凪の日々
■引きこもり専業主婦の子育て愚痴日記■
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「あ、懐かしい。」
炊き上がった炊飯器のご飯をほぐしながらアイが言う。 今日は麦ご飯にしたんだけど。
「私はあんたを戦中戦後に産んだ覚えは無いが」 「そうじゃなくて、学校給食が麦ご飯だったんだよ」
懐かしいって。中学行ってたのついこの前なのに。
「麦ご飯おいしいよねー」とアユムが言う。 「給食のパンはチーズパンが好き」 「え。くるみぱんがおいしいじゃん」 「えー」
アイとアユムで給食話で盛り上がる。 「あんたも給食が懐かしくなる時がくるよー」と偉そうなアイ。
給食があった小中と、アイは楽しい学校生活だったとは言えなかったと思う。 無視といういじめにあいつづけた小学校時代。 敵視するクラスメイトに言葉で罵られ続けた中学校時代。 それでも、そんな学校時代の象徴である給食を「懐かしい」と柔らかい表情で思い出すアイ。 悪い思い出ばかりじゃなかったという事か。だったら良かった。 生きてくれてて良かった。 アイの心はズタズタだったけど、誰の体を傷つける事もしなくて良かった。
すっかりコミュニケーションが苦手になってしまったアイだけど それでも高校ではそれなりに楽しんでいるようで、 学校の様子を話す時、時折「それって男の子だな」と推察できる内容もあったり。
否応無しで痛みに耐えつづけるしかなかった小中学校時代。 それらが癒されて浄化されてアイの中で貴重な経験となってくれますように。 思い出すだけで辛くなる負の記憶になりませんように。
明日の弁当も麦ご飯にしよう。 給食で小中学校を思い出すように、弁当で楽しい高校生活を思い出せるようになりますように。
暁
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