『スウィート・バイエル』
『スウィート・バイエル』

モクジ 今ヨリ、カコへ 今ヨリ、ミライヘ


2006年11月05日(日) 奴隷スイッチ/被虐スイッチ(2)

 
お部屋に戻り、
鞭と縄を、落とすかのよう手放し、ソファー横の床に置いた鞄に置く。
 
前に居たご主人様が振り返る。
 
  
ぽやぽやした頭のまま
「ご主人様、なんだろ?」
と思っていると。
 
 
 
 
そのまま抱きしめられました。
 
たぶん、この日一日で一番優しく抱きしめられたかも。
いや、始めての日から今日までの間でも、
かなり上位に入る、優しい抱きしめ方だったかも。
 
力強く抱きしめられるわけでもない
おざなりに「はいはい、ご褒美だな」という感じでもない
 
たぶんご主人様ご本人に尋ねたら
「今までだって大切に麻瑚を抱きしめてきただろーが(笑)」
と言うかも知れないけれど。
最近ご主人様は油断されてる。
抱きしめ方などに、こう、感情が乗ってしまうことが多々あるのだ。
 
 
なんで?何で今、このタイミングで、こんなに慈しむように
抱きしめるわけ?
混乱したけど、ご主人様側の理由は分からないけれど
とにかくその、「お部屋に戻ってからのご褒美ギュ〜」に
私はどうしてよいのやら、全く分からなくなっちゃったのだ。
 
 
 
ご主人様は私から離れると、そのままソファへ。
私はただぼーっと立って、座るご主人様を見下ろしてた。
「どうした?」
私の顔を見て、ご主人様はしゃらっと言う。
いや、「こいつ、泣くな」とは分かっていたと思うけれど。
 
 
まるで映像のシーンみたいで現実的じゃないポーズだけど、
私は床に膝をつき、両手で顔を覆う。
声を上げて泣くでもない、ただ涙が静かに、少しだけ流れるだけ。
感情が奮い立つ様子もない、ただどうしていいかわからず、顔を覆い続けるだけ。
 
こういう時はたぶん、普通の女性ならば相手に抱きつくのかもしれない。
でも私は、それが出来ない。
今までの男性はほとんどが「ベタベタされたり、いちゃつくの嫌い」という人だったので、
自分から抱きついたり、キスをしかけたり……ということが
冗談でやる以外に出来ないのだ。
いや、ハグに対しては、実は冗談でも自分からは……ほとんど出来ないんだけれど(苦笑)
 
 
 
「麻瑚。……麻瑚、こっちに来な」
そう声をかけられて、やっと動く。
1歩2歩3歩と足を交互に出して歩き、座るご主人様の前に立つと、
手がさしのべられ
私はご主人様に身体を預け、抱きつき、肩とも胸ともつかぬ位置に、
顔を埋める。
 
 
それでも大泣きは出来なくて、ただ静かに涙が流れるのみ。
頭を撫でられながら
「どうした?」と尋ねられ、
やっと言えたのは「……嬉しかった」だけ。
 

「鞭がか?」
「……両方」
そっか、というようにご主人様は「ん」と言い、しばしそのままの体勢に。
 
 
 
ふと思い出す。
あんまり時間がなかったはず。ずっとこんなことしてられないな、と。
ひとまず少しだけ顔を上げて「ごめんなさい」と。
 
「何がだ?」
「時間なくて。このあと、きちんとsexできなくて」
「いいよ。……そうだな、じゃあ、最後にフェラでもしてもらうか」
 
私は左手をご主人様の股間に持って行き
ジーンズの上からナデナデして冗談っぽく言ってみる。
「今から、ご主人様、お元気になられるかな〜」
「そう言うときは『精一杯ご奉仕させていただきます、だろ(笑)』」
「はいはい」
 

