500文字のスポーツコラム(平日更新)
密かにスポーツライターを目指す「でんちゅ」の500字コラムです。

2001年11月30日(金) 大丈夫? 素人丸出しの野球機構

 横浜球団の経営権譲渡問題で、日本野球機構は29日臨時の実行委員会を開き、15日のマルハからニッポン放送への筆頭株主の変更承認を白紙に戻すと発表した。これによってニッポン放送がオーナーになる芽は事実上消滅し、横浜がそのまま経営権を持ち続けるか第三者への株式譲渡を模索するという。
 川島コミッショナーは委員会後、「ニッポン放送がフジテレビの株を34.1%も持っているとは知らなかった」と述べた。ニッポン放送は横浜株の他にフジテレビの持つヤクルト球団株を間接所有する事になり、複数球団の株式の同時保有を禁じた協約に違反するので、知っていたら承認しなかったというのだ。
 ちょっと待て。あなた自身、15日の会見で「両社は独立した株式会社だから問題ない」と言明しているではないか。これは両社の資本関係を精査した上でなければ出しえない結論だ。コミッショナーの一言は野球機構の調査能力のなさを認めたに等しい。問題が表面化してから慌ててヤクルトに株式割合の調査書を出させたのも、今まで何もしていなかった証ではないか。こんな素人集団が率いるプロ野球の先行きが案じられる。


大山鳴動してナベツネ一匹(11/30)

 球団経営権譲渡の白紙撤回でマルハは窮地に追い込まれた。マルハは現在、100億とも言われるリストラ計画の真っ只中。株式売却もその過程で出たものだ。球団単体では黒字なのでこのままオーナーで居続ける選択肢もなくはないが、引き受け先があれば譲渡したいのが本音だろう。
 第三者に譲渡となれば、新オーナーは加盟金30億円を納める必要が生じる。だが、不況で企業スポーツの休廃部も相次ぐ中、大枚はたいてプロ野球球団経営に乗り出す酔狂な企業があるとは思えない。だとすれば球団の叩き売りか、さもなくば消滅か…。
 ともあれ、今回の件は大山鳴動した割には渡辺オーナーの発言力をこれまで以上に高めただけの様な気もする。ん、でも待てよ。そもそも川島コミッショナーは渡辺氏自身の肝いりで誕生したはずだし、セ・リーグ会長だって「燦燦会」(長嶋の後援会)のメンバーでしたよね。もしかして、あなたにも任命責任があるんじゃ…?



2001年11月29日(木) エースの役割は完投ではない

 今週発売の「週刊ベースボール」で、「先発完投の美学」という特集を組んでいる。この中で何人かの投手が「リリーフに負担をかけたくない」と発言しているのが気になった。
 確かに中継ぎや抑えの「酷使」は良くない。しかし、彼らだってマウンドに上がってこそ金になる。大事なのは彼らに投げさせない事ではなく、ゲームを壊さずいい状態で引き継いで、「一緒に」勝利に貢献する事ではないだろうか。
 一方、ヤクルトの石井は、ローテを守る方が大事だと言う。私はこちらの意見に賛成だ。年間10にも満たない完投のために中5日や中6日で先発するより、中4日で1年投げ通す事の方が「チームの勝利」に結びつくと思うからだ。中6日とは7日サイクルという事。休みが週1日あるとしても6人の先発が必要だ。この内、計算できる柱が3本だとすると残りの3本はいわゆる格落ち。その登板日は早い回での継投が想定されるため、結局リリーフ陣の負担は重くなる。しかも、継投した時点で負けている確率は、3本柱の先発時より高い。これでは5割勝つのも苦しいだろう。
 エースの役割は、数多く先発してきっちり勝つ事。完投できても負けては意味がないのだ。


中4日なら20勝投手も(11/29)

 日本では20勝投手が出なくなって久しいが、大リーグでは毎年何人かは必ずいる。1チームに複数のところさえも。
 日米の決定的な違いは、ローテーションに対する考え方の違いだろう。メジャーでは中4日が当たり前だが、その代わり先発投手の球数をきちんと管理している。中継ぎ・抑えについても、契約段階で役割が決まっていて、頭数の計算がしやすい。一方、日本は先発の球数もバラツキがある上に、シーズン途中でいきなり抑えに回るなど一貫性がない。一体、どうやって一年を乗り切ろうとしたのか、その展望すら感じられない。
 投手が肩やヒジを壊すのは球数のせいではなくフォームが悪いからだという説もある。しかし理想論ではそうでも、現実には故障しないフォームで投げられる投手は少数派だ。その少数派でさえ、160球も投げれば次の試合に影響が残る。例えば松坂は今季15勝15敗に終わったが、中4日で、球数を120球前後に留めれば毎年でも20勝する力があると私は思う。



2001年11月28日(水) 渡りに舟!?

 ニッポン放送による横浜球団株買収で、同じフジサンケイグループのフジテレビによるヤクルト球団株の所有が、複数球団の株の保有を禁じた協約に違反するとして問題になっている。
 この件で巨人の渡辺オーナーはコミッショナーに異議を申し立て、明日緊急の実行委員会が開かれる段取りになった。ここまではいい。渡辺氏にしては「珍しく」正論だと思っていた。
 だがその後が悪い。何と、もしフジサンケイグループがどちらか1球団の株を手放さないなら、他球団を伴って現在の野球機構を脱退し、新リーグを結成するぞと脅しにかかったのだ。これまでドラフトやFAなどへの不満を述べる時、必ず彼の口からセットになって出てきたセリフがまたぞろご登場となったのである。
 今回の発言は、実行委員会での討議を優位に進めようという戦略的意味合いが強いと思われるが、相手の出方次第では本当に強権を発動しかねない。となれば、渡辺氏にとっては却って好都合。新リーグでこれまで以上に我がまま放題振舞える環境が整ってしまう。まさに渡りに舟だ。この身の毛もよだつ最悪のシナリオだけは絶対に阻止せねばなるまい。


ノムさん、潮時だよ(11/28)

 阪神・野村監督の身辺が、夫人の脱税問題で揺れている。監督本人は事実関係についても、また自身の関与についても否定し、球団からの辞任打診にも首を横に振った。久万オーナーも監督の考えを追認、一蓮托生の構えだ。
 しかし、既にマルサ(国税庁)の査察も入っていて、客観的に見れば最低でも夫人の告発は免れそうも無い。その場合、夫である野村監督にも道義的責任は生じる。
 こうした不安定な状況を嫌ってか、FA宣言後阪神に強い興味を示していた片岡と田口の動きが鈍い。入団したはいいがボスが代わってしまったという状況は避けたいのが本音だろう。
 野村監督は球団に再三要求してきた「4番を打てる選手」の獲得をフロントに実現してもらっていない事を理由に退陣を拒んでいるとも伝えられる。しかし、彼がこのまま居座れば却って4番候補の1人である片岡を失いかねない。
 誰も言わないなら私が言おう。「ノムさん、ここらが潮時じゃないかい。」



