雑感
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2001年08月18日(土) |
アカデミー(美術大学) |
王宮に面した環状道路の外側にシラーの銅像がある。そのちょうど 後ろにアカデミーの建物がある。オーストリア有数の美術大学。 所用で楽友協会に行く道すがら、構内の画材店にバーゲン品がないか 立ち寄ってみた。建物は古くいかめしいが堂々とした作りである。 残念ながら大きな油絵の具以外はバーゲン品はなかった。 この建物に入るときは、とても嬉しい。学生でもない部外者だけど 美術の匂いがそこかしこにただよっている。自分も学生になったよう な気がする。
20世紀も初期の頃、ウィーンが世紀末の芸術の潮流の主役にあった とき、アドルフという少年は芸術家になろうと大志をいだいて、アカデ ミーの入学試験を受けた。森本哲郎の「維納」には、アドルフの成績は すこぶる悪く、デッサンなどもできが悪かったと記されている。 この年には、オスカー・ココシュカがアカデミーに入学している。 アドルフはその後数年ウィーンに留まって、底辺の生活を続ける。 彼は、ウィーンリング内の豊かな人々、特にユダヤ人が経済的に、 学芸の分野でイニシアチブを取っていたのを目の当たりに見たのだろう。 ユダヤ人に対する憎悪はこのとき、生まれたらしい。アドルフはその後 ミュンヘンに行き、政治の世界で頭角を現していく。
アカデミーのほの暗い回廊を歩きながら、もし彼がアカデミーに入学 できていたら、第二次世界大戦は避けられただろうか、600万人の 命は失われなかったかなあと歴史家と同じような質問を繰り返して みる。アドルフは姓をヒトラーと言った。
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