雑感
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2002年10月04日(金) 長生きについて

十数年前から懇意にしていただいた、シュピッェンヒュッテル夫人 が他界したと連絡をもらった。
享年92歳。いつも笑顔のたえない、かわいらしい声の持ち主で あどけない表情が忘れられない。新年に訪問したときに、ぎゅっと 彼女の両手を握り締めたのが最後になった。

傍目からは、やさしい家族に囲まれて大往生だと思うけれど、 長く生きてよかったのかどうかは本人にしかわからないこと だろう。安寧で楽しいことばかりではあるまい。つらいことだってあったに違いない。

昨夜テレビで「グリーンマイル」の放映があった。原作を読んで、 映画館でも見たので2回目になるけれど、見ごたえのある作品 だった。死刑囚監房の看守だった主人公は、世にも不思議な物語 を女友達に語り始める。死刑執行の残酷さ、人間の善や悪、弱さ を、コフィーという死刑囚を通して大写しになるエピソードに ぐいぐい引き込まれた。

話を語り終えた主人公の長命にはびっくりさせられたが、彼の 孤独や悲しみがひしひしと伝わってくる。死なないということは 多くの別れを体験するということでもある。同時代に生きたひと たちが、例外なく先に逝ってしまう。
主人公は、コフィを救えなかった罰だと言ったが、私はそうは 思わない。コフィは死にたがっていたと思う。彼に宿った不思議な 力は、人間の邪悪さを、骨のずいまで感応してしまい疲れさせて しまったのだろう。

長寿であること、人の心が透けて見えることは、必ずしも人を 幸福にするわけではない。 明日何が起こるかわからないし、気に掛かる人の気持ちがよく わからないからこそ、生きていけるということだってある。


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