2001年11月27日(火) 芳醇なパスよ再び

 イタリアチーズの王様、パルミジャーノ・レッジャーノ。パルメザンとして知られるこのチーズの名は、原産地・北イタリアのパルマ地方に由来する。中田のいるあのパルマである。
 パルミジャーノは力強いコクのある赤ワインと相性がいい。パルマ前監督ウルビエリはローマの蔵に眠っていた中田ワインを取り寄せ、テーブルに置いた。だが彼はそれを十分堪能する事なくディナーを終えてしまった。
 序盤戦故障者が相次ぎ、つまずいたパルマ。しかしここで、お気に入りのワインを楽しむ余裕がウリビエリに残っていれば、今の状況とは違っていたはずだ。うろたえて中田を左で起用したりせず、本来のトップ下で我慢して使っていたなら、チーズの味が多少変わっても力強い個性が一口ごとに料理と溶け合い、ここまでディナーが台無しになることはなかったと私は思う。
 新監督就任後2戦、中田はサブに回った。しかし25日のミラン戦、短い時間に彼は芳醇なパスを何本も放った。上等なワインは口に含んでこそ本来の価値を発揮する。パサレラには、時にワインに合わせてチーズのチョイスを変える位の覚悟を求めたい。


飲み口軽やか、小野ワイン(11/27)

 中田をワインに例えるなら「力強くコクのあるワイン」だと書いた。これは時にその強すぎる個性が料理の味とぶつかり、合わせにくい一面も併せ持つ。いわば、ワインが料理や飲み手を選ぶタイプと言えよう。だが、はまった時は特上の味わいを醸し出す。通にとっては何とも魅力的なワインだ。
 一方、オランダで活躍する小野は、軽やかで飲みやすく、料理の選択肢も広いワインだ。中田がサブで出場したのと同じ25日、小野はオランダリーグのホームでの一戦に初めてボランチとして先発出場。不慣れなポジションながらチームにリズムを与え続けた。「食欲を引き出すワイン」とでも言おうか。小野のスタイリッシュかつ創造力あふれるテイストはチームを3-1の勝利に導き、首位進出に貢献した。
 タイプの違う2種類のワイン。これが欧州で磨かれ、W杯という最高のディナーをどんな形で演出してくれるのか・・・考えるとワクワクする。



2001年11月26日(月) 男子バレーの敗因は体格だけか

 バレーボールのワールドグランドチャンピオンズカップ2001が終わった。女子は3位と健闘したが、男子はアルゼンチンに1勝したのみで6ヵ国中5位に沈んだ。
 敗因コメントを読むと、相変わらず「高さ」を要因に挙げている。だが本当にそうだろうか。代表メンバー12人の平均身長は194センチと過去に比べて高く2メートル超の選手も3人いる。セッター2人はともに190センチで自ら打つ力もある。こと「高さ」では世界との差は着実に縮まっている。第一、体格差だけが原因なら韓国戦惨敗の説明がつかない。
 真の敗因は「戦略の乏しさ」にあると私は思う。特にクイックの極端な少なさは深刻だ。敗戦ゲームのスタッツを見ると一番差があるのはブロックポイントなので「高さ」が敗因と錯覚しがちだ。だが実はブロックに掛かりやすい高いトスでの攻撃が多いだけではないのか。例えばABクイックの決定率は高いのに、なぜこれをもっと使おうとしないのだろう。
 体格差は遺伝子に由来する部分が大きい。これを言い訳にする限り日本バレーに未来はない。


福岡よ・・・(11/26)

 J1最終戦で、横浜Fマリノスと東京ヴェルディの残留が決まり、アビスパ福岡のJ2降格が決まった。
 ひいきの横浜の残留が決まってとりあえずホッとしたが、反面、アビスパサポーターの心情を思うと辛いものがある。
 私は鹿児島・妻は宮崎の出身で、九州には人一倍思い入れがある。本来なら、横浜の次にJ1に残って欲しいと願うところだ。しかし、以前この項でも触れたように、終盤起きた残念な事件の事もあり、福岡には一度J2に落ちて再出発を期して欲しいと思っていた。だからこの結果は良かったのではないか。
 思えば今年はダイエー・ホークスも終盤、近鉄ローズへの四球攻めでケチをつけた。本来は南海時代からホークスを応援していた私も、王が監督の間は決して応援するまいと誓った。そのホークスに寺原が入団する意志を固めたようだ。九州プロスポーツ界の暗い雲を彼の剛球は吹き飛ばす事ができるだろうか…。



2001年11月22日(木) イチローのMVPに仰木彬を思う

 メジャーでMVPに輝いたイチローの姿をテレビで見ながら思った。もし彼が仰木彬と出会っていなかったら…と。
 イチローはオリックス入団以来2年連続してウエスタンリーグの首位打者に輝いた。高卒の新人としては驚異的な事だ。しかし、当時の監督は、自らの趣味に合わなかったのか、なかなか彼を一軍で使おうとはしなかった。3年目、オリックス監督に仰木が就任した。仰木はその才能をいち早く見抜き、「パンチ」佐藤と共に「イチロー」という登録名で売り出そうと考えた。その思惑通り、いや想像を遥かに越える働きでイチローは一気にスターダムに駆け上がる。
 イチローの実力をもってすれば、仰木がいなくても遅からず今と同じような活躍をしたかもしれない。でも、登録名のアイディアは仰木ならではだ。このネーミングがイチローへの注目度を高め、見られているという緊張感が彼の進化を早めるのに一役買った可能性は十分にあると私は思う。
 仰木はある解説者に「どうしてオレの所ばかりからメジャーに行くんだろう」と漏らしたそうだ。なるほど野茂も吉井も長谷川も皆、仰木の元から旅立っていった。だがこれは仰木の持つ自由な雰囲気がそうさせたのだろう。他の監督だったら野茂の渡米も遅れ、後に続く選手も出なかった。当然イチローも…。そう考えると仰木彬という監督が球界に残した足跡はとてつもなく大きい。
 仰木監督が正式に辞任を表明した9月28日、長嶋茂雄も監督退任を発表した。翌日の新聞各紙は長嶋については写真と関連記事でハデに報じた反面、仰木については冷淡とも言えるほど小さな扱いをしていた。だが、「監督として」どちらが野球そのものを面白くしたか。その答えは明白である。



