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2005年02月20日(日) 券売機で一番端の一番高い切符が行く町を。


例えば。
王子様が守られたらだめなんだろうか。
例えば。
お姫様が戦ったらだめなんだろうか。
思うに、攻撃力が高いより、回復呪文が使えるほうが結局強いんじゃないか。
攻撃しながら守備は出来ないんだし。
幾ら相手をやり込めることに長けていても、相手を癒すことが出来る人には敵わないんじゃないか。
そんなことをぼんやりと考えている。
王子様とお姫様の求めるモノは、違うのかもしれない。
王子様はお姫様を欲している。
それは、個対個の関係において至極当たり前で自然なこと。
けれど、お姫様は王子様と同化したいのだ。
お姫様は王子様になりたかったのだ。
それは個対個の関係において凄く不自然で異質な感情だ。
お姫様はなぎ倒してきた相手の血を浴びすぎて、きっと壊れてしまったに違いない。
異常なお姫様は異常を正常だと勘違いしたまま、相手を飲み込んでしまえたらと願う。
どうして私は王子になれないんだろうと真剣に考える。
いっそ溶け合えてしまったなら、私は王子の一番傍で共に生きていけるのに。
異常なまでの愛情を、王子様は受け止めることが出来ない。
わからないのだ。
お姫様が、何故そんなことを願っているのかが。
王子様は、お城の奥にひっそりと住んでいる。
お城の庭には四季折々に花が咲き乱れ、小鳥が歌い、森の動物たちも遊びに来る。
宮廷では楽団が見たこともない異国の楽器で行ったこともない異国の歌を聞いたこともない異国の言葉で神秘的に歌い上げる。
時折来る商人から聞く旅の冒険談に心を躍らせ、自分もいつか船に乗るのだと心に誓う。
王子様は、そんな日々の全てを愛しているのだ。
王子様は、大きいことや小さいこと、沢山の中のひとつとして、お姫様を愛している。
だから、お姫様が普段何をし、何を考え、何を欲し生きているかなんか、わかりようもないのだ。
お姫様のことだけを考えて生きていくには、王子様の世界は沢山のきらきらしいことで埋まりすぎている。
一方、お姫様はというと、沢山の敵の中で等身大の剣を振り回して沢山の返り血を浴びる日々だ。
誰が味方で、誰が敵かなんてどうでもいい。
お姫様にとって、王子様以外の人間、全てがどうでもいいのだから。
お姫様は、狂気の沙汰で人を斬って斬って斬り続ける。
全ては愛しい王子のために。
自分が望むことはただひとつ。
常に王子様の傍に居ること。
王子様が私だけを見ればいい。
王子様が私だけに生きればいい。
王子様が、王子様が。
お姫様の世界の全てが王子様だ。
いや、王子様こそ、お姫様の世界の全てなのだ。
王子様が要らないというなら、私が代わりに斬って捨てよう。
王子様に毒を盛ろうというのなら、私が代わりに食して死のう。
王子様の是非がお姫様の全てで絶対なのだ。
返り血に染まった私を、愛しいあの人はなんていうだろう?
おや、凄い格好をしているね、ワインでも浴びたのかい?といって笑うだろうか。
いいえ、人を斬りましたと答える私に、愛しいあの人は不思議そうな目をして、どうして全てを切り捨てるんだい?と聞くに違いない。
そして優しく諭すだろう。
いらないものは見なければいいんだよ、と。
世界はこんなにも、楽しいことで満ち溢れているというのに!と言って楽しそうに笑うだろう。
だから私は、王子様になりたいのだ。
私が持たない全てを持っているから。
私には、王子様が全てなのに。
その実、お姫様は気付いているのだ。
もし、王子様がお姫様を疎く思いだしたら。
自分は生きていけなくなるだろうということに。
その日が永遠に来なければいいのに、とまたお姫様は願うのだ。
途方もなく。

王子様とお姫様の欲するモノは、違うのかもしれない。


















僕は良く知らない。



















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