日々是迷々之記
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2004年11月02日(火) どっこい社員旅行【女子編】

前回は問題のある男子の話だったが、今回は女子の話。「名勝観光」を「なかつ観光」って読んだ若手女子社員の話は以前書いたが、今回はそれを上回るかも?と思われるキャラの登場だ。

昼休みに食後、行程表を見ながら話をしていた。ある女子が、「この『くろしお』って新幹線ですよねー。3時間もかかるってむっちゃ遠いんですねー。」と言うのだった。空気が凍った。いや本当に。「何言ってんねんなぁ。大体そこに新幹線は通ってへんやんか。」という古株の女性社員の一声で、ワハハハハ、と収まったけれど、本気で『くろしお』が新幹線だと思っていたのだろうか?

その他、トイレの手を洗う場所で、パジャマは持っていくか?とか、宴会の時は何を着たらいいのかとか、そんなの好きにしたらええやんか的なネタで盛り上がっていた。行きの服、宴会の服、寝るときのパジャマ、翌日の服で4セット持っていくと言った猛者もいた。私は手抜きなのでGパンを続けてはいて、下着とシャツだけ替えればいいやと思っていた。寝るときは宿の浴衣があるし。が、若手女子からすると、「シャツだけ替えてまあいいや。」というのは問題があるらしい。

結局その女子はエルメスのフールトゥを大きさ違いで2個。それにグッチかヴィトンかの肩掛けバッグという大荷物で現れた。なんでそんなに物いるねん?と思ったが、温泉の更衣室で見たら、化粧水はビンまるごと、B5サイズくらいの机に立てられる鏡などの大物を、A4サイズほどの巨大な化粧ポーチに入れていた。新聞の集金の人だってポーチはもっと小さい。

旅って一口に言ってもいろいろあるよな…。としみじみと感じつつ、私は手酌酒を飲み、例の女子は私の真後ろで若手男子とキャーキャー言いながら合コンモードに入っている。

はじめての団体旅行はそんな感じで複雑な思いを残して過ぎてゆくのだった。


2004年10月30日(土) どっこい社員旅行【男子編】

週末は社員旅行だった。派遣社員やパート社員も連れてってくれる太っ腹さに感謝するが、この「集団旅行」というのは冷静に考えると異常な世界だ。老いも若きも苗字くらいしか知らないもの同士が同じ会社に勤めているというだけで、一緒にご飯を食べ、移動をし、眠るのである。果たしてそこには「あー来なきゃよかった。」と思ってしまうほどの疲れる時間があったのだ。

移動の道中で私の斜め後ろに若手の男女が座っている。電車に乗った瞬間から酒盛りが始まり、みんなビール片手に赤い顔をしていた。その若手男子(24歳京大卒)が饒舌に語る。

「俺ってホント酒強くてさー。学生時代なんか一晩でボトル一本てフツーでさー。」
「もうこれで栄養採ってるって感じかな。」

私は決してその話に入っていないのに、その話がガンガン耳に入ってくる。女子が、「どんなお酒が好きなんですか?」と別に興味もないんだけど、まぁノリでって声でその自称酒豪男子に尋ねた。(女の子ってこういうの上手やなぁ。)

「俺は焼酎にはちょっとうるさくてさぁ。特に芋かなぁ。最初はガーンと来るんだけど、慣れてくると麦とか飲めないね。マイルド過ぎてさぁ。」

そこでさっきの女子が、どんな銘柄が好きなんですか?と尋ねた。(あくまでノリっぽく。)

「やっぱ白波。それと霧島だね。」

…。あのーどっちも普通に酒屋で売ってますが。まぁ、とりあえずいろいろ試してみてやっぱり白波か霧島って思うこともあるだろう。でもなんとなくそうじゃないような気がして、それは確信に変わってしまった。

さっきの女子のとなりに座っていた、もうちょっと年上の女性が、「あ、私も焼酎好きなんですけど、そば焼酎が好きなんですよね。」と言ったのだった。するとそのエセ酒豪男子は、

「あ、雲海でしょ?あれいかにも女性が好みそうな味だよね。あっさりしてさ。」

「そば焼酎=雲海」ってのが浅いなぁと思ってしまった。その女性も同じように思ったのか、「雲海がポピュラーですけど、どっしりした風味のもあるんですよ。あと、栗で作った焼酎も私好みなんです。ダバダ火振とか。」と言うのだった。すると、エセ酒豪男子語る語る。