2001年11月21日(水) 同一グループ複数球団所有の弊害

 横浜ベイスターズの筆頭株主がマルハからニッポン放送に代わり、球団の実質的オーナーになった。しかし、ニッポン放送が属するフジサンケイグループのフジテレビが既にヤクルト球団の株式を所有しているため、「球団が直接間接を問わず他球団の株式を所有することはできない」とした野球協約183条に違反する疑いが出てきた。
 条文の成立根拠を考えてみよう。例えばシーズン前半で横浜が低迷し、ヤクルトが首位にいるとする。この際フジサンケイグループが優勝の望みのあるヤクルトが有利にペナントレースを戦えるよう、同一グループの横浜の主力をヤクルトにトレードしたらどうなるか。ペナンントレースの公平性は大きく損なわれ、ファンはプロ野球を見放すだろう。また、最終戦でヤクルトが勝てば優勝といったシチュエーションで両チームがぶつかる事にでもなったら、八百長まがいの事が起きるやも知れない。そうした事を未然に防ぐのがこの協約条文の主旨なのだ。
 かつて西武がクラウンライター・ライオンズを買収する際、所有していた大洋(現横浜)の株を放出した。ニッポン放送にも同様の措置を望みたい。


対照的な2人のMVP(11/21)

 イチローがアメリカン・リーグのMVP(最高殊勲選手)に輝いた。今季既に、首位打者、盗塁王、ゴールドグラブ賞に輝いているイチローにまた一つ勲章が増えた。前記3つの賞はそれぞれ、攻走守と対である。賞はつまり、その全てにおいて最高だったという事だ。そしてMVPはそれらの総合評価と言えるだろう。
 このイチローに唯一無いもの。それはパンチ力だ。その分野で最も優れ、今季73本のホームランを放ったバリー・ボンズがナショナル・リーグのMVPに輝いた事も興味深い。つまり21世紀最初のシーズン、ファンは、野球の持つ「スピード」と「パワー」という対照的な2つの魅力を、この2人の選手のプレーで堪能する事ができたわけだ。
 MVPとは直訳すれば「最も価値のある選手」の意。日本の至宝からアメリカの至宝になったイチローは、来季もまた野球本来の魅力を存分にファンの前で披露してくれる事だろう。



2001年11月20日(火) ドッチラケの野球W杯

 概して日本のスポーツファンは国際試合となると大いに燃える。W杯サッカーしかりオリンピックしかり。しかし台湾で行なわれた野球のW杯の、何と盛り上がりに欠けた事か。シドニー五輪に続いてメダル無しに終わったからではない。大会前もそして期間中でさえも、先に行なわれたサッカーのイタリア戦とは比較にならない程白けた雰囲気だった。
 テレビの生中継が少なかった事もあろう。また、日本国内の開催ではなかったからかも知れない。しかし最大の理由は、今回の代表が日本の最強チームだと、誰一人思っていなかったからではないだろうか。
 今回のW杯を、主催者のIBAF(国際野球連盟)は、そして日本球界はどう位置付けていたのか。そして、代表チームは大会の目標をどこに置いていたのか。
 今大会は、これまでの世界アマチュア野球選手権を改称し、ワールドカップとして行なわれる記念すべき第1回大会だった。プロ選手も参加できるようになり、各国ともそのレギュラーシーズンの日程と重ならないのだから、本来であれば最強の選手たちが一堂に会する文字通りの「世界一決定戦」にすべきだった。しかし、野球発祥の地・アメリカの代表チームは2A級・すなわちメジャーの3軍の選手で構成され、我が日本もプロとアマチュアが中途半端に入り混じるチーム編成になっていた。つまりサッカーのW杯のように、ある種「国の威信」をかけて戦うのとは程遠い「やる気のない」大会だったのだ。これでは盛り上がれという方がムリである。
 日本代表チームの今回の目標は、シドニーで失ったメダルを取り戻す事と、そのために世界に君臨してきたキューバを打ち破る事だったはずだ。そのキューバは国内最高の選手を集めて代表チームを編成しているというのに、日本はプロアマ対立の名残で未だにいびつな談合編成しかできない。参加したプロもどういう基準で選ばれたのかわからず、中には1軍半の選手もいる。つまり、「日本の野球界を代表するチーム」としての日本代表とは言い難いメンバーなのである。
 また大会中、先発はプロで固める事が殆どだったが、それは裏を返せば、選手交代をする都度、確実にレベルの落ちる選手が出てくるという事である。もちろん窮地に陥ったチームを立て直せるスーパーサブのオプションも著しく乏しい。これで世界最高のチームに勝って金メダルが獲れると本気で考えていたとすれば、全くおめでたいとしか言いようがない。そもそもW杯と名称が変わったところで、それだけでは大会のステータスが上がるとも考えられない。もちろん野球そのもののステータスも、である。サッカーやメジャーリーグ人気に押される中、この危機感の無さは深刻を通り越して哀れでさえある。

 日本が準決勝でキューバに負けた時、私は悔しかった。しかしその悔しさは、敗れた事による悔しさではなかった。今考えうる最高のメンバーで戦う事のできない日本球界の体制が悔しく、また虚しかったのだ。だから、3位決定戦では私は日本チームの負けを祈った。五輪に続いてプロ混成チームでメダルを逃せば、少しは目を覚まして真剣に勝つための方策を考えてくれるかも知れないと思ったからだ。仮免みたいな銅メダルをもらってヘラヘラと喜ぶより、本気で悔しい思いをして考え方を根本的に変える機会を得る方が、後々の財産になると考えたのである。
 …しかし…その考えも甘かったのかも知れない。テレビ中継で解説をしていた堀内恒夫が「いいチームでした」「よく戦いました。紙一重でした」などと上べだけの賞賛に終始したのは論外として、翌日の新聞各紙(一般紙)も攻めや投球のミスについては書きながら、こうした惨めな結果になった根本的な原因に言及した所は無かった。もっと驚いたのは、当事者の阿部捕手が悔しさを口にしながらも「もう一度このメンバーで戦いたい」というピントが激しく外れたコメントを残していた事だ。何度も言うが、本当にこのメンバーでガチンコの世界大会の頂点に立てると思っているのだろうか。
 唯一の救いは、全日本を率いた後藤監督だけはどうやら危機感を持っているらしいという事だ。それはこんなコメントから読み取れる。「攻撃ではスピードがあって、鋭い打球が打てる選手がもっと必要になる。国際大会での形が見えた」。一見、何気ないコメントのようだが、頑ななまでにプロをスタメンに並べて戦った上で、これでも通用しないんだよという事を球界全体にアピールしてみせた。かつそれを言葉の上でもなぞったのだと取れなくもない。
 このメンバーで戦わざるを得なかった監督自身が発した「危機感を伴ったメッセージ」を、プロアマ問わず真剣に受け止めるべき時が来ている。2002年サッカーW杯でもし日本が躍進を遂げ、対照的に2004年アテネ五輪で野球がジリ貧に終わるようだと、日本でのこの競技の未来は暗澹たるものになるに違いないのだから。