 
身体をずらして、ご主人様の足の間に入り込み、
時間がないのでジッパーのみを降ろしてご主人様を外へ解放。
「ご主人様、精一杯ご奉仕させていただきます」
 
 
今日はこれで三回目だし、
鞭打ち以外に何があったわけでもなし、
ラストまでは行かないだろうと思って私もご奉仕してました。

  
そしたらご主人様の命令が。
 
「麻瑚、もっと早く動け」

え?
これはご主人様の
「ラストスパートかけろ、このまま射精まで導け。」という合図。
 
 
そして、いただきました。
お口でキレイにさせていただいたあとは、
ご主人様からのご褒美キス。
 
 
そしてさっさとソファを立たれるご主人様。
「麻瑚、服着ろ」
 
そう時間は14:55。
あと5分で部屋を出なくてはいけないのだ。
 
急いで服を着て、
残っていたケーキを口に放り込んで、うがいしてお口もさっぱりさせ。
ご主人様ががさつにまとめてくださったスピンドルと鞭を
鞄にぎゅうぎゅうしまい込んでいると
「会計するぞ」の声。
 
「はいもう大丈夫です」と答える。
 
 
自動計算システム機の女声を聞きながらテーブルを片付け、ゴミをまとめる。
ソファに置きっぱなしなっていたタオルを洗面所へ。
綺麗な常宿なので、ぐちゃぐちゃにして出たくはないんだもん。
 
 
会計から5分間は、猶予がある。
 
全部終え、コートと、まだファスナーが開いたままの鞄を持って、玄関へ。
 
 
玄関で、お別れチューとぎゅっ。

 
車に乗り込み、
ご主人様が駐車場のカーテンを開けたりしているうちに
私は車内で自分の荷物を片付け。
鞄のファスナーもやっとしめる(笑)
 
 
「いくぞ」
「はい」
 
車は走り出す。
 
 
 
 
 
 
出すんだけれど……
 
 
 
スイッチ切れず、ほにゃらかとしたままの私、
あわただしく支度しているうちは、なんとか気を張って大丈夫だったけれど、
車の助手席に座ったとたん、気がゆるむ。
 
 
だめだ〜。
 
 
ご主人様にぽつぽつと話しかけられても、
「うん」とか「はい」くらいしか言えない。
ご主人様が独り言のように言う言葉には、無反応。
話すより、受け答えするより、
それよりも、何かあったら今すぐにでも泣きそうなのだ。
 
 
信号待ち。ご主人様は私を見て、笑いたそう。
「……なんで、笑う……んですか?」
「いや、抜けてない時の反応だな〜と思って」
「……泣きます……よ」
「?」
「今、すぐにでも……泣く……準備は、出来てます」
 
 
何か変なこと言われたり、私をおもしろがる対応見せる度に
私は「……泣きますよ」連呼。
 
ご主人様には、「そうやって脅すのか?(笑)」と言われました。
 
 
 
 
いつものお店に着き、駐車場へ。
しっぱなしだった首輪。
いつもならご主人様に向かって偉そうに「んー、んー!」とか言いながら
「首輪はずして!」とアピールするのに、今回はそれすらせず。
 
首輪に気づいた瞬間、自分で外してました。
そんな私に気づいたご主人様が、すぐに手を伸ばして外してくださったけれど。
 
 
結局、お店に入り、コーヒーを何口か飲みすすめるまで、
私の様子はほぼ変わらず。
ぼーっとしたり、話しかけられてもぶっきらぼうに答えたり、
ご主人様から目線をそらして横を見ていたり。
 
たぶん、ご主人様も扱いに困られたことでしょう(笑)
 
 
 
なんとか平静を取り戻したあとも、
結局は会話とかあまりかみ合ってなかったような。
頑張りすぎて疲れが出て眠いご主人様と、心があっち側にいっちゃったままの私。
 
別れ際に「今日はありがとう」と
ご主人様がおっしゃってくださったにもかかわらず
なんだかそれも軽くかわしてた私(苦笑)
 