「栗ってそれほんとに栗からできてるんですか?芋と麦と米でしょ、焼酎って。聞いたことないなぁ。」

うひー、恥ずかしい。語るんならもっと勉強せーよ。勉強する気なかったら、素直に飲むのが好きなだけでって言えばイイのに。どうして詳しいふりをするんだろう。その後、謎のうんちくは日本酒、ビールにまで及び、「和歌山県に地酒はない。」「日本酒なんでどれも同じような味。」「スーパードライなんていつも水代わりに飲んでる。」などの発言連発。

こういう語りを2時間も聞いてしまい、電車を降りる頃には気分がぐったりしてしまった。その後、そのエセ酒豪男子はスーパードライを片手に昼食(店員さんに持ち込みはお断りしてるんですがとやんわり注意されていた。当たり前。)、そして街を散策、お寺を参拝。お前アル中かよって感じでふらふらしていた。なんかとてもアホっぽい。

帰りの電車では、通路でワインのボトルを割ってしまい、女子がティッシュペーパーを出し合ってみんなで拭き、挙げ句の果てに何かを勘違いしてひとつ手前の駅で降りてしまった。荷物も、切符も持たずに降りてしまい、幹事は困惑。そりゃそうだ。特急で一駅だから普通列車で本来降りる駅まで1時間弱かかるのだ。でも切符がないとどうしょもないので、本来降りる駅でそのバカを待っているしかないのである。

ずっと眠っていた直属の上司は到着した駅で顛末を知り、「自爆テロみたいな男やな。」と一言。

若いと言うことは実は恥ずかしいことではないかとまで思ってしまった今回の旅行。それは男子だけではなかったのだ。女子の話はまた明日。


2004年10月27日(水) ゆずとパイナップル

会社帰りに閉店間際の八百屋兼雑貨屋の前を通りかかった。「ゆず2個100円」とのこと。私は自転車を降り、そのゆずを買った。ほんの少し肌寒い中で、ゆずは冬のにおいがした。

そこから自転車を漕ぎつづけ、家の近所のスーパーに寄った。黒酢を切らしていたのだ。果物売り場で傷がほんの少し付いたりんごを見つけたのでかごに入れた。その傍らでそのスーパーの黄色の値引きシールが貼られたものが目に入る。

パイナップルである。半分で150円のものが100円だった。熟れていて食べ頃のそれは、ねっとりと甘い香りがした。

わたしはうーんと考えた。ぼちぼち冬である。練り物売り場にはおでんの材料が並んでいる。さっきゆずを買った。なのに、パイナップルが食べ頃なんである。しかも100円。あの造形で、とても重い。それが100円なのにいい匂いなんである。きょうびスナック菓子でも100円以上することを考えると、パイナップルというのはとても安すぎる気がする。

私はそのパイナップルをかごに入れた。そして傍らのモンキーバナナも買った。黒酢、豆乳も買ったが、どれもおかずにならないものばかりだ。

スーパーから家まで自転車で10分弱。ライトを付けているのでびゅーびゅーとタイヤをうならせながら自転車を漕ぎ、考えた。新潟県では被災者のひとたちが、ガソリンがなくなることを恐れて、エアコンを停めた車で寝起きしている。なのに、ほんの数百キロ離れた大阪では、晩秋にパイナップルやバナナをおいしく食べている。

日本の豊かさはなんか微妙だ。地震も戦争も台風もテレビの中の出来事みたいで、宇宙人が襲来しても「ふーん」とか言って、リモコンのテレビ電源ボタンを押せばなかったこと、みたいになってしまいそうだ。

もし、私がちゃんとバイクに乗れていれば、大型のオフロードバイクを駆ってヘリコプターが降りることができない集落に今もとどまっている人たちに何か必要なものを運びに行きたいと思う。二人乗りが怖くない人なら、二人乗りをしてそこから救出することすら可能かもしれない。究極の実用車としてのバイクとはそういうものだと感じる。

まぁ、ちょっと肌寒くなっただけで階段でつまずくような体の動かなさでは、そんなこと夢のまた夢なんだろうけれど。ゆずとパイナップルがテーブルの上でそれぞれいい匂いをさせる中でテレビの報道番組を見ながらそんなことを考えた。


nao-zo |MAIL

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