興味深いオリックスのドラフト戦略(11/20)

 ドラフト会議が終わった。日南学園の寺原ばかりに注目が集まった感があるが、オリックスの15巡目までの指名にも驚いた。
 オリックスは去年、北川投手らドラフト下位の選手を「契約金ゼロの出来高払い」で獲得して話題になったが、今年も現職の中学教諭を含めた多数指名で度肝を抜いた。
 でも、これは結構面白い。大量指名するという事はそれだけの人数がクビになるという事だから、2軍選手らにとってこれ以上の刺激はない。いわゆる2軍ズレさせず、常に危機感を持って野球に取り組ませるにはこれ以上ない方法とも言える。また、プロで通用する可能性のあるより多くの選手にチャンスを与える事で、ダイヤの原石を発掘できるかも知れない。
 現実にクビを切られる選手についても、社会人野球への復帰の道が開かれた事で、プロでの戦力外=野球生活断念という図式は既に崩れている。
 パ・リーグ各球団は資金難にあえいでいる。限られた原資で戦力強化を図るには、このぐらい思い切った手があってもいい。何人が正式契約にこぎつけるか分からないが、来季この「ドラフト団塊の世代」に注目してみたい。



2001年11月19日(月) (本日は都合により休みます)


 ※本日は平日ではありますが、都合により更新できません。
  あしからずご了承下さい。



2001年11月16日(金) 許されない NHKの「よっしゃ、よっしゃ」

 来季の東京ドームでの巨人戦・計10試合がNHKの総合テレビとBSハイビジョンで放送されるという。
 同カードはこれまで日本テレビが独占してきたが、試合が延びた場合の延長枠が30分しかなく、ゲームの結末が収まらない事が多かった。巨人の渡辺オーナーは、今季の巨人戦中継の年間視聴率が史上最低の15.1%に低迷した原因の一端がこの放送時間切れにあると考え、完全中継を日本テレビに申し入れたが1時間の延長を引き出すのが限界だった。そこで完全中継可能なNHKにも巨人戦を放送させて凋落傾向に歯止めをかけようとしたわけだ。
 さて、渡辺オーナーからこの話を持ちかけられたNHKはどうしたか。なんと海老沢会長が「職権で」これを承諾してしまったのだ。つまり「よっしゃ、よっしゃ」で簡単に決めてしまったわけだ。だがこれはおかしい。放送権を買う金は視聴者から集めた受信料である。1試合1億円を超えるという巨人戦の放送権に多額の受信料をつぎ込む事に、NHK内部で何の議論もなされないというのは余りに乱暴ではないか。
 NHKはこれまで巨人戦以外のカード、例えば民放では殆どやらないパ・リーグのゲームも放送してきたし、メジャー人気にも貢献してきた。そこに視聴率やスポンサーに捉われない公共放送の存在価値があったはずだ。なのにその枠が削られる危険をあえて冒し、かつ大金を投じてまで巨人戦を放送する合理的理由があるのだろうか。
 巨人は自社系列の放送メディア=日本テレビを持ち、これまでは死んでも放送権を他局に手放さない姿勢を貫いてきた。そのくせ人気が落ちたからといってNHKに泣きつく節操のなさ。そこには、他人のフンドシを借りて「自分の球団」=巨人の人気を少しでも高めようという浅ましい思惑しかない。事の発端は巨人戦の放送時間延長を巡る読売グループ内=読売新聞社VS日本テレビの内紛でしかないわけで、その始末も自分達でつけるのが本来の筋である。渡辺オーナーは、口では球界全体の事を考えて完全中継に道をつけたと恥ずかしげもなく言うが、実際は巨人の事しか頭にないのは見え見えだ。野球というスポーツへの愛ではなく、企業の論理にのみ衝き動かされての放送権譲渡であることは、火を見るより明らかだ。
 そんな利己的な思惑のためにホイホイと公共放送の軒先を貸す海老沢会長の独裁的決断は、決して許される事ではない。また、視聴者は今回の放送権料獲得にいくらの金が投じられたか、情報公開を求めるべきだ。NHKがこれに応じない場合、受信料不払いも辞さないという強い態度で臨まなければ、スポーツ放送の公平性はどんどん損なわれていくに違いない。

 蛇足になるが、そもそも巨人戦の視聴率が下がったのは、単に試合終了が放送できないからではない。オーナー自身を含めた巨人のエゴイスティックな振る舞いがプロ野球界全体への嫌悪感を募らせたのだ。また、百歩譲って結末が見られない事が視聴率低下の一因だとしても、それは放送枠の拡大ではなく、だらだらとした試合時間を短縮する方向で解決を図るべき問題である。例えば試合時間がこのまま4時間近くになったとしたらそれに合わせて放送時間も延ばすというのか? ナンセンスな議論である。
 渡辺氏が球団オーナーとしてやるべき事は、系列のテレビ局に圧力をかけたり、横車が通らないと見るやNHKに泣きついたりする事ではない。自分のチームにキビキビした試合運びや気持ちのいいプレーを求める事なのだと私は思う。もっと野球そのものの魅力を引き出すような決断や、指導力の発揮を望みたい。


もう一度、あのグラウンドに(11/16)

