと。
諦めきれなくて、地元でもう2つパン屋さんを覗くが、どちらにも置いていない。切ない。
スーパーで3つ袋に入って売られている、メーカーの工場生産のベーグルを、買おうかどうか大分迷って結局購入する。ああ、もう仕方がない。本当はあの手合いが、どうにも好きでないのだ。自分の中では、インスタントコーヒーとだいたい同じ扱いにしているのだと思う。余程の事がないと欲しくない。
さて、そんな風にしてようやく手に入れたこのベーグルは、温めて、サーモンと玉葱とクリームチーズでサンドに。


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白椿 - 2001年11月01日(木)

見上げれば 星のない夜に 白椿 愛しい人よ 手を差し出して


…………



夜の冷たい空気の中で微かな香りに気付いて振り仰ぐと、頭上に白い一重の椿が咲いていた。大木である。かろうじて手の届く枝をそっと引き寄せ、花の顔に唇を寄せる。こんな時隣にいてほしいと思うことは我が儘以外の何でもないかもしれないけれど、ただ正直に、てのひらの熱が恋しい。


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