 
そして、電車へ。
なんとか少しだけ張っていた気も、一人になってまた緩み……逆戻り。
 
 
帰りの電車で座れれば、疲れと睡眠不足からいつも爆睡してしまうのですが、
今日は混んでいて座れない。
眠くても我慢の子。携帯で日記書いたりとかして、頑張ってやりすごす1時間強。
 
だんだん……だんだんね、自分の内面がおかしくなっていってるのが分かる。
  
 
やっと座れた座席。
乗り換えた電車はゆっくり進行、座席もがらがら。
座って、眠ろうと試みてみるけれど、もう眠れず。
 
そのあとも、地元駅で降りてふらふらと店に立ち寄ったりしたのだけれども、
どうもダメ。

 
 
そうか。
常宿出る30分前にあんなコトしちゃって、そのまま出てきちゃったから。
私、まだ奴隷なんだ。
それも被虐スイッチが入ったままの奴隷モード。
 
私まだ奴隷のままだよ?
奴隷なのに、どうしてご主人様はそばに居ないの?
  
さみしい、辛い、何かこうどうしようもない感情が渦巻いてる。
  
 
 
帰宅し、いろいろ気分転換計ったけどダメ。
眠ればどうにかなるかな? と寝たけれど、朝になったらもっととんでもなくなってた。
 
ご主人様から聞いたお話とか、
ひとつひとつを思い出し、心に引っかけていってしまってる。
何もなくやり過ごせることだって、全部ひっかかって、気づいて、落ち込む。
ご主人様から自分を切り離したくて、仕方なくなっていた。
 
 
 
SM的行為とご主人様のご褒美のあと、
sexという発散行為がなくても、
なんとか自分自身で自分のスイッチを切る方法を、習得しなくては。
お仕事で心身疲労の上に、奴隷スイッチ入りっぱなし。
そんな状態じゃ、精神的不調をずるずる引きずるだけだと学習しました。
 
 
ご主人様はきっと、
私がここまでになっちゃってること知らないだろうし、
気づかないだろうし、なおかつ理由なんて分からないだろうなぁ〜。
なんで私が不機嫌で冷たいのか分からず、困っているかも?
 
ま、いいや(笑)
 
 






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2006年11月04日(土) 奴隷スイッチ/被虐スイッチ(1)

 
「今何時だ?」
「14時半ですけれど?」
「ああ……もう一回やろうと思ったんだけどな」
「……ええっ! ご主人様、そんなそぶり見せなかったじゃなかったですか!」
「タイミングを逃してた」
「だって14時過ぎたし、もうなにもないだろうと思って私も支度してたし」
「うん。でもケーキがなかなか出てこなかったし」
 
そういえば、洗面所に居るときに
「麻瑚〜、ケーキ食べよう」って呼ばれたなぁ。
それって「食べるなら、早く食べてしまおうってことだったのかぁ。
 
 
「ご主人様何も言ってくださらないんだもん」
「……最後に縛ろうかな、と思ってたのだが」
「えっ! うそ〜」
「なんだ、縛って欲しかったのか?」
「縛りはいつでもウエルカム!ですよ〜」
「縛って、デッキに軽く吊るか、室内であそこに磔にしようかと〜」
「ご、ご主人様!
 どうして今、手の内を……プランを喋っちゃうんですか!」
「いいんだよ。次回はどうなるかわからんだろ?
 アナル調教になるかもしれないし(笑)」
「う〜」
「いいよ、今日はもう。
 どっちにしろ今日はゆっくりしようと思っていたから」
「でも……しましょう!」
「いいよ(笑)」
「しましょう。縛ってください」
「いいよ」
「帰り支度もほとんど済んでるので、あとは着替えるだけだから
 5分もあれば終わるし。そうすると20分以上時間ありますから」
 

「じゃあ、縄と鞭。それと目隠し」
 
え?
 