 週明けの19日、プロ野球のドラフト会議が開かれる。指名を待つ選手たちはドキドキして眠れないだろうが、それに負けず劣らずドラフトの結果を息を詰めて見守る男たちがいる。
 10月30日、ナゴヤ球場でプロ野球界初の「合同トライアウト」が行なわれた。各球団で戦力外とされ自由契約になった選手たちの合同入団テストである。集まったのは22歳から36歳の投手22人・野手16人。参加者の中には村上嵩幸外野手(西武)や杉山賢人投手(横浜)、小池秀郎投手、佐野重樹投手(ともに中日)らもいる。
 この日のテストで例えば元近鉄の谷口功一投手には横浜が、元巨人捕手でキャンプ中のセクハラ問題でクビになった杉山直輝氏には台湾球界や横浜・近鉄などが興味を示したと報じられた。
 だが、今のところ採用に向けての本格的な動きはない。なぜならドラフトが終わってみない事には補強の外枠が決まらないからだ。つまりドラフト次第で採用になる選手もいれば、いらなくなる選手もいるわけだ。切実な問題である。
 野球への思い絶ち難く、もう一度グラウンドに戻る夢に賭けた男たち。彼らにとっても眠れない夜が続く。



2001年11月15日(木) チーム消失の危機を救うのは

 Jリーグ二部(J2)の水戸と鳥栖が深刻な経営危機に瀕しているという。新聞記事によると、現在11位の水戸・10位の鳥栖ともに入場者数低迷などで運営費などの資金繰りが悪化。Jリーグでは両チームへの貸付けも行なったが、経営が改善されなければ解散やJ2脱会→JFL降格もありうるという。
 Jリーグの場合、クラブの解散は同時に地域のサッカー文化全体へのダメージを伴う。ジュニアユース、ユースといった下部組織も活動停止に追い込まれるからだ。子供たちへの影響はできれば避けたい。
 長引く不況下、企業の運動部の休廃部も相次いでいる。しかし本当に地域に愛され、必要とされていれば存続の道はある。例えばかつて都市対抗野球を制した大昭和製紙北海道の休部時は、「市民球団」ヴィガしらおいとして再出発した。運営会社をNPO(非営利組織)にする所もあるし、自治体の補助=税金の投入を引き出すのも重要な選択肢だ。しかしその為には地域住民=納税者の理解が不可欠である。
 両クラブの建て直しの成否のカギは、単なる金策以上に、地域における存在意義を示せるかどうかにこそある。


「MR.ROOKIE」(11/15)

 「MR.ROOKIE」…といってもイチローの事ではない。来春公開を目指して制作中の映画のタイトルである。低迷を続ける阪神タイガースが夢のような快進撃をするという映画だ。
 ストーリーは「メジャーリーグ」の日本版だが、キャスティングは面白い。主人公の覆面投手は長嶋一茂。ライバル球団の強打者役は駒田徳広。他に、桧山や藪といった現役選手やバースまで出演するという。
 これまでの野球映画は肝心の野球シーンがチャチで興ざめする事がままあったが、今回は地元の社会人野球チームなどの選手も大量に使うそうだから期待できる。
 現実の世界ではまだまだ遠そうな阪神の優勝。せめて映画の中だけでもというところだが、なぁに、去年の近鉄の例だってある。既に自由獲得枠で獲得した2人のROOKIEや、新外国人(来るンかいな)の活躍次第では嘘から出たまことなんてこともある…かなぁ?



2001年11月14日(水) アビスパはJ1を去って再出発を

 Jリーグの川淵チェアマンは13日、「児童買春」の容疑で逮捕されたアビスパ福岡DF(19歳)の問題について、対応を明らかにした。リーグとしては司法判断とクラブの処分が確定した時点で、「クラブに対する処分」を裁定委員会に諮るという。選手本人については未成年であるため処分は諮問せず、サッカーでの更生の余地を残す方針だ。
 今回の事件は、中学生の衣を被った売春婦(援助交際なんて表現は死んでも使わない)とその親にも責任の一端はあるが、プロスポーツ選手の側が負うべき社会的責任はその比ではない。Jリーグは地域密着を理念に掲げ、クラブは当該地域社会の文化の担い手としての役割を期待されている。所属選手もまた地域の「良き隣人」である事が求められる。Jクラブは単なる収益事業ではなく「公共財」なのだ。そうした意識を選手に伝え切れなかったアビスパはそれだけでJ失格である。事件の舞台が選手寮だった事は余禄に過ぎない。
 現在J2降格の危機に瀕しているアビスパ。公式HPで「始めから出直す覚悟」とコメントしているが、ならばこの際自らJ1を去り、文字通り再出発を期すべきではないか。


H君よ(11/14)

 児童買春事件の当事者H君よ。君は10月下旬のゲームではチーム唯一の得点をたたき出し、勝利に貢献した。将来は代表入りも嘱望される逸材だった。それだけに惜しい。
 まだ19歳。遊びたい気持ちはわからないでもない。私も同じ男だ。だが決して踏み越えてはならない一線だけはわきまえる必要がある。
 今回のJリーグの処分には賛否両論があろう。だが私は、コラムと矛盾するようだが、処分自体は妥当なものだと思う。勝ち点を剥奪しなかったのも、それをすればチームのJ2降格を確定的にし、君自身がその責を感じてチームを、さらにはサッカー界を去ると見越しての措置だろう。未成年である君に更生の余地を残したというのはそういう事だ。
 ただ、それでも君が将来代表のユニフォームに袖を通せるか、そうなったとして素直に応援できるかはわからない。
 H君よ。君の行為の代償はかくも重い。だが頑張れ。今言えるのはそれだけだ。



2001年11月13日(火) 口を開けたアスリートたち

 大リーグ・エンゼルスの長谷川滋利投手は、投球の際に口を開けている。リリース(球離れ)の瞬間は一番力の入る所だから、歯を食いしばったり口を真一文字に結んだりしそうなものだが、彼はそうではない。子供の頃、ソフトボールをしている写真でも既に口を開けているが、理由は本人にもわからないという。イチローのチームメイト・オルルッドもまた、プレー中口がポカンと(失礼!)開いたままだ。
 舌が出るのは男子テニスのサンプラス。サーブの時、半開きの口元から下唇に乗っかった舌が覗いている。元巨人のガルベスも投球の瞬間に舌が出ていた。
 見た目が奇異でも、それで最高のパフォーマンスを発揮してきたのだろうし、彼らなりの理由があるのかもしれない。長谷川やオルルッドに共通する無駄な力の入らないプレースタイルは、歯を食いしばらない事で生まれている可能性もある。
 掛布雅之はインパクトの瞬間、一気に息を吐き出す呼吸法が特徴的だった。スキー・ジャンプの元五輪代表・須田健仁は、意識的に口角を上げて笑顔を作る事で筋肉をリラックスさせていた。アスリートの口元もまたパフォーマンスの一部なのである。


アレックスの使い方は?(11/13)

