yofukoの日記

2003年11月01日(土) 突然ですが、乾塚です。


「硝子の悲鳴」


乾にとって、帰宅直前の教室から見下ろす校庭は
なににも変えがたい光景だった。
サッカーゴールが長く影を落とし、
此処から望む生徒たちは蟻のように行列をなした。

ふいに人が途切れる。
途切れた、ように
見える。

またしても、自分は吸い寄せられるように
ある一点を見つめることになった。
統一された制服。
さして目立つわけでない髪の色。
これだけは抜きん出た身長。
それが原因というわけではないだろうが
誰よりも彼の後姿は、自分を呼んだ。

性格を丹念になぞるような姿勢の良い背中は
真っ直ぐに正門に飲まれ、外界へ吐き出されていく。
今日もまた、同じビデオを見るように同じ映像。
窓ガラスをなぞる。
彼の歩いた軌跡をなぞる。
たどり着いた彼の後姿。
指で潰せそうに小さな背中。
力を込める。
窓枠がミシリと音を立てる。
力を込める。
かすかに硝子が撓む。
指先からスルリ、スルリ、逃れる彼を
追っては、押しつぶす仮想。

なぜだろう

彼は、いつも自分の手にはかからない。
自分はいつも敗者なのだ。

彼を潰した指を、窓硝子から離す。
指の陰に隠れていた彼の姿は
立ち止まり
確かに、こちらを見ていた。

自分はいつも、敗者なのだ。







ナンジャコレー!
なんだか鬱屈とした気分が
まんま反映されたものができました。スミマセン…。
(悪徳理事長)


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yofuko