「む、鞭ですか。時間無いのに(苦笑)」
「うん」
「縄は何本? 長い方? 短い方? どちらですか?」
ご主人様が選んだのは短いスピンドル1本。
 
目隠しをされる。
そこでご主人様からの命令。
「そうだな。今日は麻瑚が期待しているのとは違うのをしてやろう。
 手を出せ」
 
両手首に縄がかけられ、私はそのまま、
まるで罪人のように引っ張られていく。
 
  
おぼつかない足で、デッキ(外)へ。
両手をあげた状態で梁に吊られました。
極力手を伸ばしたけれど、
私を気遣ってか、ご主人様は少しゆとりを持たせてる様子。
うーん、ぎりぎりの状態にしてくれないと……(苦笑)
姿勢を少し悪くし、自分で手首に体重かけてみる。
既に腕時計をした状態だったので、左手にはかなりの負担。
でもまぁ短時間だから、そんなに紫色にならないだろう(笑)と考えたり。
 
一気に気持ちを引き揚げなきゃいけないから、
なるべく苦痛は強めにしないと、ね。
 
 
 
鞭で頬を撫でられる。
私がピクッとすると、ご主人様が少し笑う。
すーっとなで下ろされ、お尻に鞭。
スリップ状の下着を着ていたので、ご主人様は叩きにくかったかもしれない。
脱ぐか、めくり上げておけば良かったなと思う。
私だって、布越しより、やっぱり直に叩かれたいし。
 
 
何発か叩かれたあと、鞭が止む。
「麻瑚は誰のものだ?」
「ご主人様のものです」
「正解」
軽く笑うと「ご褒美だ」といわんばかりに、また鞭。
痛くても、外だからあまり声を上げられない。
鞭音だけで怪しいのに、そこに「痛い!」なんて叫び声を上げたらまずいものね。
がまん。
  
 
「痛いか?」
無言でいると、また「痛いか?」と尋ねられる。
声を出すタイミングを間違えると悲鳴になっちゃいそうだし、
悲痛感あらわに「痛いです」と言うと、ご主人様やめちゃいそうだし。
 
どう答えていいか分からなくて黙っていると、
叩かれてまた尋ねられる。

「痛い……です……でも」
「でも?」
「もっと叩いて欲しいです」
言い終わるか終わらないかで、また鞭。
 
 
 
 
何回か叩かれたあと。
「どうしてほしい?」と問われ。

 
「もっと強く……叩いてください」
「何回?」
もっと時間があるなら、十回と言うだろう。
でも残り時間を考えると、これくらいが妥当かな?と
鞭と吊りに酔い始めた頭ではじき出した数字を答える。
 
 
 
「……5回」
「よし。ちゃんと自分で数えろよ」
 
 
小さな声で「いち……に……さん……し……ご」と数える。
右側のお尻から太もも裏側にかけて、5発終了。

少し間が空き、またご主人様が「ん? どうしてほしいんだ?」と。
 
 
「反対側も、強く叩いてください」
「何回?」
「同じだけ……」
「何回かちゃんと言え」
「5回です」
 
右側より強く打ち込まれる5発。
  
 
 
終わるとご主人様が……あれ?
 
 
放置?
 
 
と思ったら、シャッター音。
ご主人様は携帯をとりに部屋に戻られていた様子。
 
 
目隠しを外され、再びシャッター音。
液晶画面に映る画像を見せられる。
 
 
「背中……太った……」
ほにゃほにゃした声で伝えた、私の感想。
それに「しょーもないことを(笑)」という感じで軽く笑うご主人様。
 
 
ご褒美のキスのあと、
梁にかけた縄が降ろされ、手首の縄が外される。
 
 
私は縄とテーブルに置き去りになっていた鞭を持ち、
無言のご主人様のあとをついて、部屋に戻りました。
 
 






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谷藤 麻瑚 MAILスウィート・ハノンHP(改装・再開予定)

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