 昨日書いた通り、アレックスが日本人「三都主アレサンドロ」になった。9月3日(→バックナンバー)にも取り上げたが、帰化申請中の「JOMOカップ」(日本選手選抜VS外国籍選抜)では、何としてもトルシエ監督にアピールをという意気込みを感じた。これで彼が代表戦のピッチに立つ事に障害はなくなったわけで、心から祝福したい。
 早速年末の代表合宿に召集される可能性がある三都主だが、彼のポジション・左サイドは激戦区である。名波、中村俊、小野、そして服部。タレント揃いだ。しかし三都主のスピードを活かして中央に切れ込むスタイルは、ディフェンス陣を撹乱する。トルシエは、代表候補を「先発で出るタイプ」と「ゲームの流れを変えるタイプ」に分けて考えているようだが、三都主が後者=スーパーサブとして控えていれば攻撃のオプションが増え、膠着した局面を打開するカギになり得る。興味は尽きない。



2001年11月12日(月) 杉浦忠氏の急逝に思う

 元南海ホークス投手の杉浦忠氏が、11日午前急性心筋梗塞で死去した。10日の札幌でのマスターズリーグの試合で代理監督を務めたのが最後の姿だった。享年66歳。
 杉浦氏は長嶋茂雄氏と立教大学の同期で、昭和33年に南海に入団。実はこの時、長嶋も一緒に入団するはずだった。ドラフト制度はまだなく自由競争の時代。長嶋を早くからマークしていた南海は、立教OBの大沢啓二氏らの人脈を使って長嶋・杉浦の2人から入団の確約を得ていた。2人には「栄養費」名目の小遣いまで球団から渡されていた。しかし土壇場で長嶋が「裏切って」巨人に入団。当時の鶴岡監督と大沢氏を前に、長嶋は畳に頭をすりつけ、泣きながら詫びたと言う。
 この時長嶋が南海に入団していたら、プロ野球の歴史は間違いなく変わっていた。長嶋が国民的英雄になったのは親会社が巨大メディアで露出度が高かった事が大きいからだ。逆に南海が巨人と戦った翌34年の日本シリーズでこの悔しさをバネに4連投4連勝を飾った杉浦の伝説的な活躍もなかっただろう。
 長嶋氏が球界を去ったその年、遠征先のホテルで息を引き取った杉浦氏。これもまた因縁かも知れない。


待ちに待った帰化(11/12)

 先日イタリア相手に好ゲームを展開して可能性を感じさせた日本サッカー界に、待ちに待った嬉しいニュースが飛び込んできた。かねてから法務省に帰化申請中だったアレックス(清水)の日本国籍取得が正式に決まったのだ。
 アレックスは94年に明徳義塾高校(高知)に留学生として来日。全国高校サッカーなどで活躍後、97年に清水エスパルスに入団した。日本語も堪能で帰化が認められるもの時間の問題とされていたが、2002年W杯が目前に迫り、ファンをやきもきさせていた。トルシエ監督も彼に興味を示しつつも、これ以上時期がずれ込めば特別扱いはできないと表明していただけに、この決定は大きい。
 今後は代表チームへの召集時期(今年はもう試合が組まれていないので来年早々?)や、その際のチーム構成をどうするかといった事(代わりに誰が外れるか)などが焦点になるが、ともあれ一ファンとしては彼の活躍を一日も早く見てみたい。



2001年11月09日(金) 理想の筋肉

 先日見た「ZONE」(TBS・日曜午後6:30)と「Get Sports」(テレビ朝日・月曜午前1:00)は、ともに「筋肉」がテーマだった。
 「ZONE」の主人公はボディービルダー。男性ビルダーは見せるための筋肉を作り込む作業を「自分を彫刻する」と表現した。この男性の体脂肪率は2%しかないのだという。10年間鶏のささみと温野菜、黄身を除いたゆで卵の食事を続けている女性も登場した。理想の筋肉を得る為のストイックな生活は鬼気迫るものがある。
 「Get−」はスピードスケートの清水宏保。こちらは100分の1秒でも速く滑れる筋肉を作る「工程」だ。時速60キロ。微妙なバランスを保つには、体中の筋肉を全て意識下に置いてコントロールする必要がある。また、普段スケートで使わない筋肉も覚醒させるべく自転車トレーニングを取り入れて極限まで鍛え抜き、実際に氷上でその筋肉の試運転をした上で微調整を加えていく。さながらフォーミュラーカーのチューンナップだ。
 トップアスリートとは、過酷なトレーニングの末に理想の筋肉を手に入れた究極の筋肉オタクの事を指すのかも知れない。


2002年W杯への期待(11/9)

 先日のイタリア戦、サッカー日本代表の戦いぶりは見事だった。高い位置でアグレッシブにボールを奪取、相手の裏を突く動きで世界一固いと言われる守備陣を撹乱した。得点シーンでは、最初の小野の激しいチェックが稲本へのこぼれ球を生んだ点も評価したい。
 課題のディフェンスでも、失ったのはセットプレーでの1点のみ。動きの中で失点しなかったのは大きな収穫だろう。中田英の調子が今一つだった以外は、攻守共に合格点だと思う。
 スタッツを見ても日本のシュート10本に対し、イタリア13本とほぼ互角。専守防衛ではなく積極的に攻めの形を作っての引き分けだけに価値がある。トルシエが試合前、「実験室を出て、今日からW杯が始まるんだ」といった言葉をハッタリ半分と受け止めた人も、この戦いぶりを見せられては文句は言えまい。期待感が高まってきた。

888番=☆BANBI☆さん 900番=バカボンパパさん
でした。(「キューブくん」のサイトのキリ番です)



2001年11月08日(木) 野球狂の詩�ァ_晃涼凌�

 私が「マスターズリーグ」の話題を連載にしようと思ったわけ。「入場料が2800円もしたから…」と書いたが実は違う。このリーグを見ていて、今のプロ野球について考えさせられる部分が多い事に気付いたからだ。
 例えば応援団の鳴り物のない野球を観て、私が愛しているのは球音と自然に沸きあがる歓声なのだと再認識した。ファウルボールのプレゼントを知って次はグラブを持って来ようと心に誓ったが、逆に言えばそんな些細な事が球場に足を運ぼうというパッションに成り得るのだと知った。引退したり、夢半ばで退団を余儀なくされた選手のその後の人生に思いを馳せたのも初めてだった。
 人生。そう、スタンドに足を運んだオールドファンは、歳を取った選手達の姿に、若かりし日の自分と彼らと同じように歳を取った自分を同時に重ね合わせていたに違いない。ヒジの手術から立ち直って今でも剛速球を投げ込む村田兆治から、30年の時を超えて再びマウンドに立つ池永から、「人生って諦めなければ捨てたもんじゃないぜ」というメッセージを読み取る人も少なくないだろう。不況とリストラの時代だからこそ。

 それはノスタルジーだと、笑われるかも知れない。しかしある時期、野球は確かにこの国の大切な「文化」だった。たかが娯楽に過ぎない野球が日々の生活と濃密に結びついていた。今は…没個性化する選手たちに自分の姿を重ね合わせたり、そこから明日への活力を得たりする人がどれだけいるだろう。彼らのプレーから人生に影響を与えるようなメッセージを感じ取る人がどれだけいるだろう。もしかしたらこれこそが、近年野球人気が低迷していると言われることの正体ではないのか。だとすれば一体何が変わってしまったのだろう。
 私はまた、あのスタンドに行ってみようと思う。そこに答えがあるかどうかはわからないけど。



2001年11月07日(水) 野球狂の詩�ぁ,修靴独爐�帰ってくる

 プロ野球「マスターズリーグ」に関するミニ連載。彼について書かないわけにはいくまい。西鉄ライオンズの元エース、池永正明である。
 下関商2年の時にセンバツで優勝し、1965年に西鉄に入団。1年目から20勝を挙げて文句なしの新人王に輝き実働6年で103勝を挙げた。しかし70年5月の黒い霧事件で八百長の疑いをかけられた。本人はこれを激しく否定したが、結局球界を永久追放されてしまう。現在は福岡・中洲でスナックを経営しているという。
 マスターズリーグは実に31年ぶりの「プロ」のマウンドとなる。このリーグはプロ野球機構主催ではなく、扱いの上では草野球と同列なので「復帰」も差し支えないという判断なのだそうだ。
 松田優作、ジェームス・ディーン、そしてマリリン・モンロー。若くしてこの世を去った者たちが伝説になったように、池永ももしかしたらこのまま「死んだものとして」伝説になっていたかもしれない。しかし彼は帰ってきた。たとえ現役時代のようには投げられなくとも、失われた時を少しだけ取り戻すチャンスを得た。「俺はまだ生きている」。そんな証を見せて欲しい。

(8日朝 改訂版)
 「マスターズリーグ」について書く時、彼に触れないわけにはいくまい。西鉄ライオンズの元エース、池永正明である。
 下関商2年時にセンバツで優勝し、1965年に西鉄入団。1年目から20勝を挙げて新人王、実働6年で103勝を挙げた。今で言えば松坂のような存在だろうか。しかし70年の黒い霧事件で八百長の疑いをかけられ、球界を永久追放されてしまう。本人は容疑を強硬に否定し、チームメイトも彼は無実だと信じた。復権運動も度々あったが、31年経った今も当時の処分はそのままだ。
 しかしマスターズリーグは彼を追放したプロ野球機構主催ではない。扱いの上では草野球と同列で「復帰」も差し支えないわけだ。
 沢村栄治、大場政夫、そして力道山。若くしてこの世を去ったが故に伝説になった男たちがいる。池永ももしかしたら「死んだものとして」伝説のまま終わっていたかもしれない。生きたまま葬り去られる…それはあまりに残酷だ。
 現在は福岡・中洲でスナックを経営している池永。昔のようには投げられないだろうが、残りの野球人生で「俺はまだ生きている」という証を見せて欲しい。失われた時を取り戻すために。


人生が輝くに相応しい場(11/7)

 福岡ドームでの「福岡ドンタクズVS大阪ロマンズ」戦(7日)は池永投手の初登板が予想されたが、結局1塁ベースコーチに立っただけだった。それでも公の前に姿を現し、はにかんだ表情でスタンドに手を振る姿をテレビで見て胸が熱くなった。
 自分が愛するものがある日突然手の届かない所に行ってしまう喪失感。それはその立場になった人にしかわからない。夜の街でスナックを切り盛りしながらも時折野球の事を思い出し、胸かきむしるような思いに駆られることもあったろう。
 スナックの経営者も立派な職業である。ただ、天から授かった人生を最大限に生かし得る才能という視点で見るなら、池永にはやはり夜の街よりグラウンド上の方が相応しい。そこでこそ彼の人生の意味が発揮されると思うのだ。
 あとは、一日も早く処分が取り消され、身軽な立場になれる事を祈りたい。だってどう考えたって再犯の恐れはないんだから。



2001年11月06日(火) 野球狂の詩�� 「第2の人生」

 プロ野球「マスターズリーグ」には200人の元選手が参加している。平均年齢46歳。野球選手としては高齢でも、社会人としては「働き盛り」だ。
 当然、引退後の第2の人生では別の仕事についている。喫茶店やスナックのマスター(だからマスターズというわけではない)もいれば、うどん屋さんもいる。マスターズリーグに参加するからといって野球選手専業に戻るわけではない。
 石井雅博(東京ドリームス)という選手がいる。箕島高2年時に選抜で優勝。明大を経て巨人に入団した外野手だがプロでは目立った成績は残せなかった。
 彼は今、サラリーマンになっているらしかった。というのは私の席の近くに彼の会社の同僚や上司たちが陣取っていたからだ。「あいつ明日の営業会議、筋肉痛で出てこられないんじゃないか?」と話したり、楽しいヤジを飛ばしたりしていたが、打席に立つと一生懸命応援していた。きっと彼が仕事の傍ら「復帰」に向けて一生懸命トレーニングを積んできたのも知っているのだろう。
 有名選手もいい。でも現役時代活躍できなかったこういう選手が、新しい仲間たちの声援を受けてヒーローになるところも見てみたい。


ジョーダンは本当に復活したのか(11/6)

 M.ジョーダンがNBAに「復帰」したが、そのプレーは本当に「復活」したのだろうか。
 復帰初戦翌日の新聞各紙の評価は分かれた。チーム最多の19得点、5リバウンド、6アシスト。スタッツを見る限り、2年半のブランク明けとしては決して悪くない。だが勝負どころでのシュートが決まらなかったり、FGの決定率も悪く、時にはリングにも当たらなかったりというジョーダンらしくないプレーも確かにあった。
 ファンは「神」の復活を待ち望んでいる。現役時代と同じプレーを期待している。ムリだと解っていても、やはり昔のイメージで見てしまうのだ。

 次に見たのは復帰3戦目。本拠地。驚いた。1戦目より体が締まっている。私にはそう見えた。2戦目には31点、この日は20得点だが9アシスト。豪快なダンクも決めた。本来のプレーと「自信」が彼に戻りつつあるように思えた。私は彼の今後に大いに期待している。



2001年11月05日(月) 野球狂の詩�◆仝�式ボール・プレゼントの「文化的意義」

 前回に引き続き、プロ野球「マスターズリーグ」について。
 このリーグ、現役のリーグと違う所がいくつもある。まず球場の雰囲気。私設応援団がいないので鳴り物の音は聞こえず、球音や時には観客のユーモラスなヤジがよく聞こえる。もちろんプレーの度に沸く歓声は、長らく忘れていたものだ。また、高齢の選手に配慮し、DHに限っては特別代走を何度でも送れるとか、30代の選手はフィールドに同時に3人までといった独特のルールもある。
 何より、スタンドに入ったファウルボールが持ち帰り自由なのが嬉しい。私はプロ野球の公式ボールが多くのファンの家にあるという事は、野球という文化の普及のためにとても重要なことだと思っている。ボールの重さや硬さ、手触りなどが想像力をかきたててくれるからだ。「こんな硬い球が150キロで飛んできたら怖いだろうな」とか「こんな重い球を外野からダイレクトに投げ返すのか」とか…スタンドやテレビの前にただ座っていては感じることのできない「凄さ」が、ボール一つから実感できる。一度キャッチボールでもやってみればテキメンだ。
 「現役の」リーグでも、これは是非実行してもらいたい。


世界一決定戦(11/5)

 大リーグのナンバーワンチームを決めるのが、なぜ「ワールド」シリーズなんだ、と(日本の)プロ野球が好きだった子供時代の私は不満だった。しかし今年のシリーズは、「世界一決定戦」の名に相応しいものだった。
 逆転に次ぐ逆転、立て続けの劇的ホームラン、そして7戦目の今日は両先発の息詰まる投手戦、そしてシーソーゲーム。まさに片時も目を離せない展開だった。
 グラウンド上の選手達からは「プライド」という名のオーラが発散されていた。集中力が、いくつもの名場面を生んだ。どの選手も皆、カッコよかった。今年の野球シーズンの終わりは最高だった。

金炳賢(キム・ビョンヒョン)は今日は投げなかった。世界一に沸くチームの中、一人くすぶる思いを抱いているだろう。ならば来年もう一度、今度はイチロー・佐々木のいるマリナーズと名勝負を見せて欲しい。うん、これは来季への楽しみに取っておこう…。



2001年11月02日(金) 野球狂の詩� ^鬼�!村田兆治・51歳の剛速球

 プロ野球OBによる「マスターズリーグ」開幕戦、東京ドリームスVS札幌アンビシャスのゲームを見に東京ドームへ行った。なけなしの小遣いから大枚2800円をはたき、S席に入った。
 指定された席は1塁側やや上方。見回すとホームベース真後ろのネット裏に空席が見えたので移動し、普段はエライさんたちしか座れないようなクッション付きのイスをちゃっかりキープした。
 お目当ては村田兆治。初球いきなり134キロで度肝を抜く。エラーでランナーを一人出すも、全て130キロ台のストレートで押す。最後はMAX138キロの剛速球で見事三振。今月52歳になるとは到底信じられない凄みのある投球だ。3回には先頭庄司を「伝家の宝刀」フォークボールで空振り三振。場内スクリーンに映し出された落差の大きさにスタンドがどよめいた。
 結局村田は3回無失点で降板したが、他の選手達も想像していたよりずっと動きがよく、その後も面白かった。このリーグならではの魅力もあった。とても500字では書き切れないので、ミニ連載にしようと思う。何たって2800円も払ったんだから…。1回だけじゃもったいない(笑)。


オーラ(11/2)

 「ウソッ!」…思わず口をついて出た。信じられない光景だった。ワールドシリーズ第5戦、9回ウラ2アウトからストッパー・金炳賢(キム・ビョンヒョン)が2日連続で同点2ランを浴びたのだ。奇跡としか思えなかった。
 マウンド上でうずくまる金。リーグプレイオフで痛恨の一発を浴びた佐々木の姿とダブる。茫然として生気のない目でベンチに向かう金の背中に、頑張れとつぶやいたのは私だけではあるまい。まだ同点だ。このあと勝てばいいんだ…。
 しかし延長12回、ヤンキースはソリアーノの右前打でサヨナラ勝ち。2連敗からの3連勝で王手をかけた。
 ヤンキースはホームでのWシリーズ10連勝。トーリ監督も1点差ゲーム10連勝というおまけつき。強い。まさに神通力だ。スタンドにはオーラと書かれたメッセージボード。この球場には本当に不思議なオーラを放つ魔物が住んでいるのかもしれない。



2001年11月01日(木) ニューヨーク ニューヨーク

 驚いた。近鉄の優勝を決めた北川の一発にも驚いたが、今日のワールドシリーズでのヤンキースの土壇場の一発攻勢にも本当に驚いた。
 ヤンキース2点のビハインドで9回2アウトランナー1塁。マウンド上には、アジア人として初のワールドシリーズ登板を果たしたキム。あと1つアウトを取れば、ダイヤモンドバックスは3勝1敗の王手…となるはずだった。
 ところが、この場面で4番マルティネスが起死回生の同点ホームラン。そして10回裏、今度はジーターにソロホームランが飛び出し、劇的な逆転サヨナラとなったのだ。
 阪神大震災のあとオリックスが優勝した時も思ったが、これはもうニューヨークという街の力が後押ししたとしか思えない。テロの悪夢から立ち直ろうとする市民の、このシリーズにかける思いが天に通じたとしか…。
 昨日は同じニューヨークのマジソンスクエアガーデンで、マイケル・ジョーダンという神の復活降臨を目の当たりにした市民は、2日連続でしびれるような感動を味わった事だろう。試合後「ニューヨーク・ニューヨーク」を気持ちよさそうに歌うファンの表情が印象的だった。


行ってきます(11/1)

 きょうは、プロ野球マスターズリーグ開幕日。私はこれから東京ドームに向かいます。
 私は高校時代に電器屋さんのテレビで、村田兆治のフォークの凄さを目にして以来(舞台は当時行なわれていたプレイオフ。相手は確か日本ハムでした)、ずっと応援してきました。肘を傷めて再起不能がささやかれた時も、私はずっと復活を信じていました。だから彼が50歳を過ぎて、未だに140キロ近い速球を投げられるというのは感動的でさえあります。その姿を、私はしっかり瞼の裏に焼き付けて来ようと思います。
 報告はまたこのページで。では、行ってきます。


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